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第13話

第13話




叫び終わった俺は、短く息を吐いて執事ペンダントに問うた。



(名前の変更は可能か?)


(可能で御座います。)


(よし変更だ。 名前はセバスチャン、通称はセバスだ。)


(承知致しました。 変更完了。 現時点よりわたくしの名前はセバスチャンです。)



よしっ。


エリザベスからの変更で、俺の心は良く分からない満足感を感じた。



(それで……ここは一体どこなんだ? 人間は居ないのか? どうやって出る?)


(…………。)


(? どうした?)


(ここは、何処なのでしょう?)


(えっ。)


(現在修復シークエンス中につき、多くの機能が使用不能となっております。 現在地、現時刻共に不明で御座います。)


(……ゴブリンというモンスターに心当たりは?)


(ゴブリン。 緑の肌をした小型の人型モンスターで御座います。)


(それで?)


(以上です。)



俺はもうエネルギー詐欺にあった気分で、天を仰いだ。



(所で旦那様)


(……何だ?)


(旦那様の、お名前を伺っても?)



言われて俺ははっとした。


そういえばステータス欄には「未定」の文字が。


誰かと会話すること自体初めてだったので、名前のことなど全く気にしていなかった。



(未定、か——)


(ミテイカ様ですね。 登録完了致しました。)


(確認ぐらい挟めよ! 速攻で決定するな!)



……ミテイカ。


無いな。 却下。


ああもう。



名前は、多分あったのだろう。


だが、今の俺には思い出せない。


なら自分で、決めても良いだろう。



イチロウ。



……これで、いい。


不思議と、その名前がしっくり来た。



(イチロウ。 俺の名前は、イチロウだ。 セバス。)







セバスとのやり取りで、何だか妙にすっきりしていた。


他人と話せたからか?


いや。


久しぶりに、他人に突っ込めた。


一番大きかったのは、たぶんこれだ。



彼にはしばらく修復とやらに専念してもらい、次なる課題に取り掛かった。


スキルだ。


混乱の中、レベルが上がったスキル。


吸収 Lv1 → Lv2


フィルター Lv1 → Lv2


そしてストックに新たなデバフだと思うが、


ポイズンLv2 × 20


これだ。



まずは「吸収」だ。


熟練度上昇は吸収ENG総量か?


実はこれが上がってから、ENG回復速度が明確に上がった。


「羽虫」を吸収してみる。


EMG+5


羽虫は元々+3だ。


回復量が増えてる。



等価交換によるスキルカスタムは……ある!


いや、しかし思いつかない。


今の所、カスタムしないと詰むといった事態が無いのだ。


これは要検討だな。




次に「フィルター」


熟練度はフィルターで抽出した量、あたりか?


それにしてはタイミングが「吸収」と同じというのが気になる。


こちらも等価交換、あり。


しかし用途が限定的すぎて、カスタムのビジョンが見えない。


両方共提示されない追加機能、絶対ありそうだ。


自分で気が付くまで表示されないの、本当に嫌らしい。




最後に、ポイズンLv2。


こいつだ。


思い浮かべるのは「Damage over Time」、略してDOTだ。


時間経過とともに、継続的にダメージを与え続けるアレだ。


しかし何にダメージを与える?



俺のステータスにHP(ヒットポイント:生命力)の項目は無い。


表示されて無い、だけの可能性もあるが。



ディジーズよりかは効果が想像しやすいが、確実なことは分からない。


魚に使ったともそうだったが、ゴブリンに使ったとしても相手のステータスを見ることが出来ない。


何がどう効いてるのかを検証できないのだ。



セバスに使って効果をレポートしてもらうのはどうだろう?


あれだけENGをかっさらっていったんだ。


それくらいやってみても……。


いやいや、いかんいかん。


……誘惑に駆られるなぁ!




自分で試す訳にもいかないし。


……ん?


そもそも、自分に、使えるものなのか?


「デバフだから相手に使う」と勝手に思っていたが、どうなんだ?


インベントリで確認。



……自分に、使える!?


意味が分からん!


フィルターで抽出したものを、自分に使う??



イメージとしては、こうだ。


例えば「ポイズンLv2」。


これを1つ「掴む」。


で、「使用先」を「指定」。


外に出すには、「射出」スキルで出来そうだ。


俺のステータスに「ドロップ」すれば自分にも使える、と。



自爆してどうするんだ!


なんなんだこのクソ仕様は。


……いや、自爆とは限らないのか。


自分に使うと別の効果が出る。


そういう可能性も、ある。



考えてみれは、羽虫は大量に吸収しているのだ。


「ディジーズLv2」が上限に達した後も、吸収を続けた。


もし「フィルター」が俺にとって有害な物を事前に取り除くためのものなら、とっくの昔に俺はデバフを食らっていないとおかしいのだ。



羽虫が持ってた病原体と、「ディジーズLv2」。


果たしてこれは、同じものなのか?



だからといって、わざわざ使う勇気は持てない。


リカバリー不可だったら、取り返しがつかない。



どうしたもんかと「掴んだ」ポイズンをイベントりに戻そうとした。


その時、偶然「ディジーズLv2」の上を通過した。



……あれ?


ドロップ、出来る。


…………。


ドロップ。



合成中: ディジーズLv2、ポイズンLv2


作成: グレーターポイズンLv2



当然の作業とでも言うように新たな力が、生み出された。



その簡素なシステムメッセージは、


「力を求めたんだろう? ならば与えてやる。」


——そんな悪魔の囁きの様に、俺には見えた。





第13話 完




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