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第12話

第12話





よし。


これは見なかった事にして、他を漁っていくか。


…………。


いや気になる!


すんごい気になる!



「生体反応」があるペンダントに、体でちょんと触れてみる。


反応なし。


少し悩む。


あああ、もう仕方がない!


覚悟を決めて、


「ストック」


…………。


特に何もない。


インベントリには、


「アステリアのペンダント」


と出てる。


名前だけ、効果などは特に無いようだ。


なんだか肩透かしを食らったようで短く息を吐き、ペンダントを元に戻そうとした。




(僭越ですが)


(くぁwせdrftgyふじこlp!)



いきなり中年男性のイケボイスが頭の中に聞こえ、俺は文字通り1mほど飛び上がった!



(驚かせてしまい、大変申し訳御座いません。 当方エネルギー切れで、休眠モードを維持できなくなっております。 不躾で申し訳ありませんが、少々分けて頂くことは可能でしょうか?)



心臓が飛び出すかと思ったわ! 無いけどな!


びっくりしたー。



(……。)


(……。)


(えーーと……。)


(はい。)


(エネルギー?)


(はい。)


(すまん、手元には無いな。)


(お持ちの様に、お見受けいたしますが?)



???


エネルギー?


……まさか、ENGの事か!?



(これの事?)



俺は何となく、ENGを指差す感じで尋ねてみた。



(左様で御座います。)


(どれくらい?)


(少々で御座います。)



少々か、まあ少しくらいなら良いか。


何よりこの世界で目覚めて初めての会話に、俺の心は浮わついていた。



(分かった、どうすれば良い?)



左上辺りに新たなウィンドウが出た


「ENG供給要請 yes/no」


ほい、yesと。





その途端。


猛烈な勢いでENGが減っていった!



(うおぉぉぉぉぉぉぉ!)



930程あったENGがもう800切ってる!


「吸収」! 「吸収」!


ゴブリン熟練料理人のなんたらという相変わらず長ったらしい名前の料理を、あわてて吸収する。



吸収 レベルアップ Lv1 → Lv2


フィルター ポイズンLv2 ×5


フィルター レベルアップ Lv1 → Lv2



情報が多いって!!


それどころじゃ無いんだよ!!!



結局料理だけで1500は回復した所で、ENGの減りは止まった。


あっぶねぇぇぇ!


これ魚じゃ回復速度間に合わなかったぞ!



この世界で目覚めて初めてのENG枯渇危機を脱し、俺はへたり込みそうになった。


この野郎。


ペンダントを最大速度で射出しようとしたその時、俺の頭の中に声が響いた。



(旦那様。)



手が止まった。



(休眠モード解除と共に修復モードが作動しました。エネルギー充填は完了致しましたので、現在修復シークエンスが作動中で御座います。)


(それは……良かった、のか? 死ぬかと思ったぞ。)


(大変申し訳御座いません。)



しれっと言いやがった。


何となくだが、インベントリの中に料理が大量にあるのを見て、行けると判断したんでは?


根拠は無いが、そんな気がした。



まあ良い。


初めての意思疎通が可能そうな話し相手。


この世界を知る手掛かりになるかもしれない相手。


「人間」の手がかり。



あれ?


そう言えば、俺は喋れないはずだ。


何故こいつと会話が成り立つ?



(聞きたいんだが。)


(何なりと。 旦那様。)


(俺は喋れないはずなんだ。 何故会話が成立する?)


(現在「念話」のルートが確立しております。 ですので意思疎通に発声は不要となります。)



確かに。


俺は発声していない。


「念話」か。 そんな便利なものがあるのか。


よし。


聞きたい事は沢山ある。


何より、俺はこのペンダントが気に入りかけていた。



(それで……)



俺は改めてペンダントに問いかけた。



(お前は、何者だ?)






俺は現在、ガラクタ置き場のドームの天井に引っ付いている。


ペンダントが語った内容をまとめてみると————


こいつ、貴族のために作られた、人工知能型の補助魔道具らしい。


言語発声、念話通信、執事人格で生活サポート。


至れり尽くせり。


しかもかなりの名工のオーダーメイド品で、シリアルナンバーまで付いてる。



なるほど、執事みたいな喋り方だと思ったら本当に執事だったわけだ。


そして――人間は、やっぱりいた。


胸の奥に渇望が沸き立つ。



見てみたい。


このポリゴンの目でもいい。


人間の生活圏を見てみたい。


許されるなら、そこで暮らしてみたい。



……っと、いかん。


確認したい事がある。



(俺の考えを声として発声する事は可能か?)


(可能です。 ただし、契約を行なって頂く必要が御座います。)


(契約?)


(エネルギーの提供です。)



またエネルギーか!


散々絞っておいて、まだねだるのかよ!



(どれくらいだ? 正確な値で示せ)


(旦那様の場合ですと、ENG上限を20頂戴致します。)



俺の場合って何だ! 人が違うと変わるのか?


しかも上限削るとか! スキルかよ!


もう突っ込みが止まらない。


楽しくなってきた!



俺は考えることは出来ても、声が出せない。


会話と念話、両方を可能とするこの魔道具は正にうってつけだ。



(いいだろう、もっていけ。 下手なことをすれば地中深く埋めてやる。)


(左様で御座いますか。 ご期待に沿えるよう、微力を尽くす次第で御座います。 わたくしはエリザベス、通称はベスとお呼びください。 末永くよろしくお願い致します。)



んん?



(エリザベス? 女性みたいな名前だな?)


(最初の契約者様は、女性モードでご使用されておりましたので。休眠モードに入るとき、標準の執事モードに切り替わりました。)



女性モード! そんなのあるのか!



(おおお! そのモード出来るか?)



わくわくしながら尋ねた。



(少々お待ちを……あ~ら、いい男ねぇ♪)


(チェンジ! ストップ! キャンセルだ!! 元に戻せ!!)


(んもう何時でも呼んでねぇ……切り替えました。)



俺は我慢できなかった。



(前の奴は頭おかしいのか!!)



渾身の叫びはしかし発声される事はなく、暗闇のドームは深い静寂に包まれたままだった。





第12話 完



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