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異世界★戦国武闘伝~歴女と歴史学者の異世界戦記  作者: 近森 元
Ⅶ、戦略編

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55,魔王復活

 マシアス・ギールは語る。


 「アーレスが、レガリア城に入ったのは昨年の初冬のことでございました。アーレスは謁見の間の大公の椅子に腰かけたまま動かなくなりました。その膝には恐ろしい形相の魔王の首が乘っておりました。」


 「魔王の首」と、私はつぶやいた。


 「魔王の首は瘴気を噴き出しました。城は瘴気で満たされ、城内は薄暗い霧が立ち込めたようになりました。そして、瘴気を吸い込んだものは魔族化していきました。」


 「アーレスはどうして動かないのだ?」


 「おそらくは、魔王の首がアーレスの体を我が物にしようとしているのです。アーレスの首が落ちて後、魔王の首にすげ替わると。」


 「どうして、そんなことが分かるんだ?」


 「あの女が、そう申しました。」


 「あの女とは、マドンナのことか?」


 「さようでございます。」


 マシアス殿はそう言った後、「ああ!」と嘆きの声をあげた。


 「あのような女の召喚を命じたのは私です。私がヴァルデーノ殿に命じてマドンナを召喚したのです。何ということをしてしまったんだ。私はなんということをしてしまったんだ!」


 ヴァルデーノ殿がマシアス殿を諫めた。


 「マシアス殿、マドンナの件については、この私も同罪。なればこそ、魔族の情報を教えてほしいのです。」


 「申し訳ない。つい取り乱してしまった。」


 私もマシアス殿に言った。


 「マシアス殿、悔やんでもしょうがないことだ。あの時、私と幸村君は大公ドメルグ殿を捕虜にした。二人の召喚者が戦況をひっくり返したのだ。あの状況に対応するには、トクーガも召喚者の力を必要とした。 運が悪かったのは、召喚したのがマドンナのような俗物だったことだ。」


 「運が悪かったと申されるか。」


 「召喚魔法は人知を超えたものだと聞いている。」


 とは言ったものの、私には心当たりがあった。

 召喚魔法の検索エンジンは何故か、オンラインRPG「戦国武闘伝」の周辺にヒットする。

 ヴァルデーノ殿が最初に召喚したのがこの私、二人目の召喚者がマドンナこと大河内瑠奈だ。二人とも「戦国武闘伝」の監修者なのだ。

 ここには奇妙な巡りあわせがあるように感じた。

 だが、そんな巡りあわせを思いをはせている時間はない。

 私にはマシアス殿に尋ねるべきことがある。

 

 

 「マシアス殿、魔王はいつ復活するのかね?」


 「あの女が、半年にわたって魔力を注ぎ込んでおります。復活の日も近いかと。」


 「魔族の兵力は?」


 「魔族に変じましたトクーガの家臣2千。」


 「2千、トクーガの家臣にしては少ないな。」


 「レガリア城に居なかったものは逃げるか殺されるかしましたからな。」


 「つまり、アーレス派の家臣たちと、アーレスが城に入ったとき運悪く城にいて瘴気を浴びた者だけが魔族化したというわけか。」


 「自ら暗黒魔法を習得するか、魔王の瘴気を浴びなければ魔族化は果たせません。未だ復活まで至らぬ魔王の首に、城外の家臣まで魔族化することはできなかったかと。」


 なるほど、まだ魔王の力は完全ではないということだ。

 ならば、魔王が復活する前にレガリア城に攻め込み、マドンナを倒す。

 そして魔王の復活を阻止するのだ。

 マシアス殿のおかげで戦略が見えてきた。


 「マシアス殿、魔物の兵力は?」


 「はい、ゴブリン兵が20万、オークが3千!」


 「ワイバーンは?」


 「ワイバーンに関しては見ておりませぬゆえ、はっきりしたことは分かりませんが、おおよそ200かと。」



 「ワイバーンが200もいるなりか!」


 幸村君が驚いたように声を上げた。


 「ワイバーンは航空戦力だ。200の編隊に空から攻撃されたら国民軍もひとたまりもない。」


 「三成君に相談してみるのだ。」


 「三成君になんとかできるのか?」


 「対ワイバーンの魔導兵器を作っているって言ってたなり。」


 「そんなもの作ってるのか?」


 「この間から納屋にはいってゴソゴソやってるなり。」


 「大丈夫なのか?」

 

 「三成君のことなり。きっと大丈夫なりよ!」




 幸村君がはそいうって笑ったが、私は心配になって三成君に手紙を書いた。


 『敵に200のワイバーンあり。この航空戦力にいかに立ち向かうなりや』と。


 手紙はサスケ君に託した。


 「サスケ君、この手紙を三成君に届けてくれ。大至急だ。」


 「はいニャ!」


 猫耳忍者は影にもぐり、影を伝って王都へ向かった。

 影の中は二次元の亜空間らしい。

 彼女らの影属性の魔法は、魔法ではないという説がある。

 影一族は、実は二次元人だというのだ。

 二次元人もいるとは、異世界も奥が深い。


 その翌日、サスケ君は三成君の返書を携えて戻ってきた。

 二次元の亜空間をワープしてきたようだ。


 「幸村君、三成君から返事が来たぞ!」


 「なんて書いてあるなりか?」


 私は返書を開くと、そこにはたった一言が書かれていた。



 『心配ご無用!』



 「何だこれは。」


 「きっと凄いもの作ってるなりよ!」


 「そのようだな。」



 さて、敵の戦力はおおよそ分かった。

 問題は魔王の復活だ。


 「幸村君、王家の人間は、誰もが魔族軍の侵攻を迎え撃つものだと思っているだろ。」


 「違うなりか?」


 「マドンナは魔王復活ののち、魔王を擁して王家討伐の兵を挙げるつもりだろう。」


 「分かったなり。魔王が復活する前に魔族を叩くなり!」


 「ならば、どうする?」


 「こちらからイースタリアに侵攻するなりよ!」


 「守りではなく」


 「攻めるなり!」


 「先手必勝だ!」


 「勝つ目算はあるなりか?」


 「三成君の魔導兵器は未知数だが、おおよそ勝つ算段はできている。」


 「戦争は計算してやるものなりね。」


 「そういうことだ。」



 私はマシアス殿から聞いた魔族の戦力と、それに対する作戦の詳細を書状にしたためてギョーム殿に送った。

 ギョーム殿はイースタリア侵攻をヒミカ女王に上奏《じょうそう》した。

 もはや魔族との戦いに消極的なウード卿はいない。


 ヒミカ殿は、その日のうちに魔族討伐の詔《みことのり》を発した。

 詔《みことのり》は力強い言葉で締めくくられていた。


 『女王の名において命ずる! 国民よ魔族を討て!』と。 




 幸村君は詔《みことのり》を読んで感動している。


 「ついに魔族と戦うときが来たなりね。」


 「そうだ、ウード卿には不本意だろうがな。」


 「ウード卿は魔族と戦いたくなかったなりか?」


 「ちょと違うな。ウード卿ら重臣の方々は、魔族討伐の軍は王家の命令で出したことにしたくなかったんだ。魔族との戦いに負けて和睦する場合、責任はすべて宰相のギョーム殿に押し付けるつもりだったんだろう。」


 「戦いに負けてたときの責任逃れなりか。マドンナにそんな言い訳は通用しないなり。」


 「そのとおりだ、マドンナは女王になりかがっているんだ。ヒミカ殿とツキヨミ殿を生かしておくはずがない。」


 「自分が唯一無二の女王様になりたいのがマドンナなり。」


 「まっ、ウード卿は現実を直視できないんだ。これまで自分たちのやり方で何とかなってきたと思っている。大公軍に攻められた時でさえ、王家の威信は揺るがないと思っていた人たちだ。」


 「ウード卿は帰ってこないなりか?」


 「大丈夫だ。ノーラ殿が接待攻めにしている。」



 女王の詔を受け、石田三成率いる10万の国民軍が王都を進発した。

 魔導兵器ディガン・ドロワを装備した近代的軍隊である。

 国民軍のユニフォームは防備よりも動きやすさを優先した軽装である。

 グランローゼの街の人々は「掃除夫のようだ」と揶揄《やゆ》したが、近代軍というのはこうでなくてはならない。きらびやかな鎧兜は必要ない。



 「石田三成殿、挙兵なり!」


 「幸村君、泣いているのか?」


 「この言葉を聞いて泣かない歴女はいないなり!」


 石田三成君と国民軍がイースタリアとの州境に到着したのは、その10日後のことであった。

 三成君は、対ワイバーン用の切り札を荷車に乗せて運んでいた。

 魔導決戦兵器バトル・アーマーである。

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