24,ヤマト発進!
グランローゼ城へ戻った時、私たちはバルディーノ殿ともうひとりの客人を同行していた。
エルキス・エクストン。ギヨーム殿の父君である。
「わしはギヨームに会わす顔がないからのう。」
やはり、親子の再会は果たせないようだ。
エルキス殿は400年前、初代王アマテラスに従って魔族と戦った経験がある。
その経験は、今また魔族との戦いに挑もうとしている私たちにも貴重なものだ。
「エルキス殿も私たちと来られるか?」
「何処へ行くのじゃ?」
「北へ行くなり。ノーザン・テリトリーなりよ。」
「そうじゃのう、そのほうがギヨームの奴に気を使わせんでよいかもしれん。」
「じゃ、決まりなりね。」
***
私たちはノーザン・テリトリーへ向かう。
陸路を取れば敵地を縦断しなくてはならないので、今回は海路を使う。
ツキヨミ殿が船を手配してくれた。
王家が建造した新造戦艦だという。
私たちは新造戦艦がロールアウトされるドックに向かった。
ドックでは船大工たちが綱を引いて、戦艦を海に引っぱり出そうとしている最中だった。
おおれっ! おおれぇ!
屈強な船大工たちが最後の力を振り絞ると、船は波音を立てて海に浮かんだ。
「16世紀の南蛮船みたいなり。」
「ガレオン船に似ているな。」
船は三本のマストを日に輝かせている。
「あの船に名前を付けなければならない。ツキヨミ殿が私に船に命名をすることを許してくれたんだ。」
「船の名前は何にするなりか?」
「私たち日本人が戦艦を命名するとすれば、ひとつしかないだろう。」
「何なりか?」
「もちろん、ヤマトだ! 男の戦艦だ!」
「女も乗るなりよ!」
戦艦ヤマトに私と幸村君、ヴァン殿とエルキス殿が乗り込んだ。
水夫たちが見事な手際でマストに帆を張っていく。
帆に風を送るのは私の役割だ。
船の航海には風の魔法を使うのである。
魔法で風を呼び、船を操るのだ。
私は力強く言い放った。
「ヤマト発進!」
このセリフは人生で一回は言ってみたかったセリフだ。
私の脳内では、あの勇壮なメロディーが鳴り響いていた。
よーそろー!
私は船の舵輪を握り、魔法を発動させた。
風の魔法は、ヤマトを水平線の彼方に運ぶ。
帆は風をはらみ、船はぐんぐんとスピードをあげていった。
ノースタリアまでは通常7日の航海なのだが、私の魔力があれば5日で到着するだろうと船長が太鼓判を押しくれた。
***
翌朝、ヤマトはイースタリア沖にさしかかる。
陸の上は敵地だ。
敵もこちらの動きを察知している可能性がある。
警戒を怠るな!
海は静かだった。
何かが起こる気配すらない。
「敵は、あたしたちの動きに気付いていないなりね。」
「そうかもしれないな。アーレスはレガリア城に腰を据えたばかりだ。軍事にしても内政にしても、立て直すのには時間がかかる。」
「あたしたちにしても、魔族包囲網を完成させるには時間が必要なり。」
「急ごう、風を強めるぞ!」
その時だった、ヤマトの前方で巨大な水しぶきがあがったのだ。
「何か来るなり!」
「魔獣だ! クジラみたいな魚の魔獣だ!」
「あれは海竜リバイアサンなり!」
海竜リバイアサンは猛然とヤマトに向かって突進してくる。
そして、その背中に仁王立ちになっているのは、マドンナ!
「おーほっほっほ! ヤマトの諸君、お久しぶりだねぇ! このリバイアサンの体当たりで、海の藻屑と消えな!」
また、マドンナか。性懲りもない奴だ。
「幸村君、主砲発射だ!」
「了解なり! ターゲットスコープ・オープンなり!」
「敵、2時の方向、射角ななめ30度!」
<< 『臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 列! 在! 前!>>
「エネルギー充填、120パーセントなり!」
「撃てーっ!」
「主砲、発射なり!」
-----ギュイイイィィィィィィィィィン!
炎の剣が発射されると、リバイアサンは海に潜った。
「だめなり。海の中では火の魔法は通用しないなり。」
「そうか、仕方がない。ここはリバイアサンをかわすぞ!」
―とりかじいっぱーい!
ヤマトは左にいっぱい舵を切ってリバイアサンの突撃ををかわした。
マドンナは憎々し気な口ぶりで叫んでいる。
「ちょこまか逃げ回るんじゃないよ。おとなしく海の底に沈みな。おーほっほっほっ!」
「また来るぞ!」
「先生の風を使うなり!」
「風ではあの魔獣は止められん!」
「音速の風なりよ! アレなら衝撃波でリバイアサンを吹っ飛ばせるなり!」
「音速の風かぁ。あれはなぁ、苦しいんだよ。体が焼けるようになるんだよ。」
「そんなこと言ってる場合じゃないなりよ。マドンナが笑ってるなり。」
「マドンナかぁ、あいつだけは許せん! やるぞ!」
「やるなり!」
<< ひとたび生を受け、滅せぬもののあるべきか! >>
!!!-滅-!!!!
----- ドドドドドドドドドーン!!!
海が大爆発を起こしたようだった。
水柱があがり、海の中にまで衝撃が走った。
海は静寂を取り戻した。
「お魚さんがいっぱい浮いてくるなり。」
「衝撃波でやられたか。お魚クンには気の毒な事をした。」
「あれは何なりか?」
海面にぼこぼこと泡が沸いている。
-----ザッブーン!
幸村君の指さす彼方に、巨大な魚が腹を上にして浮かびあがってきたのだ。
「リバイアサンだ。ひっくり返って気絶しているようだ。幸村君、とどめを刺せ!」
「主砲、発射なり!」
「撃てっー!」
幸村君の炎の剣がリバイアサンの腹を切り裂いた。
黒い血が海面を染めていく。
海竜リバイアサンは海の藻屑となった。
「リバイアサンが沈んでいくぞ。」
「マドンナは何処なりか?」
「逃げたんだな。あいつの魔法属性は水だ。水の中なら自由自在だろう。」
「ほんとに腹が立つ女なりね。」
まったくだ。
***
2日後の昼過ぎ、船はノーザン・テリトリーに到着した。
「ヴァン・ダイクン様のお帰りじゃ! 英雄がかえってきたぞーぉ!」
ヴァン殿が舳先から手を振ると、浜辺にドワーフたちが集まってくる。
ドワーフたちは男も女もがっしりとした体形をしている。
ヴァン殿のように背の高い者もいれば、低い者もいる。
私たちははしけを降ろして上陸した。
砂浜ではドワーフたちが魚を採るための網を手入れしている。
子どもたちは砂で遊んでいる。
平和な風景だ。
「ヴァン殿、ここは寒いな。」
私はコートを羽織り、首にマフラーをまいた。
「ここは北の大地ですぜ、寒いのは当たり前でさぁ。」
ヴァン殿はそう言って、森の向こうにそびえる山脈を見上げた。
「今夜は、雪になりますぜ。」
灰色の雲に覆われた空から、白い雪が舞い始めた。
「幸村君、復活編は少々疲れたな。」
「次回からは北へ行くなりね。」
「そうだ、北辺編の開始だ。日本列島で言えば東北地方だな。」
「食べ物がおいしい土地なりね。」
「歴史も豊かだぞ。私も仙台や平泉に行ったことがある。」
「美しい自然もあるなり。」
「空気が澄んでいて夜空の星がきれいだった。」
「星といえば、この下にもあるなりよ。」
「☆☆☆☆☆だな。」
「5つの星が輝いて欲しいなり!」
「読者のみなさま、よろしくお願いいたします。」
「ブクマも待ってるなりよ!」




