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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第二章 領主編

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86 真相 2

 ルシルさんは、夜になっても帰って来なかった。

 夜になると、宴が始まった。ガネーシャにドワーフの酒を振る舞うと、大喜びされた。


「ここまで旨い酒を飲んだのは、いつぶりだろうか・・・本当に感謝する」


 宴でも、ガネーシャの周りには多くの魔族たちが集まって来た。

 本当に慕われているようだ。

 愛子ちゃんが言う。


「ガネーシャさんは神様なんだけど、お酒に弱いんだよね」


 それは本当だった。

 酒に酔ったガネーシャは、俺にも絡んできた。


「飲んでるか?やっとだ・・・やっとこの大陸の魔族たちが、飢えることがなくなった・・・これも愛子のお蔭だ。愛子、こっちに来なさい。高い高いしてやろう・・・」


 愛子ちゃんが渋々、従う。

 嫌そうだけど、でも少し嬉しそうだ。


 ガネーシャはカヨさんにも絡んでいた。


「新婚か・・・だったら、我が祝いの舞いを披露してやろう」


 ガネーシャは踊り始めた。

 それに合わせて、魔族たちも踊り始める。もう盆踊りのようになっている。


 愛子ちゃんが言う。


「宴会の時はいつも、ああなるのよ。ガネーシャさんが言うには、有難い舞いらしいけど、ただ楽しんで踊っているだけなんだよね

「でも、みんなを笑顔にする踊りは、素晴らしいと思うよ。だったら私も、少しみんなを笑顔にしよう」


 まあ、スプーン曲げをするだけだけどな・・・


 それでも、ガネーシャのウケはよかった。


「見事だ、ケイスケ。我が加護を授けてやろう・・・」


 俺のスプーンが光輝いた。


「あ、ありがとうございます・・・ところで、どんな加護を?」


 聞いてもガネーシャは答えなかった。

 酔いつぶれて寝てしまったからだ。酔った勢いで、加護を与えるなんて・・・


 まあ、馬鹿女神よりはマシか・・・



 ★★★


 次の日、ルシルさんが帰ってきた。

 みんなを集めて、ルシルさんの報告を聞く。


「すべてを調べきれたわけではないのですが、概ねガネーシャ様の言う通りでした。エリス様がガネーシャ様を陥れたことは間違いないようです」


 マリアさんが叫ぶ。


「そ、そんな・・・だったら、私たちの信仰は何だったのですか!?伝承にある奇跡についても、すべて嘘だったと?」

「すべてが嘘だったことにはなりませんが、エリス様もすべてを語ったわけではないということです。一つの事象でも、立場が違えば違った見方になりますからね」


 マリアさんにしてみたら、かなりショックだろう。

 自分が信仰してきた神が、大嘘つきだったなんてな。


「そんな・・・だったら300年前の奇跡の施しや200年前の愛の恵みは?」


 ガネーシャが言う。


「竜巻災害と豪雨災害のことだな?よく覚えている。我の力の大半を使って復興を行ったのだ。どちらも我は力を使い過ぎて、しばらく動けなくなった。後で聞いた話だが、復興が進んだ頃にエリスが人族の前に降臨して自分の手柄にしたらしいが・・・」


 カヨさんが言う。


「前の会社にも、そんな同僚がいましたね・・・」

「私の同期も、そんな奴がいました。私も被害を受けた一人です」


 その同期は、俺が半年以上掛けて取り組んでいたプロジェクトを横取りした。

 もう何年も前の話だが、昨日のことのように思い出すな・・・


「腹が立ちますね・・・」

「私もです。天罰が下れと、祈ったものでしたよ」


 マリアさんは、それからもガネーシャに質問を続けた。

 過去の伝承にある奇跡の類は、ほとんどがガネーシャがやったことだったそうだ。そして、そのすべてを馬鹿女神が自分の手柄にしていた。


「神の力の源は信仰心だ。汚い話だが力を使っても、それ相応の信仰心が集まれば収支はプラスだ。しかし、我に信仰心は集まらなかった。この大陸に来てからも信仰心で集めた力はすべて、この大陸の発展のために使ってきた。だから我に力はないのだ」


 多分、このガネーシャは昨日の飲み会で勢いで加護を与えるくらいだから、力の使い方がどんぶり勘定なのだろう。


「ガネーシャ様、今現在の信仰心と使う力のバランスはどうなのでしょうか?」

「愛子が来てからは、やっとプラスになった。だが、微々たるものだ。このままであれば100年程で、我は天界に帰ることができる」


 100年か・・・


 カヨさんが言う。


「だったら、信仰心を集めてみてはどうでしょうか?」

「無理に信仰心を集めるなど、我はしたくはない」


 魔族たちは、無理に信仰しているわけではないと思うけど・・・


 待てよ・・・だったら、やり方があるんじゃないのか?


「ガネーシャ様、こちらで勝手に信仰心を集めるのは、いいのですね?」


「勝手に信仰してくれることは構わない。むしろ嬉しい。こう見えても我は神だからな」


 多分、というか絶対ガネーシャは良い神様だ。

 自分のことは後回しで、いつもみんなのことを第一に考えている。ただ、要領が悪いだけだ。


 カヨさんが言う。


「だったら、お任せください。私たちは、これでも信仰心をたくさん集めた経験がありますからね」


 こうして、ガネーシャの討伐から一転、ガネーシャの信仰心を集めることになってしまった。

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