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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第二章 領主編

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85 真相

 ガネーシャが言う。


「愛子、お母さんと一緒に暮らしたほうがいい」

「で、でも・・・作物が・・・」

「今のままでは厳しいけど、それでも品種改良は進んでいるし、我の力も徐々にだが戻ってきた。それに誰かの幸せを犠牲にして成り立つ幸せなんて歪だからな」


 愛子ちゃんが、ルシルさんに向き直って言った。


「ママ!!品種改良が上手くいって、私がいなくても大陸中の作物が育つようになるまでは、ここにいさせて」

「少し、考えさせて・・・」


 俺は思い切ってガネーシャに質問をしてみた。ここまでの言動からは、邪神とは到底思えない。


「あのう、ガネーシャ様は、邪神なのでしょうか?私たちは、創造神エリス様から貴方を討伐するように言われているのですが・・・」

「邪神?我は最下級の神だが、それでも悪いことをしてはいないぞ。まあ、知らず知らずのうちにやってしまっている可能性はあるが・・・」


 かなり謙虚な神様だ。

 カヨさんも質問する。


「同じ世界に神様が複数いるのは、いいのでしょうか?この世界を管轄するのは、エリス様だという話でしたけど?」

「こう見えて、我もこの世界を管轄しているのだ。まあ、ここまで力が弱くなれば、その辺の獣人と大差はないがな」


 ルシルさんが言う。


「私もこの世界は、エリス様が作ったと聞きました。ガネーシャ様も管轄しているというのは、どういうことでしょうか?」

「実は、この世界は共同開発する話でスタートしたのだ。それを話す前に天界の事情に少し触れなければならん。天界には、エリスが所属する人神派閥、我が属する魔獣神派閥、少し特殊だが、ダンジョン神派閥やスキル神派閥などがある。主に天地を創造する力を持つのが、人神派閥と魔獣神派閥だ」


 壮大な話になってきた。

 人神派閥は、馬鹿女神に代表されるような人型の神様の集団で、魔獣神派閥はガネーシャのような獣人や魔族に似た姿をした神が属しているらしい。


「まあ、同じようなことを行う人神派閥と魔獣神派閥は仲が悪い。それに心を痛めていた最高神ゼウス様が派閥間の仲を取り持とうと、この世界の共同開発事業が持ち上がったのだ。それで人神派閥からはエリス、魔獣神派閥からは我が選ばれた。理由は、我らが最下級の神だったからだ」


 詳しく聞くと、当時はガネーシャも馬鹿女神も最下級の神で、日本の会社でたとえるとアルバイトから正社員に昇格して間もない感じのようだ。


「ゼウス様は人神派閥と魔獣神派閥の仲を取り持とうと思っていたのだが、ずっとライバル関係だった両派閥は対抗心を剥き出しにした。我も何をしてもいいから、エリスを出し抜けと指示を受けていた。多分、エリスもそうだったのだろう・・・」


 そこでガネーシャは言葉を切った。


「我は神となる前は獣人であった。こことは別の世界で王だったのだ。そこでは種族間の争いが絶えず、何度も神に祈ったものだ。そんな経験があるから獣神派閥の指示は受け入れられなかった。我はエリスに言った。『上の指示は無視して、共に平和な世界を作ろう』とな。しかし、結果は・・・」


 ガネーシャが言うには、馬鹿女神もこれには同意したそうだ。その時、世界の構築に使う力のほとんどをガネーシャが拠出したそうだ。そしてあろうことか馬鹿女神は、力を使い果たし、弱ったガネーシャを裏切ったようだ。


「エリスは配下の人族を使い、魔族の掃討作戦を行った。その結果、多くの魔族たちが被害に遭った。我はエリスに懇願した。彼らの命だけは保証してくれとな。結果、獣人たちはお前たちの住む大陸に残ることができたが、人族と姿が違い過ぎる魔族は迫害され続けることになった。それで意を決して暗黒大陸に移住したというわけだ」


 ルシルさんが言う。


「失礼ですが、天界でガネーシャ様は闇落ちした神という噂が流れていました。天界に戻って来ず、下界で悪事を繰り返していると・・・」

「天界には帰れないのだ。というのも、我の力のほとんどをこの大陸の発展に使っている。天界に帰るために力を使うと、この大陸自体が崩壊しかねん。今思えば、これもエリスの策略だったのかもしれんな。我をこの地に留め置くためのな・・・」


 俺たちにしてみたら、どっちを信じるかという話だ。

 馬鹿女神のことは、信じられないけど、かといってガネーシャが本当のことを言っているとも言い切れない。


 そんな時、愛子ちゃんが叫んだ。


「ガネーシャさんは、いい神様だよ!!ママ、お願い。ガネーシャさんを信じてあげて」

「愛子・・・分かったわ。すぐに信じられないから、これからこっそり天界に戻って調査してくる。ケイスケさん、カヨさん、しばらく待っていてください」


 ルシルさんは魔法を唱え、消え去ってしまった。


 ガネーシャが俺たちに向き直って言った。


「そういえば、貴殿らのお蔭で、かなり仕事が捗ったと配下の者が言っておった。礼を言う」

「いえいえ、私たちもここで、よくしてもらいましたしね」

「何かやりたいが、あまり渡せる物はない。我の力が溜まれば、加護を与えてもいいのだが・・・」


 ここまでガネーシャと接してみて、絶対に悪い神様じゃないと思ってしまった。

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