84 邪神ガネーシャ 2
神殿での滞在は2週間を迎えた。
俺たちはというと、3日目から農作業や神殿の施設づくりを手伝っていた。何もしないのに食事や寝床を提供されることに悪いと思ったからだ。若干、これから討伐するかもしれない邪神の手伝いをすることに違和感を覚えたけど。
今日は倉庫づくりを行った。
カヨさんが木を伐採し、俺が運搬する。ルシルさんが魔法で組み立てていく。神殿で働いている魔族たちも驚いている。
「アンタたちは凄いな。天女様のジョウロみたいな物を持ってるんだな?」
「そうよね。どうやったら貰えるのかしら?」
「俺も欲しいな・・・」
俺とカヨさんの神器には、かなり興味を示された。
それとなく、天女様が持っているというジョウロについて聞いてみた。
「天女様のジョウロは凄いんだ。水を汲まなくても水が出てくるし、その水を使うと作物がすぐに成長するんだ」
「それにいっぱい出してくれるんだ。この神殿にもいくつかあるから、見せてやろうか?」
ルシルさんが答える。
「是非、お願いします」
見せてもらったのは、金色のジョウロだった。
ルシルさんが言う。
「間違いなくエリス様の神器です。ただ、このジョウロには、別の神の加護も付与されています。それを考えると、残念ながら・・・」
洗脳されているのか・・・
「でも、邪神といっても、話くらいはできるかもしれませんし・・・」
「そうですね。それに望みを賭けましょう」
話はできるとは思う。
だが、一応戦闘できるようには、しておかないとな。
★★★
神殿に着いて3週間が経った頃、神殿が急に騒がしくなった。
ゴーラさんに尋ねる。
「実はもうすぐ、ガネーシャ様と天女様がご帰還されるのです。先程、先触れが到着しました。お出迎えの準備をしなければいけませんから、私はこれで失礼します」
いよいよ来たか・・・
しばらくして、大名行列のような集団が神殿に到着した。
魔族たちは皆、笑顔だ。
「ガネーシャ様!!お帰りなさいませ!!」
「天女様!!ご苦労様でした」
「今回も大成功だったのですね!?」
もうお祭り騒ぎだ。
これで「討伐に来た」とは、流石に言いづらい。カヨさんも同じ気持ちのようだ。
「私には、魔族たちが洗脳されているようには、見えないんですけど・・・」
「私にもそう見えますね」
ルシルさんはというと、いつもの冷静な感じではなく、いつになく、そわそわしていた。
そして、行列の中央部に位置している一際大きな馬車から、象の獣人のような男が下りて来た。
「ガネーシャ様!!」
象の獣人のような男が、邪神ガネーシャのようだ。
体はオーガ並みに大きく、神々しいオーラは感じるが、作業服のような格好だ。
そして同じ馬車から、黒髪で黒目の10歳くらいの少女が降りて来た。
「天女様!!」
間違いない、天女様だ。
おぼろげな記憶だが、女神の神殿で泣き叫びながら転移させられた少女によく似ている。
そんな中、ルシルさんが驚きの行動に出る。
なんと、天女様に駆け寄って抱きしめた。
「あ、愛子・・・会いたかった・・・」
突然のことで、場は静まり返った。
天女様はというと、キョトンとしていた。
「えっと・・・誰?」
「あっ!!そうね。この姿じゃ分からないよね?じゃあ、これならどう?」
ルシルさんは、天使の姿から日本人女性の姿になった。
どことなく見覚えがあるような、ないような・・・
「ママ?ママなの?会いたかった・・・」
今度は愛子と呼ばれた少女が、ルシルさんを抱きしめた。
ガネーシャが言う。
「愛子、よかったな」
「はい!!ガネーシャさんの言ったとおり、頑張っていたら、きっといいことがあるって・・・ありがとうございました」
全く思考が追いつかない。
ルシルさんも元々は、俺たちと同じ108人の転移者のうちの一人だ。
となると・・・
少し、落ち着いたルシルさんが言った。
「ケイスケさん、カヨさん、マリアさん・・・今まで秘密にしていて、すみませんでした。私は別の目的があって、行動していたんです」
「あのう・・・話が全く見えないのですが・・・」
ガネーシャが落ち着いた口調で言った。
「折角の親子の再会だ。礼拝所でゆっくりと話すといい」
俺たちは、ガネーシャに案内され、礼拝所に入った。
★★★
礼拝所は、祭壇があるだけで装飾品の類は全くなかった。これだけでもガネーシャの質素な性格が窺える。
ガネーシャが言う。
「愛子ちゃん、お母さんにこれまでのことを話してあげなさい」
「はい。電車に乗っていたら、お母さんと離れ離れになって・・・それで変な神殿で女神にジョウロを貰って・・・」
神器のジョウロを女神から貰った愛子ちゃんは、暗黒大陸に転移したようだ。
運がいいのか、悪いのか、ガネーシャの神殿の近くに転移したので、ガネーシャに保護されたようだ。
そして愛子ちゃんは、ガネーシャを手伝うようになる。
「愛子のジョウロは、水を無尽蔵に生み出せた。だから、その水に私の加護を与えた。そうすると、作物が育つようになって・・・愛子には、感謝してもしきれないよ」
ルシルさんが言う。
「愛子を保護してくださったことは、感謝しています。しかし、私としては愛子を連れて帰りたいのですが・・・」
親としては、当然だろう。
しかし、愛子ちゃんは予想外のことを言った。
「ママ、ごめん。私はママと一緒に行けない。私がここを離れたら、ここの人たちが困るのよ・・・」
まさか、ガネーシャに洗脳されているのか?
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




