83 邪神ガネーシャ
邪神ガネーシャ、それがこの暗黒大陸を支配する邪神のようだ。
しかし邪神とは言えないくらい、魔族たちの評判はいい。行く先々で、天女様と同じくらい感謝されていた。
それとなくゴブラスや、同行しているオーガやインプたちに聞いてみる。
「ガネーシャ様は本当に素晴らしい方だ。作物がほとんど育たない暗黒大陸でも栽培可能な作物を品種改良されたり、飢饉の時は、自ら強力な魔物を狩ったりして、俺たちに食料を与えてくれたんだ」
「そうだ。仲の悪い種族の戦争を止めたりもしてくれたな」
「ガネーシャ様は、どんな種族にも分け隔てなく愛情を注いでくださる」
「天女様が現れたのも、ガネーシャ様の思いが天に通じたんだと思うのだ」
話を聞くかぎり、馬鹿女神のほうが邪神だと思う。
ルシルさんもそれとなく尋ねる。
「天女様の様子はどうでしたか?無理やり働かされているなんてことは、ありませんか?」
「それはないぞ。天女様は小さいけど一生懸命に頑張ってくれている」
「そうだ。それにガネーシャ様が止めても、働くのをやめないんだ」
「本当に天女様はいい子だ。親の顔が見てみたい」
カヨさんが言う。
「多分、話くらいはできるんじゃないでしょうか?」
「私もそう思います。あの女神に比べたら・・・」
★★★
次の日、俺たちは商業都市を出発して、邪神が祀られている神殿に向かった。
商業都市でも多くの者が、俺たちに同行することになった。
ゴブラスに理由を尋ねる。
「この商業都市は、ガネーシャ様の神殿に近いし、定期的に参拝に行く者も多いんだ。それにケイスケ殿と一緒にいれば、面白いし、何たってアンタらは俺たちよりも強いからな。魔族は強い奴が好きなんだ」
スプーン曲げで魔族の心を掴んでいるのもそうだが、道中で魔物を討伐したことも大きい。かなり魔物は強いらしいけど、俺にはあんまり関係ない。だって、大きなスプーンを落すだけだからな。
商業都市から3日程で神殿に到着した。
神殿というよりは農場に近かった。様々な種族の者たちが、色々な作物を作っている。
ゴブラスが作業をしているゴブリンの女性に声を掛けた。
「おい、ゴーラ!!久しぶりだな」
「ゴブラス?どうしたの、こんな所に来て?」
「天女様の知り合いの方々をお連れしたんだ。天女様と同じく、こちらの方々も凄いんだぞ」
「そうなの?でも、天女様とガネーシャ様は、まだ帰って来られてないわ。しばらく、滞在してもらうのは構わないけど、大したおもてなしは、できないんだけど・・・」
ルシルさんが言う。
「構いませんよ。こちらで待たせていただきます」
「分かりました。では、宿泊施設に案内しますね」
俺たちは、神殿の宿泊施設に案内された。
宿泊施設もそうだが、礼拝所も大して立派なものではなかった。日本で言うと、少し小さな神社くらいの大きさしかない。
ゴーラさんが説明をしてくれる。
「ガネーシャ様は贅沢を好まれません。そんなことをするくらいなら、一人でも多くの民を救うために力を使うようにと指導されています。それに雨露が凌げれば、それでいいとのことです」
馬鹿女神とは雲泥の差だ。
食事も提供された。
決して豪華な料理ではなかったが、採れ立ての野菜やフルーツは美味しかったし、かなりの量を出してくれた。
「ここは作物がよく育つんですよ。だから、遠慮なく食べてくださいね。というのも、ここは実験農場ですからね」
詳しくゴーラさんから聞くと、暗黒大陸は作物が育ちにくい環境で、ガネーシャが少しでも食糧事情を改善しようと考え、作物の品種改良に取り組んでいたようだ。そういえば、ゴブリンの町やオーガの里で食べた作物もここで作っている。
「ここで働いている者は、それぞれの故郷から交替で来ているんですよ。ここで農業を学び、故郷に帰って、故郷を救う。そのためにここで頑張っているんです。それでも、最初はなかなか上手くいきませんでした。でも天女様が来てからは、すべてが上手くいくようになったんです」
天女様は、魔族にとって救世主のような存在なのだろう。
それとガネーシャだが、どう考えても悪い邪神ではない。しかし、神が地上に降りて、活動することは可能なのか?
ルシルさんに聞いてみた。
「神が地上に降りて、活動すること自体は珍しいことではありません。しかし、地上に降りると神の力が制限されます。神のランクが上がれば上がるほど、そんなことをする神はいなくなります。エリス様のように一定の者に神の加護を与え、使命を果たさせるくらいでしょうね」
「となるとガネーシャは、そこまで上の神ではないということですか?」
「そうだと思います」
討伐するにしろ、しないにしろ、まずは会って話をする必要があるな・・・
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