82 魔族の町
俺たちが町に入ると大歓迎を受ける。
領主っぽいゴブリンが挨拶してくる。
「儂はゴブノフじゃ。天女様のお知り合いなのじゃな?だったら、ゆっくりしていくといい」
ルシルさんが質問する。
「ところで、天女様は今どこに?」
「3ヶ月前に定期訪問で来られたのじゃが、次の訪問は半年後じゃな。今はどこにいるかは分からん。急ぐならオーガの里で聞いてみればいい」
領主のゴブリンが言うには、暗黒大陸中を旅して周っているそうだ。
というのも、暗黒大陸は作物の育ちにくい環境だったのだが、天女様の力によって作物が育つようになったようで、各地を周って人々を助けているらしい。
「ガネーシャ様と一緒に各地を周られているのじゃ。ガネーシャ様が長年に渡って、民のために頑張って来た活動が実を結んだのじゃ。感謝してもしきれない」
領主のゴブリンは涙ぐむ。
ゴブリンは数こそ多いが、非常に弱い種族で、他種族から搾取され続けてきた過去があったそうだ。それが暗黒大陸中の食料事情が改善して、そんなこともなくなったみたいだった。
「ゴブリンだけでなく、多くの種族が天女様とガネーシャ様には感謝しておる。天女様を捜す旅に出るなら案内役をつけよう。
おい!!ゴブラス!!お前が、この方たちを天女様の元に案内せよ」
「はい!!この命に代えても」
案内役まで用意してくれた。
「暗黒大陸の食糧事情が改善したといっても、まだまだ強力な魔物がうようよいる。アンタらに何かあったら困るからな。それはそうと、今日はゆっくりと楽しんでくれ。料理も酒もいっぱい用意したからな」
ここまで歓待してくれるとは、正直思わなかった。
ちょっと悪い気がしたので、マリアさんの聖なる革袋からドワーフ特産のチュウハイを振る舞うことにした。
「これは本当に旨いのう・・・流石は天女様のお知り合いの方々じゃ」
これも大好評だった。
こうなると、俺のやる事は一つだ。もちろんアレだ。
「す、凄い!!」
「スプーンが曲がってるよ!!」
「もっと見せて!!」
子供たちには、やっぱりウケがいい。
次の日俺たちは、オーガの里に出発した。
食べきれないくらいの食料も貰った。悪いので断ろうとしたが・・・
「気にすることはない。あんないい酒を貰い、更にあんな楽しい芸まで披露してくれたからな。また、この町にも来てくれ」
「ありがとうございます。絶対にまた来ますね」
盛大な見送りを受け、俺たちはゴブリンの町を後にした。
★★★
2日程で、オーガの里に到着した。
オーガは青色の体色で、かなり大きい。平均身長が2メートル以上はある。案内役のゴブラスが言う。
「こちらは天女様のお知り合いの方々だ。しっかりもてなすようにと、ゴブノフ様からの伝言だ」
門番のオーガが言う。
「何だと!?それは大変だ。すぐに宴の準備をする」
そこから先は、同じパターンだった。
盛大に歓待を受け、こちらがドワーフ特産のお酒をお返しで渡す。そして、俺がスプーン曲げを披露する。
そして次の日には、オーガの里を後にした。
こちらもオーガの案内役を付けてくれた。
★★★
どこに行っても、俺たちは歓待される。
オーガの里の後は、オークという豚っぽい魔族の村、その後はインプ族という小柄な魔族の村、そして今日は、多くの種族が共存する商業都市に到着した。
カヨさんが言う。
「本当に新婚旅行みたいですね?」
「そうですね。楽しんでもらえて、よかったです」
「でも、ちゃんとした新婚旅行もしてみたいですけど・・・」
「分かってますよ。帰ったらちゃんと準備します」
そんな話をしていたところ、ゴブラスが言ってきた。
「ここは、商業都市で観光名所もそれなりにあるんだ。色々案内してやるよ」
「で、でも・・・天女様を捜さないと・・・」
ルシルさんが言う。
「私とマリアさんで、天女様の情報を集めますので、お二人は楽しんで来てください」
「ありがとうございます」
というのも、この商業都市に来て、天女様の足取りはすぐに分からなかった。ここまで大きな町だと、そんなに簡単に情報は集まらないようだ。
まあ、俺としてはカヨさんとデートができるからよかったけどな。
ゴブラスは有能なガイドだった。
見晴らしのいい展望台に案内してくれたり、美味しいレストランにも連れて行ってくれた。本当にガイドを雇って新婚旅行をしているようだった。
「ゴブラスさん、本当にありがとうございます。こんなによくしていただいて」
「気にするな。それくらい俺たちは、天女様に感謝しているってことだ。もし、天女様がいなかったら、こんなことはできなかったしな」
天女様か・・・
デートを楽しんだ俺たちは宿に戻った。部屋ではカヨさんと二人っきりになった。
「天女様が見つかったとして、連れて帰っていいものでしょうか?」
「それはそうですよね。サチコさんやマナミさん、ヒロコさんのパターンもありますからね。下手に連れて帰ると、それこそ戦争になりますよ」
「私もそう思います。だから、本人が嫌だと言えば連れて帰るのは、やめませんか?」
「その意見には賛成です」
そんな話をしているところに、ルシルさんたちが戻って来た。
「情報によると、天女様ご一行は、『少し離れた村に向かう』と言っていたようですが、場所がよく分からないのです。それで考えたのですが・・・邪神を祀る神殿に向かうことにしました」
ルシルさんが言うには、情報によると地方への訪問が終ると、一度邪神を祀る神殿に帰還するようだ。そこで天女様が帰って来るまで待つという話だった。
「危険かもしれませんが、そこで天女様と接触するのが、一番確実だと思います。それと、その邪神というのは・・・」
俺とカヨさんは絶句した。
「それって、天女様は邪神に洗脳されているということですか?」
「残念ながら、その可能性は高いかと・・・」
ルシルさんは落ち込んでいる。
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