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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第二章 領主編

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80 女神の依頼

 まだ見つかっていない転移者を保護しろというのは分かる。しかし、ついでに邪神を倒してこいっていうのは都合が良すぎる。こっちだって今の生活があるし、わざわざ危険な暗黒大陸に行くなんて嫌だ。


「もし、この状況を放置した場合、どのようなことが起こるのですか?」

「それは・・・物凄く恐ろしいことが起きるのです」

「具体的には?」

「それは世界が崩壊するかもしれません・・・」


 具体的な危険性はないのか?


 ルシルさんが解説してくれる。


「エリス様によると、邪神の力はそこまで強くはないそうです。普通なら無視していいレベルです。しかし、問題なのは転移者です。何年も生き延びていることを考えると、かなりの神器レベルに達している可能性もあります。もし、邪神にその者が洗脳れていると仮定しましょう。どう思いますか?

ケイスケさんレベルの者が、こちらに攻め込んで来たら?」


 カヨさんとショウタ君が言う。


「それはかなり不味いですね」

「普通の町なら、あっという間に更地だよ・・・」


 俺を核兵器みたいに言うな!!

 カヨさんもショウタ君も同じようなもんだからな!!


「転移者の保護というのは理解できます。しかし、邪神が世界を混乱に陥れた犯人であるというのは早計ではありませんか?何か証拠があるのですか?」


「邪神は悪い奴です。だから間違いありません」


 女神の発言に一同が絶句した。

 女神のことだ、冤罪ということもありえる。


 ルシルさんが言う。


「では、こういうのはどうでしょうか?こちらの依頼としては転移者の保護が最優先、もし邪神が裏で糸を引いていることが判明したら討伐するというのは?」


 それが現実的だな・・・


「分かりました。それで暗黒大陸に向かうメンバーはどうしましょうか?」


 女神が言う。


「そんなの神器を持っている勇者全員です」


 本当に女神は自分勝手な奴だ。



 ★★★


 女神の計画は早々に破綻することになった。

 まずは聖なる鉄パイプを持つサクラさんだが、第二子を妊娠してたことを理由に辞退した。続いてマナミさんは酒造りのため、ヒロコさんも神獣様のお世話が忙しいということで辞退する。サチコさんにあっては、通信の魔道具で散々文句を言っていた。

 そして、ショウタ君も・・・


「流石に支部長の仕事もあるし、家族もいるし・・・急に言われても無理だよ」


 それはそうだ。

 女神が怒鳴る。


「なんて使命感がないんでしょうか!?私の神器のお蔭で、ここまでやって来れたはずなのに・・・」


 そんなことを言われても、そもそもがアンタの人選ミスだし、マナミさんもヒロコさんも神器が無くても十分にやって来れている。


「仕方ありません・・・結局は二人のみですか・・・」


 俺とカヨさんに拒否権はないようだった。

 しかし、俺とカヨさんも新婚だ。できれば断りたい。


「流石に二人だけでは・・・」

「心配いりませんよ。ルシルも同行させます」


 ルシルさんが言う。


「どうかお願いします。無理を言っているのは十分理解しています。しかし、暗黒大陸にいる転移者のことを思うと・・・」


 ルシルさんは、深々と頭を下げた。


「ルシルさん・・・頭を上げてください。俺としては・・・」

「行ってくださるんですね?ありがとうございます」


 ルシルさんは、いつになく強引だった。

 マリアさんも続く。


「勇者様方のような力はありませんが、私はそれなりに回復魔法を使えますし、戦闘訓練も受けています。どうか私も連れて行ってください」


 馬鹿女神が大喜びする。


「どこかの馬鹿勇者とは大違いです。そんな貴方には、これを授けましょう」


 馬鹿女神がマリアさんに差し出したのは、何の変哲もない革袋だった。


「これは聖なる革袋です。見た目は小さいですが、スキルレベル1でも、馬車1台分は収納できるのですよ」


 どうやら、異空間にアイテムを収納できるアイテムボックスのようだった。

 マリアさんは涙を流して、お礼を言う。


「ああ・・・なんと有難い。私の信仰心が通じたのですね・・・」


 感動的な光景のようだが、冷静に考えると、どうも騙されているように思ってしまう。

 ルシルさんが苦言を呈する。


「エリス様、そんなにポンポンと神器を与えては混乱が起きます。少し自重されたほうが・・・」

「今は世界の危機なのです。これくらいなら事後承認で何とかなります」


 神様の事情は分からないが、この馬鹿女神は何かルール違反をしているようだ。


 俺はカヨさんを見る。


「仕方ないですよ。ケイスケさんはそういう人ですからね。それに結婚式と新婚旅行の順番が入れ替わったと思えばいいですよ」

「本当にすみません・・・」


 女神が言う。


「そうですね。新婚旅行のついでに最後の勇者を救い、邪神を討伐してきてください。もちろん新婚旅行の費用はこちらで出してあげますよ」

「エリス様・・・それも神界の規定に・・・」

「ルシル、黙りなさい。中級神の私に不可能はありません」


 ルシルさんは諦めたように黙り込む。


「もうこんな時間ですわ。これから上級神様の食事会に出なければなりません。ルシル、後は貴方がちゃんとやっておきなさい」


 俺たちを残し、女神は消えていった。


 本当に勝手な奴だ・・・

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