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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第二章 領主編

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77 王都奪還作戦 4

 いよいよ王城を解放することになる。

 その前に最後の仕上げを行う。アイーシャ皇女を呼んだのも、そのためだ。アイーシャ皇女はノーリちゃんに乗って王都を飛び回り、拡声の魔道具で広報活動を行う。


「ティーラム帝国は全面的に現国王陛下を支持します。王城を乗っ取っている不逞の輩を許すことはしません。しかし安心してください。皆さんに危険は及びませんよ」


 帝国としては王城を占拠しているブロンベルク侯爵一派ではなく、現国王を支持することを伝え、更に国王陛下はあくまでも王都の民を思って王城を明け渡したことにしている。もちろん、帝国の総意とは言い難いし、王城を明け渡したのだって王都の民を思ってのことではないけどな。


 だけど、これくらいの情報操作は許される範囲だろう。


 更に王城内への工作も忘れない。

 実は密かにこちら側の工作員が王城に潜入している。


 出入りはどうするかって?

 そんなのスキルで出したスプーンだから、何とでもなる。1箇所だけ少し小さくするだけでいいからな。


 工作活動も上手くいっているようだ。

 事件とは何の関係もなく、偶々王城に居合わせた者は工作員の指示に従うし、ブロンベルク侯爵に従っている者でさえ、「こちらに味方すれば、恩赦がある」という話を信じて協力している状況だ。


 そしていよいよ王城に突入する。

 正面の門にある巨大なスプーンを取り除き、精鋭部隊が突入した。まあ、俺は突入しないんだけどな。


 しばらくして、通信の魔道具に報告が入る。


「ブロンベルク侯爵、並びにその娘コローナの身柄を確保しました」


 グレーテルお嬢様が言う。


「まだまだ油断はできませんが、これで一段落ですね。ケイスケ、本当にありがとうございました。ここまでこれたのも、すべてケイスケのお蔭です。あの日、ケイスケに出会っていなければ今の私はなかったでしょう」


 最大級の賛辞をもらった。


「そ、そんな・・・私だって、グレーテルお嬢様と出会っていなければ、ただのスプーン曲げ芸人だったでしょうからね。今もどこかの街角で、スプーンをせっせと曲げていたかもしれませんよ」


「それは・・・そうかもしれませんね」


 それからしばらくして、ブロンベルク侯爵とコローナ嬢、それに側近たちは連行されて行く。報告によると既に観念したようで、暴れることはなかったそうだ。



 ★★★


 それから3ヶ月が経った。

 今日はグレーテルお嬢様と王太子殿下の結婚式だ。俺とカヨさんとショウタ君、それにアイーシャ皇女、他の転移者たちも出席している。幸せそうなグレーテルお嬢様を見ていると、涙が出そうになる。

 アイーシャ皇女の護衛騎士バスラさんが言う。


「近い将来のアイーシャ皇女のお姿と重ね合わせてしまって・・・涙が止まりません」


 それぞれ思いがあるようだ。


 俺はというと、凄く幸せな気持ちになっていた。でも少し寂しい。

 これが娘を嫁に出す父親の心境なのだろうか?


 結婚式が終り、今度は晩餐会が始まった。

 多くの参加者がグレーテルお嬢様と王太子殿下に挨拶をするので、俺たちと話す時間はほとんどなかった。それでも時間を作って応対してくれた。


「ケイスケ、貴方も覚悟を決めなさい。いくら我慢強いカヨでも、もう待ちきれませんよ」

「は、はい・・・」

「では私と約束です。今日中に何とかしなさい」

「今日中ですか?それは・・・」

「もう時間がありません!!早く行きなさい!!」


 半ば追い出されるようにして、俺はカヨさんの所に向かった。


「か、カヨさん・・・少しお話が・・・」

「どうぞ」

「ちょっとここでは・・・」


 俺はカヨさんとバルコニーに出た。


「えっと・・・これまで私の側で支えてくれて、本当に感謝しています。カヨさんがいなかったら、今の私はなかったと思います」

「それは私にも言えることですよ」

「それで・・・できれば、このままずっと一緒に・・・」

「それってどういう意味ですか?はっきり言ってもらわないと分かりませよ」


 俺は意を決して言った。


「結婚してくれませんか?」


 ため息を吐きながら、カヨさんが言った。


「やっと言ってくれましたね・・・」


 そしてカヨさんは、俺の胸に飛び込んで来た。

 呆気に取られていると、拍手が聞こえてきた。周囲を見回す。ショウタ君やサチコさん、他の転移者たち、グレーテルお嬢様と王太子殿下、アイーシャ皇女・・・


 グレーテルお嬢様が言う。


「少し強引でしたが、これでよかったと思います」


 ショウタ君が言う。


「そうだね・・・よかったね、カヨさん」


 サチコさんが言う。


「もう、いつまで待たせるんだって話だよ・・・まあ、それでもよかったよ。おめでとう」


 みんなから祝福の言葉を貰う。


 どうやら、いつまでも結論を先延ばしにして来た俺に皆が協力して告白させたみたいだ。


「ケイスケさん、それはそうとボルタ王女のことはどうするんですか?妻として、もう一人妻がいることは、あまりいい気はしないんですけどね」


 そうだ・・・そっちも結論を先延ばしにしていた。


「そ、それは近いうちに何とか・・・」


 その場凌ぎで、言ってしまった。

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