75 王都奪還作戦 2
次々と報告されてくる情報を精査していく。
グレーテルお嬢様が言う。
「ブロンベルク侯爵は、王都と王都の民を人質に交渉を考えているようですね。いくら戦力を結集したからといって、シェーンブルグ王国全土を手中に収めることはできないでしょう」
国王陛下が言う。
「王都を占拠しながら賛同者を募るのだろう。その間に帝国の領土欲を刺激することも考えているのだろうな」
王太子殿下が言う。
「打って出てきてくれれば、こっちとしてはやりやすいのだが・・・」
「それはないと思います。誰もケイスケと白兵戦など、したくはありませんからね」
これにはカヨさんとショウタ君も同意する。
敵の戦術は、それなりに理に適ったものだ。
白兵戦なら相手が何人いようが関係ない。一瞬で終わりだ。たが、王都に引きこもられると、こちらとしてはやりづらい。王都を更地にするわけにもいかないからな。
国王陛下が軍議を閉める。
「ひとまずは、相手に対抗できる戦力を集める。そして、引き続き情報収集を徹底せよ」
★★★
それから2週間が経過した。
未だ、大きな戦闘には発展していない。王都の状況だが、ブロンベルク侯爵は意外にも圧政を敷いていない。それにある程度、出入りも自由だ。ブロンベルク侯爵の主張としては、「王都でテロ活動を行い国王陛下を暗殺した首謀者を討ち取ったのが自分で、暫定的に王都を統治する権利と義務がある」というものだ。そもそもが自作自演なのだが、それでも詳しい状況が分からない市民たちの一定数はこの話を信じているようだった。
ショウタ君が言う。
「それなら、堂々と国王陛下が王都に帰還すればいいんじゃないの?」
グレーテルお嬢様が答える。
「そうすると、ブロンベルク侯爵はこう言うでしょう。『王都の民を見捨て、自分だけ逃げた臆病な王だ』とね」
「そんな・・・自分たちがやっておいて・・・」
「それが政治というものですよ」
ある程度、王都への出入りは自由なのだが、王都に残る市民も多い。
帝国や教会の関係者の支援を受けているようで、物資も豊富にあるようだ。
「腹が立つ話ですが、ブロンベルク侯爵の働きを称え、国王陛下が労をねぎらうという案も出ているのです」
それはあんまりだ。
それにそんなことをすれば、ブロンベルク侯爵に頭が上がらなくなるし、つけ上がるに違いない。
「グレーテルお嬢様、流石にそれは・・・」
「分かっていますよ、ケイスケ。そんなことは絶対にあってはなりません」
「どうしてもというのなら、ブロンベルク侯爵がいる王城だけ更地にすることも可能ですよ」
「王城には、多くの罪なき従者や使用人たちが今も暮らしています。彼らを犠牲にすることはできません」
カヨさんが言う。
「私たちが少数で乗り込み、敵の拠点や軍事施設のみを強襲するのはどうでしょうか?」
「その案も出ました。ただ、それでも戦闘に巻き込まれた多くの市民が犠牲になるでしょう」
八方塞がりだ。
このまま時間が経てば経つほど、ブロンベルク侯爵に有利に働く。
かといって、無理やり王都を奪還しようとすると、多くの市民に被害が出る。
ショウタ君が言う。
「何か相手だけ、隔離する方法があればいいんだけどな・・・魔法で、壁を作るとか・・・」
「そういった魔法はあります。しかし、相手にも少なからず魔導士はいるでしょう。すぐに解除されると思いますね」「いい案だと、思ったんだけどなあ・・・」
相手を隔離するか・・・
あれ?俺ってできるかもしれない。
「あのう・・・もしかしたら、できるかもしれません。やり方は・・・」
「全く・・・ケイスケには、驚かされます」
カヨさんも続く。
「本当にそう思います。こんなこと、相手も想定外でしょうしね・・・」
「すぐに国王陛下と王太子殿下に進言いたしましょう。ケイスケ、私と一緒に来てください」
俺は、グレーテルお嬢様とともに国王陛下の元へ向かった。
「なんだと!?そんなこともできるのか・・・」
「陛下、ケイスケですからね」
「そうか・・・ケイスケなら、仕方がないか・・・」
なんか、ヤバい人扱いだな・・・
この作戦は正式に承認されることになった。
そして、俺たちは王都に向かうのだった。
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