72 事件の真相 2
ハーフエルフの集落に着いた。
領都に比べれば、建物の質は良さそうだ。ホルスト伯爵が説明してくれる。
「ここに居住するハーフエルフが、ポーションの製造に協力してくれているのです。そのポーションが、我が領の生命線です」
グレーテルお嬢様が言う。
「おかしいですね・・・ホルスト伯爵領産のポーションは、あまり出回っていないと思いますがね?」
ショウタ君も続く。
「そうだね。冒険者ギルドも、ホルスト伯爵領産のポーションを仕入れた覚えはないな・・・」
ホルスト伯爵は、大汗をかいている。
自分の失言に気づいたのだろう。必死で取り繕おうとする。
「そ、そうなんですね。私どもは、卸業者に販売しているだけですから、その後の流通はなんとも・・・」
多分、何かを隠しているのだろう。
そんな話をしながら、半ば強引にハーフエルフが多数働いているポーション工場にやって来た。止めに入るホルスト伯爵を振り切り、工場内に入る。
工場内では、ハーフエルフたちが、忙しく作業をしていた。
「もう無理だ!!3日後にポーション100個なんて、死ねって言っているもんだろ!!」
「そうだ。それに魔力回復ポーション300個も手付かずだ。ポーション100個が終っても、休めそうにない」
「辛い・・・辛すぎる」
前世で勤務していた会社の繁忙期を思い出した。
ブラック企業だったとは言わないが、それでも繁忙期は地獄だった。まあ、それが終れば、多少は楽になったけど・・・
カヨさんが言う。
「ちょっと、懐かしい感じがしますね。もう戻りたくはないですけど」
カヨさんも俺と似たような環境だったのだろう。
そんなハーフエルフの元に少し小柄なハーフエルフの女性がやって来た。この女性がナルルースとのことだった。
「みんな!!頑張るッス!!祖国の危機なんスよ。私は祖国に行ったことはないッスけど、それでも我が同胞が辛い思いをしているッス。ここで弱音を吐いたら駄目ッス!!」
いきなり犯人登場とは・・・
ナルルースの檄も、ハーフエルフたちには届かない。
「ナルルース工場長、もう私たちは無理です。この地獄はいつまで続くんですか?もう体力も魔力もみんな限界です」
「碌に食事も取れないし、3時間睡眠でどうしろと言うんですか?」
「何を甘えたことを言っているんスか!!私の師匠なんて、3日に1回固形物を食べれたら、それで十分と言っていたんスよ。それに修行時代は、毎日30分睡眠だったッス。それに比べたら、ここは天国ッス。この間にも多くの同胞が傷つき倒れているんスよ」
師匠って・・・
一同がエスタエーデル様を見つめる。
異世界のブラック企業もえげつないと思ってしまった。
その社長がここにいるんだけどな。
「さあ、みんな早く仕事に戻るッス。私の師匠だったら、そんな泣き言を言った時点で、窓から放りだされるッス!!」
「ナルルース工場長の師匠って誰なんだろう?」
「きっと、イカれた人だね」
「そうに違いない」
その時、エスタエーデル様が叫んだ。
「馬鹿弟子が!!何をしておる!?」
「あ、あれ?師匠?いやあ・・・元気にしていたッスか?今、私は師匠のことを尊敬していると、みんなの前で演説していたッス!!」
ナルルースは、エスタエーデル様に激しく殴られていた。
「とりあえず、この状況を説明せよ。一体何で、そんなにポーションを作っているのじゃ」
「師匠、それはエルフの里が、悪い国に攻められ、大変な状況なので、そのためにポーションを作っているッス」
「また、騙されていたのか・・・」
「嘘じゃないッス!!」
そこにエルノールが間に入る。
「私はエルフの里の族長だ。里が攻められたことはないし、みんな平和に暮らしているよ」
「そ、そんな・・・じゃあ、私は何のために?」
「だから、騙されたと言っておろうが!!」
王太子殿下が、ホルスト伯爵を問い詰める。
「これはどういうことだ!?まるで彼らは奴隷ではないか!?」
「い、いえ・・・決してそのようなことは・・・」
「もういい!!納品書を見せてみろ」
ホルスト伯爵は、諦めたように納品書を差し出した。
「これは・・・」
「酷いですね」
「ほう・・・戦争でもする気なのか?」
俺も確認させてもらったが、素人の俺でも分かるレベルだった。
ポーションや魔力回復ポーションだけでなく、魔石爆弾のような兵器も大量に作られていた。
そして、その納品先というのが・・・
王太子殿下が言う。
「ブロンベルク侯爵領・・・すべてが、つながったな」
ホルスト伯爵は、その場で拘束された。
すぐに取調べが始まった。
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