71 事件の真相
事件の真相を究明するため、最初に行ったのは、詳しい被害状況の聴取だ。
グレーテルお嬢様が話し始める。
「夜会があったのは、王都のホルスト伯爵家の別邸でした。ホルスト伯爵家は、私に度々ちょっかいを掛けて来たコローナ・ブロンベルク侯爵令嬢の派閥と私の派閥で引き抜き合戦をしていたのです。私の派閥に入ってくれるように説得目的で夜会に参加したのですが、その時に・・・」
王太子殿下が言う。
「ホルスト伯爵家は、既にブロンベルク侯爵家に取り込まれていたのだろうな。グレーテルが幼女の姿になってすぐ、ブロンベルク侯爵家の派閥に正式に入ったし、支援も受けている。もちろん、こちらで捜査はしたが、決定的な証拠は出て来なかった」
ショウタ君が意見を言う。
「でも、今は犯人がハーフエルフって分かってるわけだから、そのことを中心に捜査をすれば・・・」
「ショウタ殿の言うとおりだ。ホルスト伯爵領には、ハーフエルフの集落がある。そこを重点的に捜査すれば、犯人が見つかるかもしれんな」
エスタエーデル様の弟子であるナルルースが、エスタエーデル様の元を離れた理由が、故郷の危機を救うためだった。それから考えて、そこにナルルースがいる可能性が高い。
グレーテルお嬢様が言う。
「ただ、捜査のやり方が問題ですね。いきなりハーフエルフの集落を強襲しては、シェーンブルグ王国が他種族を排斥しているという誹りを受ける可能性もあります。私としては、なるべく穏便にしてもらいたいと思います」
国王陛下も続く。
「折角、エルフたちと良好な関係が築けているのだ。それを壊したくはない。かといって、件のハーフエルフを指名手配するわけにもいかんしな・・・」
一同が押し黙る。
ナルルースがいそうな場所は分かるが、その拘束する方法が思いつかない。
しばらくそんな状態が続いたところで、グレーテルお嬢様が話し始めた。
「私に考えがございます。こういうのは、どうでしょうか?」
★★★
俺は、グレーテルお嬢様と王太子殿下、エスタエーデル様、カヨさんとショウタ君、エルフの族長であるエルノールさんとサチコさんと共にホルスト伯爵領を訪れている。表向きは、グレーテルお嬢様が自分の派閥にホルスト伯爵を引き入れるための訪問ということにしている。実際、ホルスト伯爵領以外にいくつかの領を言い訳で訪問している。
ホルスト伯爵領は、伯爵領だが困窮している。
ブロンベルク侯爵の援助がなければ、やっていけない状態なのだ。そこを突け込まれたというのが、大方の予想だ。
一応、ブロンベルク侯爵領と縁を切ってもやっていけるだけの、交渉材料も用意している。それがエルノールさんたちだ。
ホルスト伯爵領の領都は領都とは思えない程、荒れていた。
大した産業もなく、おまけに街道はブロンベルク侯爵に押さえられているため、交易もままならない。
ホルスト伯爵と面会したが、かなりやつれている。
「お久しぶりでございます。王太子殿下、グレーテル様。話は聞いております」
「できれば、私の派閥に入ってもらいたくて、伺いました。ブロンベルク侯爵につくよりも、私についたほうが良いと思いますよ。次期王太子妃の私にね」
わざわざ、王太子妃を強調したのも、ホルスト伯爵をこちらに引き込む為だ。調査によると、ホルスト伯爵は、ブロンベルク侯爵を心から慕っているわけではない。条件次第で、こちらについてくれるはずだ。
ここで、グレーテルお嬢様がカードを切る。
「実は、ホルスト伯爵に紹介したい方がいましてね」
エルノールさんが歩み出る。
「お初にお目にかかります、エルフの族長のエルノールです。ホルスト伯爵は、ハーフエルフを保護してくれていると伺いました。シェーンブルグ王国と国交が開かれましたので、ご挨拶に来たのです」
「ご丁寧にどうも。保護というか、彼らのお蔭で我が領は生き長らえているのです。彼らには、感謝してもしきれません。また、彼らには、かなり負担を強いていますが・・・」
「いえいえ、居住区を用意してくれるだけでも、有難いものです。帝国なんかは、ついこの前まで、奴隷として扱っていましたからね。是非、居住区に案内してもらいたいものです」
ホルスト伯爵の表情が曇る。
「決して、お見せできるようなものでは・・・」
王太子殿下が言う。
「いきなりのことで、悪いが外交問題に発展しても困る。とにかく案内してくれ。これは命令だ」
多少、強引な手を使ったが、無事にハーフエルフの集落には行けることになった。
道中にカヨさんが言う。
「きっと、何かを隠していますね?」
「そう思います」
やっぱり、厄介ごとに巻き込まれるんだろうな・・・
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