63 ハイエルフの姫
その日、驚きの人物が領主館を訪ねてきた。
エルフの少女だったのだが、見覚えがないし、勇者の町に住んでいるエルフに確認しても、知らない子だという。
それになんか偉そうだ。
「お主がこの町の代表者か?」
「一応、議長だよ。シェーンブルグ王国では領主だけど、ちょっと町の統治体制が複雑でね」
「そうか。だったらなぜ、火山や氷山、砂漠に進まないのじゃ?」
「それはね。人が住める環境にないからだよ」
「住む、住まないの問題ではない!!困難に立ち向かうことこそが、人生なのじゃ!!特に短命種の寿命は短い。命の炎を燃やし、未開の大地へ踏み出すのじゃ!!」
何か、怒らせるようなことを言ったのだろうか?
それに言っていることが意味不明だ。
一緒に応対してくれたカヨさんも困惑している。
追い返そうと思ったが、偉い人の娘とかだったら、厄介だ。グレーテルお嬢様のパターンもあるしな。
「えっと・・・お嬢さんは、お父さんとかお母さんとかはいるのかな?もしかして、冒険者になりたいの?」
「貴様は、妾が誰か知らんのか!!それに子供扱いをするでない。こう見えて、3000年は生きておるのじゃ」
また怒らせてしまった。
エルフは長命種だが、3000年は生きられない。一体どういうことだろうか?
カヨさんが言う。
「もしかしたら、家出かも?族長のエルノールさんに確認してもらったらどうでしょうか?」
またまた、エルフの少女が怒り出した。
「妾は家出などしておらん!!」
「ご、ごめんね・・・お菓子でも食べる?この町の食べ物は美味しいのよ。お姉ちゃんと一緒にどう?」
「どうしてもというのなら、食べてやらんこともない」
カヨさんがエルフの少女を連れ出した。
俺は、通信の魔道具を使って、エルノールさんと連絡を取った。
「・・・そういう状況なんです。迷子か家出かも?と思いまして・・・」
「ちょっと待ってください!!お名前は確認しましたか?」
「いえ・・・まだです」
「もしかしたら・・・私もすぐにそちらに向かいます」
エルノールさんから、説明を聞いて、びっくりした。
そんな伝説の存在が、なぜここに?
すぐにカヨさんとエルフの少女の所へ向かった。
二人は、打ち解けているようだった。
「ほう・・・世界樹があるのか?」
「そうよ。エルフたちが頑張って育てているのよ」
「では、そちらも見せてもらおうかのう」
カヨさんが、俺に許可を求めてくる。
「見てもらいましょう。問題ありませんよ」
世界樹の場所に行くとエルフがいつもどおり作業をしていた。
エルフの少女が声を掛ける。
「うむ。皆の者、しっかりと世話をするがよい。一日一日の積み重ねが、大事なのじゃ」
偉そうな少女の態度にエルフたちも困惑している。
「ところで、お嬢さんのお名前を教えてくれるかな?」
「仕方がないのう。聞いて驚くな。妾はエスタエーデルじゃ」
エスタエーデル!!
その名は、エルノールさんから聞いた伝説のハイエルフの姫の名前だった。
以前にエルノールさんは、「グレーテルお嬢様の呪いを解けるのは、ハイエルフの姫くらいしかいない」と言っていた。
となると、この少女をグレーテルお嬢様がここにやって来るまで、留め置く必要がある。それにご機嫌も取らないとな。
「お嬢様、今までの非礼お詫びします。この後は神獣様をご覧になられてはいかがでしょうか?」
「お主は、妾の名を知っておったか・・・有名人はつらいのう・・・まあよい。神獣とやらを見てやろう」
俺の態度が180度変わったことで、カヨさんが不審に思って質問してくる。
こっそりと事情を説明する。
「だったら、町を上げて歓迎しないといけませんね」
★★★
エルフの少女がブラックシープと戯れている間に、俺はグレーテルお嬢様に連絡を取った。
「なんじゃと!?すぐにそちらに参る。絶対に逃がすなよ」
「はい。何とか努力してみます」
俺がエルフの少女の所に戻ると、エルフの少女は遊び疲れたようだった。
「妾は満足じゃ。そういえば、腹が減ったのう・・・」
「もちろん、お食事も用意していますよ。高級店ではありませんが、味は保証します」
エルフの少女を案内したのは、パメラさんの店だった。
ショウタ君を通じて、話は通しているので、いつもよりも豪華な料理がならんだ。エルフの少女は美味しそうに食べている。
「久しぶりに人族の料理を食べたが、味が進化しておるな」
「ありがとうございます。1日では、食べきれませんので、しばらく滞在してはどうでしょうか?」
「そうじゃのう・・・まあ、少しなら滞在してもよいじゃろう。こう見えても妾は忙しいからのう」
何とか、しばらく滞在してくれることで話はついた。
次の日も同じように町の観光案内をした。
担当はカヨさんで、飽きさせない用に工夫している。明日はボルタ王女に頼んで、遠乗りを楽しんでもらう予定だ。
とにかく早く、グレーテルお嬢様やエルノールさんが来てくれたらいいんだけどな・・・
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