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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第二章 領主編

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60 降臨祭

 俺は今、降臨祭の準備に追われている。

 まずは、馬鹿女神の要望をどうするかという話になった。要望というか、クレーマーに近い内容だが、真面目なマリアさんはすべて実現しようとする。


「デザインを一からやり直すとなると、莫大な経費が・・・それに・・・」


 もう既にブランドとして定着しつつあるのに、今更ロゴなんかを変えたら大変なことになる。


「私はデザインを変える必要はないと思います。降臨祭で、私たちの商品が如何に素晴らしく、愛されているかを知ってもらい、このままのデザインで販売し続けることを認めてもらいましょう」

「そうですね・・・頑張って、納得いただけるようにしましょう」


 何とか、マリアさんの説得には成功した。



 ★★★


 式典のプログラムなどは、前回の植樹祭の経験があるので、カヨさんもスタッフもテキパキと動いてくれる。ただ、問題はそこではないのだ。


 今もグレーテルお嬢様とアイーシャ皇女、レンブラント辺境伯で会議を重ねている。


「今回の警備は大変じゃぞ。国家元首クラスが勢揃いする。特に気をつけねばならんのが、ティーラム帝国とフラレンス王国との関係じゃ。常に張り合っておるからのう」


 レンブラント辺境伯が言う。


「難しいところですね。ここだけの話、帝国はフラレンス王国にコンプレックスがありますからね。明らかに芸術や文化では負けていますから・・・」


「フラレンス王国も帝国には引け目を感じておる。軍事的には、帝国が上だと、十分に理解しているからな。そのお陰で、何かにつけて張り合うのじゃ・・・」


 アイーシャ皇女も続く。


「帝国内の皇位継承問題にも利用されるでしょうね。サルマンお兄様もそうですが、皇帝の座を諦めていない者も多くいますからね・・・」


 グレーテルお嬢様がまとめる。


「問題はこちらがどう対応するかじゃ。ある一定の国だけを優遇すれば、問題は起きる。特に宿泊場所については揉めるぞ。各国ごとに宿泊所を建てるとなると、莫大な費用が掛かる。しかし、その後利用価値がなくなってしまえば、大きな負債を抱えるだけになるしのう・・・」


 俺はあることを思い付いた。


「だったら、来賓の方全員を同じ宿泊施設に泊まってもらえば、いいのではありませんか?」


 この方式は、前にいた世界のサミットでよく使われる手法だ。

 各国首脳を同じホテルに宿泊させることで、警備がしやすくなるし、また、宿泊する各国首脳も、会議などがやり易くなるメリットがある。


「なるほど・・・ということは、宿泊所は一箇所だけ、豪華に作ればよいのじゃな?」

「そうなりますね」

「その案を採用しよう」


 こうして、勇者の町の威信を懸けたホテルを建設することになった。


 まあ、俺が基礎工事をするんだけどな。



 ★★★


 受け入れ準備はどんどんと進む。

 降臨祭の一番の目的は、馬鹿女神の口から多種族共存と差別の禁止する旨を言わせることにある。


 ただ、それだけではない人たちもいる。

 馬鹿女神との事前の打ち合わせで、エリスブランドの正式な認定式もすることになっていた。現在、この町の教会が認定している商品であっても、馬鹿女神が認定しなければ、エリスブランドと名乗ることはできなくなる。

 次に馬鹿女神が降臨するのが、いつになるか分からないことを考えると、この機会になんとか認定を貰いたいというのが、みんなの思いだ。

 なので、商人を中心に商品の改良に余念がない。


 そんな中、俺は他の転移者から相談を受けていた。

 サクラさんが言う。


「どうにかして認定を貰いたいけど、心配なのよね」


 マナミさんも答える。


「好みが分からないから緊張するわね。酒精の強いお酒が好きなのか、軽いお酒が好きなのか分かるだけでも、違うんだけどな」


 俺も会社員時代に大事な接待の前には、緊張して眠れなかったのを思い出した。


 この中で一番心配しているのは、サチコさんだ。


「私はあの馬鹿女神と喧嘩しているからね。それが原因で、認定を取り消されたら、エルフたちに申し訳が立たない。腹が立つけど、どうしてもというのなら、頭を下げるよ」


 会社員時代にもこういったことはよくある。

 極力、誰に対しても敵対行動を取らないことが処世術の一つだからな。


 そんなとき、カヨさんが提案をする。


「すべてセットで認定をもらうのはどうでしょうか?」


 カヨさんの案では、例として、お酒を勧めるのであれば、それに合わせて、おつまみを勧めてセットで認定をもらうというものだ。


「事前の話し合いでは、お酒は気に入っていました。大量に持ち帰ってましたからね。なのでそれを軸におつまみを勧めたり、サクラさんの場合は締めのうどんを勧めたりすればいいのではないかと思います」


 これはいい案だ。


「この案の一番難しいところは、本番で上手く女神を言いくるめることです。その役は・・・」


 みんなが俺を見る。


「分かりました。何とかやってみます。これでも営業成績でトップになったことがありますからね」


 それが何になるのか分からないけど、気休めで言ってみた。

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