57 宗教対立
グレーテルお嬢様が怒鳴る。
「強欲神官どもめ!!本性を現しおったな!!」
グレーテルお嬢様が怒鳴るのも無理はない。
ここ最近、教会の行動は目に余る。商人たちが販売する類似商品には腹が立つけど、それでも商品は商品だ。うどんを例に挙げると、粗悪品ではあるものの、うどんと言われれば、うどんだ。
しかし、教会が販売しているのは、「天国に行けるお札」や「幸運が訪れる女神像」だ。これは効果のほどは定かではないし、ノルマも課されているようで、強引な手段に出る神官も多いらしい。
「何が、『お札を買わなければ、地獄に落ちる』じゃ!!ふざけるのも大概にせい!!」
俺たちが元いた世界でも、歴史を紐解けば、そんなことはあった気がする。
商人は商品やサービスを売る付加価値として利用しているが、教会は天罰を脅しによく分からない物を一般市民に売りつけている。
このまま、エリスグッズの認定権を教会に与えてしまえば、更に被害者は増えることだろう。
マリアさんが申し訳なさそうに言う。
「申し訳ありません。同じ教会の者として、本当に恥ずかしいです」
「貴殿が謝る必要はない。問題は、今後どうするかじゃな。最悪は、今の教会と決別することも考えたほうがよい」
それはそう思う。
だが、大きな波乱が起きそうな気もする。
「教会から独立しても十分にやって行けると思います。ですが、教会の力は絶大です。様々な嫌がらせをしてくることは、目に見えています」
とりあえずの現状分析を行う。
「まず脱退した場合ですが、ここにいる信者も離れることになるのでしょうか?」
「獣人や亜人たちは、そんなことはありません。しかし、人間の信者となると、どうなるかは分かりません」
グレーテルお嬢様が言う。
「帝国人以外は、離れはせんじゃろう。どの国も多かれ少なかれ、帝国に悪感情を持っているからのう。逆にこちらの教会を支援してくれると思う。じゃが、それは新たな戦争の火種になるやもしれん」
このまま、教会の言いなりになっても地獄、独立しても危険な状態になるのか・・・
「こっそりと、レンブラント辺境伯にでも相談してみるかのう」
★★★
それから一週間後、レンブラント辺境伯がやって来た。
グレーテルお嬢様が要点を説明すると、レンブラント辺境伯が悪い顔で言った。
「それならば、いっそのこと独立してもいいかもしれませんね。策もあります」
その策というのが、アイーシャ皇女をこちらの教会の教皇にするというのだ。
「今、アイーシャ皇女は帝国で大人気です。数々の功績もそうですが、ワイバーンに乗れるというのも大きいですね。実は帝国の中央でも、現教会のやり方に不満を持っている者は多いのですよ。皇帝陛下を筆頭にね」
レンブラント辺境伯が言うには、教会の権力が大きくなりすぎ、最近では、皇帝にまで、意見をするようになっているようだ。
「この話を持って行けば、独立自体は承認してくれるでしょう。皇族のアイーシャ皇女が教皇になるわけですから、皇帝陛下は権力が増すと思われるでしょう。ただ、懸案事項としては、こちらの教会の運営が失敗した場合は、アイーシャ皇女は間違いなく切られるでしょうね・・・」
「つまり、どちらに転んでもいいように、両天秤に掛けるということじゃな?」
「そのとおりです。ですが、失敗しなければいい話ですからね」
グレーテルお嬢様が考え込む。
「何か決定的なものが、あればよいのじゃが・・・」
マリアさんが言う。
「やはり、創造神エリス様を降臨させるしかありませんね・・・」
結局、そこに行き着く。
馬鹿女神さえ呼べれば、後は交渉次第でなんとでもなる。マリアさんが言うには、まだまだ信仰心が足りないようだ。
あまり、向こうの教会と対立せずに信仰心を集める方法はないだろうか?
いくつか思いつくが、どれも決定打にはならない。
そんなとき、グレーテルお嬢様に話を振られた。
「ケイスケよ。何か策はないのか?」
「どれも決定打にはなりませんが、いくつかあります」
俺はみんなに説明する。
一番は自分たちのブランド力を高めることだ。ライセンス制も相まって、粗悪品はその内、淘汰されるだろう。一度は偽物の商品を買うかもしれないが、品質が悪ければ、二度目はない。
そして、自分たちのブランド力が高まれば、こちらの意見も通りやすくなる。その時に偽物が多く出回っている旨を丁寧に伝える。
「教会とは名指しせず、「神の名を騙る、怪しい商品は買わないように」と暗に批判するに留めましょう。その内、偽物の偽物も登場するでしょうしね」
真偽不明の「天国に行けるお札」の偽物が出回れば、教会の商売も立ち行かなくなるだろう。そもそもが効果を確かめようのない商品だから、教会も困るだろうな。
「では、ブランド力を高めながら、アイーシャ皇女を教皇として、いつ独立してもいいように、準備をするのじゃ」
またまた、アイーシャ皇女が被害者になってしまった。
教皇になる準備段階として、アイーシャ皇女が、この町の教会の教会長に就任したのだ。アイーシャ皇女が教会長になれば、教会も大ぴらに手出しはできないからな。
アイーシャ皇女は困惑していたが、護衛のバスラさんは大喜びだった。
就任式では、涙を流していた。
「本当に立派になられて・・・」
今回行ったことは、当面の措置でしかない。
教会が本格的に動き出す前に何とか、女神を降臨させないとな・・・
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