54 植樹祭 3
一同を大聖堂に案内した。皆、相当驚いていた。
何たって、ドワーフがプライドに懸けて造ったからな。
サルマン皇子も教皇も驚きの声を上げている。
「こ、これは・・・帝都の大聖堂と匹敵するレベルだ」
「そ、そうですが・・・中を見るまではなんとも・・・外観だけは、こだわっているようですが・・・」
教皇は何とか文句をつけようと、粗探しをしている。
一同を大聖堂の中に案内する。
内装もこだわっているが、帝都の大聖堂ほど、豪華には造っていない。
教皇がこれ見よがしに言う。
「外観は立派ですが、中身は空っぽ。まさにハリボテですな」
だらしなく太り、金ピカの衣装を身に纏っているお前が言うな!!
それを聞いたアイーシャ皇女がフォローを入れる。
「帝都ほど、煌びやかではありませんが、内装や装飾品にはこだわっているのですよ」
アイーシャ皇女が、飾られている絵画と彫刻を紹介する。
サルマン皇子が驚きの声を上げる。
「こ、これは・・・ラスピスの絵画・・・こっちは、ダビダリオスの彫刻・・・どちらも新作だ」
フラレンス王国のステラ王女が説明を引き継ぐ。
「どちらも、フラレンス王国が寄贈した物です。我が王都は、世界一の芸術の都ですからね。サルマン皇子も是非お越しください」
サルマン皇子は露骨に嫌そうな顔をしている。
マウントを取るどころか、逆に芸術関係でマウントを取られたからだ。
更にステラ王女の口撃は続く。
「晩餐会の料理も楽しみにしてください。フラレンス王国の一流シェフを連れてきておりますし、シェーンブルグ王国の一流料理人と共に創作料理をお出ししますからね」
そして、最後は晩餐会だが、野外でのビュッフェスタイルにした。
帝国では珍しいようで、サルマン皇子なんかは、露骨に嫌そうな顔をしていた。
「これでは、平民も貴族も関係がなくなってしまう・・・全く何を考えているのやら・・・」
そう言うのが精一杯だったようで、一心不乱に料理を食べ続けていた。
ワイバーンのステーキをかなり気に入ったようで、帰りに何匹か討伐して帰ることを指示していたが、護衛の騎士隊長に止められていた。
晩餐会とくれば余興だ。
弟子であるアイーシャ皇女とリネール公子、カヨさんがそれぞれ芸を披露した後に真打の俺が登場する。スプーン曲げについては、俺が彼らの師匠なのだ。
「それでは、新技を披露しますね。スプーンの空中浮遊です」
スキルでスプーンを出現させ、それを空中に浮かせる。
初めて見る技に会場は大盛り上がりだ。まあ、これも土木工事で、特大のスプーンで資材搬送をしているから、大したことはないんだけどな。
サルマン皇子と教皇は、ひそひそと内緒話をしていた。
何に文句をつけようかと相談しているようだ。
文句をつけられるものなら、やってみろ!!
結果的にこの日は何もしてこなかった。
★★★
そして、今日はいよいよ植樹祭本番だ。
本番前、サルマン皇子がアイーシャ皇女に文句をつけていた。
「この町は確かに発展をしている。しかし、我が帝国の威信を示せていない。皇族失格だな。すべて、他国の手柄ではないか」
アイーシャ皇女は上手く受け流しているが、護衛のバスラさんは反論してしまった。
「サルマン皇子、お言葉ですが、アイーシャ皇女は、この町の発展に尽力され・・・」
「うるさい!!護衛ごときが、口を挟むな!!」
流石に仲裁に入る。
「サルマン皇子、落ち着いてください」
「貴殿も大変であろう。こんなお飾りの小娘のお守りをさせられてはな。勇者殿の顔を立てて、この場はこれで治めてやろう」
「ありがとうございます。式典では、サルマン皇子にも重要な役割がありますからね」
「うむ・・・」
俺はバスラさんに注意をする。
「放っておけばいいんですよ。1時間もすれば腰を抜かすことになるんですからね」
本番が始まる。
これは本当に形だけのものだ。大きく育っている世界樹に各国の要人が、肥料の入った土を被せ、水をやるだけだ。それでもグレーテルお嬢様が言うには、各国の代表者が揃ってやることに意味があるのだという。
人間の国ではそうだが、亜人や獣人は違っていた。ドワーフの王と獣王は二日酔いでフラフラだし、エルフの族長エルノールさんは式典直前まで肥料の配合にこだわり抜いていた。
式典が終わったところで、拡声の魔道具からアナウンスが流れる。
「この良き日に特別ゲストに来ていただきました。エスコートはアイーシャ皇女が務められます」
会場が騒然となる。
なぜなら、ブラックワイバーンの親子が登場したからだ。
「あれが噂のブラックワイバーンの親子か・・・」
「あんなのが攻めてきたら、大変なことになるぞ」
「おい!!小さなワイバーンに誰か乗っているぞ」
「ま、まさか・・・」
ネーロちゃんに乗っているのは、アイーシャ皇女だ。
ブラックワイバーンの親子が舞い降りる。ノワールさんが威厳を込めて言う。
「この世界樹は大切な木だ。枯らすことがあれば皆殺しにしてやるぞ」
アイーシャ皇女が言う。
「ノワール様はこう仰っていますが、私たちが仲良く平和に暮らしていれば枯れることはありません。世界樹の専門家であるエルフや精霊様もおられますからね」
サチコさんの話では精霊様も何人か、この地で暮らすことになっているそうだ。
サルマン皇子はというと、驚愕の表情を浮かべている。
これ以上ないくらい、アイーシャ皇女は威信を示したからな。
そんな中、グレーテルお嬢様とレンブラント辺境伯が悪い顔をして話していた。
「分かっておろうな?」
「もちろんです。このパフォーマンスで、多くの貴族がこちらの陣営に加わりました。このお返しは、必ずや・・・」
「レンブラント辺境伯よ。貴殿もなかなかであるな・・・」
「グレーテル様ほどでは、ございませんよ」
植樹祭には、帝国の貴族も大勢参加している。
明確に派閥に入っている者もいるが、多くが態度を決めかねている者たちだ。今回のパフォーマンスで、アイーシャ皇女の派閥に加わる者も多いのだろう。
こうして、無事に植樹祭は、成功のうちに幕を閉じた。
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