53 植樹祭 2
結婚の話は、植樹祭が終ってからということで、カヨさんとボルタ王女には納得してもらった。
というか、ボルタ王女は俺と結婚する気満々だからいいとして、カヨさんはどうなんだろうか?
俺的には、生涯カヨさんと暮らせたら素晴らしいと思うんだけど、こんなおじさんと結婚したいのだろうか?
それでも悶々としながら、業務をこなしていく。
まずは、続々と到着する要人の出迎えだ。ランダス公国からはリネール公子、フラレンス王国からはステラ王女が代表としてやって来た。両名とも以前の外遊で親交を深めたので、好意的だった。それに豪華なお祝いの品まで用意してくれていた。
また、ドワーフの王や獣王もやって来た。こちらもそれぞれ元日本人がいるので、問題はない。こちらはあまり、儀礼など気にしないようで、祝いの品である秘蔵の火酒を勝手に開けて飲んでいる。
ドワーフの王と一緒にやって来たマナミさんが言う。
「こうなることは分かっていたので、ケイスケさんたちの分は、別で用意してますよ。後で元日本人で集まって飲みましょう」
「お気遣い感謝します」
有難いが、俺とカヨさんは忙しくて、参加できないだろうな。まあ、サチコさんとヒロコさんがいるから、盛り上がるだろう。できれば、少しでもお酒を残してもらえたら、有難いけど。
その後も要人が多くやって来た。
問題になったのは、ティーラム帝国からの要人だった。まずはレンブラント辺境伯だ。厚かましく様々な要人に声を掛け、鬱陶しがられていた。それでも、マナミさんと懇意になり、帝国におけるチュウハイとハイボールの販売権を勝ち取ったり、ボルタ王女に取り入ったことは称賛に値するだろう。サラリーマン時代のゴリゴリ営業を掛ける同僚のことを思い出してしまった。
彼はまだマシだった。
問題なのは、二人。一人は第二皇子のサルマンだ。二十歳そこそこではあるが、横柄で、いけ好かない。帝国に対して、変なプライドを持っている。それにアイーシャ皇女に対しては、かなり上から目線で接している。
「掘っ立て小屋を並べただけだな・・・どうしても、俺の力が必要なら、支援してやらんこともない。出来損ないでも、妹は妹だからな」
アイーシャ皇女は涼しい顔でやり過ごしているが、護衛のバスラさんは、今にも斬り掛からんばかりに殺気を放っていた。
「お兄様、心配には及びません。今のままで、十分にやって行けますよ」
サルマン皇子はまだ、次期皇帝の座を諦めておらず、どうにかして勇者の町の利権に食い込もうとしている。今回の訪問も、直前で第三皇子と入れ替わったようだ。それならば、レンブラント辺境伯とまではいかないまでも、もっと態度というものがあるだろうに・・・
そしてもう一人は、エリス教会の教皇だ。
壮年の男で、だらしなく太っており、煌びやかな衣装を身に纏っている。とても聖職者には見えない。
こちらは、反主流派の代表のマリアさんとバチバチだ。丁寧な言葉を使っているが、お互いに罵り合っている。
「亜人や獣人と共存するなど、神の教えに反する行為ですな」
「そんなことはありません。「神を冒涜する者」が悪いのであって、亜人や獣人が悪いのではないのです」
「まだ、そんなことを言っているのですか?もう100年前に出た結論を蒸し返して・・・」
「結論自体が間違っている可能性もありますよ」
「何を言っても変わりません。そう決まっていますのでね」
そんな状態の中、グレーテルお嬢様に言われた。
「分かっていると思うが、ここで問題が起これば、国際問題になる。くれぐれも気をつけるのじゃぞ」
気をつけたところで・・・と思わなくもない。
★★★
要人が全員集結したことで、町の観光案内をすることになった。
こういった各国の代表が集うイベントでは、メインの式典以外にも全員参加のイベントを企画することは必要らしい。
観光案内といっても、見せるところなんて、ほとんどないんだけどな。
最初は領主館だ。
一般の建物よりも立派には造っているが、それでも高位貴族の領主館と比べると見劣りする。なので、展示品でお茶を濁すことにした。展示品といっても討伐した魔物の素材を並べただけだ。
意外なことにこれは、ウケが良かった。
獣王やドワーフの王、ボルタ王女などは絶賛している。
「これがシールドラゴンか・・・この硬さ・・・よく討伐できたものだ」
「うむ、ドワーフも獣人も大活躍だったらしいな。誇らしい」
「婿殿は勇ましい。その場に我がいなかったことが悔やまれる」
サルマン皇子なんかは、マウントが取れないことに苛立っていたけどな。
続いては、聖獣様のお披露目だ。
フェンリルとブラックシープがお出迎えする。これはヒロコさんにお願いをした。町自体が発展途上で、見せるところがあまりないからな。
これにはランダス公国のリネール公子が食いつく。
恐る恐る、聖獣様たちに近付く。
「あのう・・・触ってもいいですか?」
「優しく触ってくれれば、大丈夫ですよ」
これに便乗して、ボルタ王女もモフり始める。
「この感触は素晴らしい。ここに住めば、毎日これができるのか・・・」
ちょっと、怖いことを言っている。
一方、不機嫌な者もいる。
サルマン皇子と教皇だ。
「何が聖獣だ。ただの魔物だろ?」
「そうです。下賤な獣人どもの考えは理解できませんな」
俺とカヨさん以外に聞かれなかったのは、幸いだった。
次は大聖堂だ。
先が思いやられる。
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