52 植樹祭
グレーテルお嬢様がやって来た。
見るからにかなり、やつれている。
「どうされたんですか?かなりお疲れのようですが・・・」
「どうもこうもないわ!!全く想像もつかんことをしておいて・・・まあ、ケイスケに言ったところで仕方がない。それよりも、今度はお主のほうが、大変なことになるぞ」
その意味はすぐに分かった。
世界樹、聖獣、そしてブラックワイバーンの親子の移住とくれば、各国ともこの町を無視できない事態になっている。そこで、大規模な式典を開くことになったのだった。そしてメインイベントは、植樹祭だ。もう世界樹自体はぐんぐん成長しているので、形だけ土を被せる程度だけど・・・
「やることは山のようにあるが、まずは町の名前を決め、代表を決めねばならん」
「町の名前ですか?それは議会で決めようと思いますし、代表ということになれば、アイーシャ皇女ですね」
「そう上手くいくと思うか?」
すぐに臨時の議会を開き、議題を提示した。
アイーシャ皇女が提案する。
「町の名前ですが、「勇者の町」というのはどうでしょうか?ケイスケさんやカヨさんのお蔭で町が発展したこともそうですが、この未開の地に勇気を持って入植した皆が、私は勇者だと思います」
これについては、満場一致で決定した。個人的にもいい名前だと思う。
そして、代表者だが・・・
「代表者について、ケイスケさんを推薦します。功績は説明するまでもありませんよね?」
すぐにこれも採択された。
「ちょ、ちょっと待ってください。私には荷が重すぎます」
グレーテルお嬢様が意地悪な笑みを浮かべて言う。
「諦めよ。それでケイスケじゃが、議長というのはどうじゃ?」
これも決定してしまった。
アイーシャ皇女が言う。
「では、それぞれ受け入れ準備を始めましょう。やることはいっぱいありますからね」
どうやら、事前にアイーシャ皇女と話がついていたようだ。
★★★
勇者の町の代表になってしまった俺だが、やる事が多すぎる。
式典の進行の確認や各国の要人のおもてなしの段取り、一介のサラリーマンだった俺には本当に荷が重い。ここで頼りになるのは、カヨさんだった。なんでも、仕事で3ヶ月程、社長秘書のような業務をしたことがあるらしい。カヨさんがいなかったらと思うとゾッとするレベルだ。
そんな中、厄介な人物が現れた。
忙しく仕事をしていたところ、担当の文官が報告に来た。
「30騎程の武装した騎兵がこちらに進軍しているとの情報が入りました!!すぐに対応を!!」
「分かりました。とりあえず、冒険者ギルドにいる冒険者を集めて、現場に向かいましょう。町に入れたくありませんから、私も出ます。カヨさんも・・・」
「もちろん行きますよ」
すぐに町の入口に向かう。
幸いショウタ君を筆頭にした20名の冒険者を集めることができた。段々と馬が集団で駆けている音が大きくなる。皆に緊張が走る。
向こうの集団も俺たちに気づいたようで、その内の一騎が猛然と向かってくる。
「あ、あれは・・・」
その一騎が大声で叫ぶ。
「婿殿!!盛大な出迎え、非常に感激している!!」
騎馬王国のボルタ王女だ。そういえば、騎馬王国を訪問したとき、婚約に近い約束をしていたんだった。あれから1年経つし、こっちに来てすっかり、そのことを忘れていた。
「ボルタ王女、お久しぶりです・・・」
「精鋭を揃え、出迎えるなど、本当に婿殿は分かっておるな」
「はい?」
後で聞いた話だが、騎馬王国では、相手に対して強さを示すことは最大限のもてなしだそうだ。そんな気は全くなかったんだけどな。
「急遽のことだが、我のために精鋭を集めてくれて、本当に感謝する」
ボルタ王女のお付きの騎士たちも感激しているようだ。
「早速だがカヨ殿、手合わせを願いたい。第一婦人の座を賭けてな」
カヨさんも困惑している。
このクソ忙しいときに・・・
そんな俺の態度を察したショウタ君が助け舟を出してくれた。
「ケイスケさんもカヨさんも忙しいんだ。模擬戦なら俺が相手になってやる」
「誰だ、お前は?」
「俺はショウタ。これでも勇者だぞ」
「ほう・・・だったら、手合わせをしよう」
模擬戦が始まってしまった。
ボルタ王女もかなり訓練をしていたのだろう、以前よりも動きにキレがある。ショウタ君もスキルレベルが上がっているので、互角の戦いをしている。
カヨさんが言う。
「ここはショウタ君に任せて、仕事を片付けましょう。徹夜は嫌ですからね」
「そうしましょう」
俺たちは、 ボルタ王女のお付きの騎士に言って、その場を辞した。
グレーテルお嬢様に事情を説明する。
「以前に訪問したランダス公国、騎馬王国、フラレンス王国にも案内の書状は出しておる。まさか先触れも出さずに、あんな登場をするとは想定外じゃったがな・・・」
流石はボルタ王女だ。
「それでどうするのじゃ?ボルタ王女は、嫁入りのつもりで来たようじゃが?」
「どうしましょう・・・」
あの時のことを思い出すと、曖昧な返事をするしかなかったんだよな・・・
カヨさんにも相談する。
「というか、私との結婚はどうするんですか?」
「そ、それは・・・」
「この世界では、婚約破棄はかなり経歴に傷がつくと言われています。特に一緒に暮らしていたとなると、誰もお嫁にもらってくれないみたいですよ」
「申し訳ありません・・・」
一体俺は、どうすればいいのだろうか?
ずっと独身だった俺には、荷が重い・・・
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