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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第二章 領主編

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50 移植

 その日もう一度、周囲の木を伐採したが、次の日には元通りになっていた。エルフたちも頭を悩ませる。

 カールさんが言う。


「ダンジョンではよくあることだが、ここはダンジョンじゃないし・・・」

「考えても分からないですよね?だったら、木が復元するという前提で、対策を練りませんか?」


 エルノールさんが渋い顔で言う。


「周囲に木がある状態で、育つことは無理ですね。遅かれ早かれ、枯れてしまう」


 俺は、少し考えて言った。


「それでは、木が育てられそうな場所に植え替えるというのはどうでしょうか?エルフの国が理想ですが、難しいようでしたら、草原地帯に・・・」

「理論上は可能です。ただ、根っこから土ごと持って行かなければなりませんからね。一流の土魔導士でも難しいと思います」


 だったら、なんとかなりそうだ。


「私に任せてください。考えがあります」


 俺は、「魔道女子会」のセーラさんに指示をした。


「領主様ならできるだろうね。じゃあ、やるよ」


 そう言うとセーラさんは土魔法を展開して、周囲の土をえぐり始めた。しばらくして、十分に持ち運べる状態までになった。


「よし、これなら大丈夫です。出でよ!!スプーン」


 俺は、世界樹を土ごとスプーンですくいあげた。

 エルフたちやサチコさんは驚きの声を上げる。


「こんなことができるのですか!?」

「しばらく見ない間に、大変な能力を身に付けてるね・・・」


 俺は皆に指示をする。


「とりあえず、帰還しましょう。また、厄介な魔物が出て来ても困りますしね」


 途中、ワイバーンが数体襲ってきたが、全てサチコさんが高枝切りバサミで叩き落として、撃退していた。



 ★★★


 順調に帰還できると思っていたが、そんなに甘くなかった。

 突然、普通のワイバーンよりも巨大で、真っ黒なワイバーンが姿を現した。カールさんが叫ぶ。


「ブラックワイバーンだ!!ワイバーンの上位種で、未だかつて、討伐されたことはない。アースドラゴンの比じゃないぞ」


 アースドラゴンよりも強いのか・・・

 あれ?でも、アースドラゴンもそこまで強くなかったような・・・

 いや、強かったよな?最近感覚がバグってきた。


 俺たちは一斉に戦闘体制を取った。

 頭の中でシュミレーションを行う。一番は、あのブラックワイバーンを叩き落とせるかどうかだ。地上に落としさえすれば、何とかなる。カヨさんもショウタ君もいるし、最悪、素材採取を考えなければ、俺がミンチにしてもいい。


 そんなことを思っていたら、驚いたことに、ワイバーンが語り掛けてきた。


「人間ども!!大切な木を盗みおって、許さんぞ。その木を置いていくのなら、命だけは、助けてやろう。木を置いて、即刻立ち去れ!!」


 一同が驚愕する。

 カヨさんも驚きの声を上げる。


「ワイバーンが喋ってますよ!?」


 ブラックワイバーンが反応する。


「我程、高度な存在になれば、人語など容易く操れるのだ。そんなことはいいから、即刻立ち去れ」


 そう言われてもなあ・・・


 周囲の視線が、俺に集まる。

 まあ、この部隊の代表は領主の俺になるから、決断を下さないといけない。迷った俺は、とりあえず交渉をすることにした。


「この木をこのままにしておけば、近いうちに枯れてしまいます。私たちは、この木を救いに来たのです」

「木が枯れるだと!?本当か、それは?」

「嘘ではありません。この近くの草原に植え替える予定です」


 しばらくして、ブラックワイバーンが言った。


「我の事情を少し話そう。その木から採れる葉や実が、我が娘には必要なのだ。定期的に葉や実を納めるのならば、その木を持ち出すことを許可してやらんでもない。ただし、嘘をついていた場合や木を枯らしてしまったときは、容赦なく貴様たちを皆殺しにする」


 俺は、エルノールさんと少し相談をした。

 エルノールさんが言うには、草原であれば、まず枯れることはないという。それと、世界樹の葉や実が必要ということは、目の前のブラックワイバーンの娘は、かなり病状が悪化しているのではないかとのことだった。


 だったら、交渉の余地はある。


「よろしければ、娘さんの病状をお話ください。力になれるかもしれません。ここに世界樹から抽出したポーションがあります。人間には絶大な効果をもたらすポーションです。一度お試しになってみてはどうでしょうか?」

「とりあえず、試しに使ってみよう。それまでは、ここで待っていろ」


 そう言うと、ブラックワイバーンはエルノールさんからポーションを貰い、飛び去ってしまった。


「ポーションの効き次第ですが、ポーションが効くようなら、何とでもやりようがありますね」

「多分大丈夫だと思いますよ。渡したポーションも何かに特化した効能ではなく、全体的に体調が良くなる類の物ですからね」


 カヨさんが言う。


「効かなかったときのことも考えないといけませんね」

「そうですね。一応いつでも戦闘ができるようにはしておきましょう」


 1時間位して、再びブラックワイバーンが戻って来た。


「いいポーションだった。礼を言う。今までにないくらい娘の体調が良くなった。約束は守る。貴様らの町まで、露払いをしてやろう」


 それから、ブラックワイバーンを先頭にして、行軍を再開した。当然、ワイバーンなんかはブラックワイバーンに恐れをなして、襲って来ない。


 町に帰還した。

 多くの住民が驚きで気絶したとだけ、言っておこう。

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