50 移植
その日もう一度、周囲の木を伐採したが、次の日には元通りになっていた。エルフたちも頭を悩ませる。
カールさんが言う。
「ダンジョンではよくあることだが、ここはダンジョンじゃないし・・・」
「考えても分からないですよね?だったら、木が復元するという前提で、対策を練りませんか?」
エルノールさんが渋い顔で言う。
「周囲に木がある状態で、育つことは無理ですね。遅かれ早かれ、枯れてしまう」
俺は、少し考えて言った。
「それでは、木が育てられそうな場所に植え替えるというのはどうでしょうか?エルフの国が理想ですが、難しいようでしたら、草原地帯に・・・」
「理論上は可能です。ただ、根っこから土ごと持って行かなければなりませんからね。一流の土魔導士でも難しいと思います」
だったら、なんとかなりそうだ。
「私に任せてください。考えがあります」
俺は、「魔道女子会」のセーラさんに指示をした。
「領主様ならできるだろうね。じゃあ、やるよ」
そう言うとセーラさんは土魔法を展開して、周囲の土をえぐり始めた。しばらくして、十分に持ち運べる状態までになった。
「よし、これなら大丈夫です。出でよ!!スプーン」
俺は、世界樹を土ごとスプーンですくいあげた。
エルフたちやサチコさんは驚きの声を上げる。
「こんなことができるのですか!?」
「しばらく見ない間に、大変な能力を身に付けてるね・・・」
俺は皆に指示をする。
「とりあえず、帰還しましょう。また、厄介な魔物が出て来ても困りますしね」
途中、ワイバーンが数体襲ってきたが、全てサチコさんが高枝切りバサミで叩き落として、撃退していた。
★★★
順調に帰還できると思っていたが、そんなに甘くなかった。
突然、普通のワイバーンよりも巨大で、真っ黒なワイバーンが姿を現した。カールさんが叫ぶ。
「ブラックワイバーンだ!!ワイバーンの上位種で、未だかつて、討伐されたことはない。アースドラゴンの比じゃないぞ」
アースドラゴンよりも強いのか・・・
あれ?でも、アースドラゴンもそこまで強くなかったような・・・
いや、強かったよな?最近感覚がバグってきた。
俺たちは一斉に戦闘体制を取った。
頭の中でシュミレーションを行う。一番は、あのブラックワイバーンを叩き落とせるかどうかだ。地上に落としさえすれば、何とかなる。カヨさんもショウタ君もいるし、最悪、素材採取を考えなければ、俺がミンチにしてもいい。
そんなことを思っていたら、驚いたことに、ワイバーンが語り掛けてきた。
「人間ども!!大切な木を盗みおって、許さんぞ。その木を置いていくのなら、命だけは、助けてやろう。木を置いて、即刻立ち去れ!!」
一同が驚愕する。
カヨさんも驚きの声を上げる。
「ワイバーンが喋ってますよ!?」
ブラックワイバーンが反応する。
「我程、高度な存在になれば、人語など容易く操れるのだ。そんなことはいいから、即刻立ち去れ」
そう言われてもなあ・・・
周囲の視線が、俺に集まる。
まあ、この部隊の代表は領主の俺になるから、決断を下さないといけない。迷った俺は、とりあえず交渉をすることにした。
「この木をこのままにしておけば、近いうちに枯れてしまいます。私たちは、この木を救いに来たのです」
「木が枯れるだと!?本当か、それは?」
「嘘ではありません。この近くの草原に植え替える予定です」
しばらくして、ブラックワイバーンが言った。
「我の事情を少し話そう。その木から採れる葉や実が、我が娘には必要なのだ。定期的に葉や実を納めるのならば、その木を持ち出すことを許可してやらんでもない。ただし、嘘をついていた場合や木を枯らしてしまったときは、容赦なく貴様たちを皆殺しにする」
俺は、エルノールさんと少し相談をした。
エルノールさんが言うには、草原であれば、まず枯れることはないという。それと、世界樹の葉や実が必要ということは、目の前のブラックワイバーンの娘は、かなり病状が悪化しているのではないかとのことだった。
だったら、交渉の余地はある。
「よろしければ、娘さんの病状をお話ください。力になれるかもしれません。ここに世界樹から抽出したポーションがあります。人間には絶大な効果をもたらすポーションです。一度お試しになってみてはどうでしょうか?」
「とりあえず、試しに使ってみよう。それまでは、ここで待っていろ」
そう言うと、ブラックワイバーンはエルノールさんからポーションを貰い、飛び去ってしまった。
「ポーションの効き次第ですが、ポーションが効くようなら、何とでもやりようがありますね」
「多分大丈夫だと思いますよ。渡したポーションも何かに特化した効能ではなく、全体的に体調が良くなる類の物ですからね」
カヨさんが言う。
「効かなかったときのことも考えないといけませんね」
「そうですね。一応いつでも戦闘ができるようにはしておきましょう」
1時間位して、再びブラックワイバーンが戻って来た。
「いいポーションだった。礼を言う。今までにないくらい娘の体調が良くなった。約束は守る。貴様らの町まで、露払いをしてやろう」
それから、ブラックワイバーンを先頭にして、行軍を再開した。当然、ワイバーンなんかはブラックワイバーンに恐れをなして、襲って来ない。
町に帰還した。
多くの住民が驚きで気絶したとだけ、言っておこう。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




