49 エルフが来ました
予想外の集団が現れた。
族長のエルノールさんと巫女であるサチコさんに率いられたエルフの集団だ。精霊様も数人来ている。
エルノールさんが言う。
「エルフやハーフエルフを保護していただいたお礼にやって来ました」
「いえいえ、当然のことをしたまでです。エルフを含めた亜人奴隷の解放に尽力されたアイーシャ皇女をご紹介いたしますね」
「ありがとうございます」
エルフたちは、アイーシャ皇女とも挨拶を交わしていた。
今のところ、排他的なエルフは見当たらない。歓迎の宴を開くことになったのだが、サチコさんが遮った。
「エルノール、まどろっこしいことはやめて、本題に入ったらどうだい?ケイスケたちは、きっと協力してくれるだろうしさ」
「分かりました・・・かなり危険なお願いになるのですが・・・」
エルフたちがやってきた真の目的は、新たな世界樹の探索の為だ。
サチコさんが引き継ぐ。
「精霊たちが言うには、この近くに新しい世界樹からの助けを求める声が聞こえてきたみたいだ。かなり前から声がしていたらしいけど、この地は未開の危険地帯で、今まで助けに来れずにいたんだ。でも最近、アンタたちが開発を始めただろ?だったら、一度見に行ってみようという話になったのさ」
詳しく聞くと、全く探索が進んでいない森林地帯に新たな世界樹はあるという。
「私の一存では決められません。会議の決定をもって、探索する方向で調整します。とりあえずは、冒険者ギルドに探索依頼を出しますね」
「アンタのところは、まどろっこしいことをやってるんだね・・・まあ、それもいいのかもしれないね」
会議を開くと、新たな世界樹の探索は、承認されることになった。
というのも、新たな世界樹が見つかれば、莫大な利益が見込めるからだ。観光スポットとしての運用はもちろん、世界樹の葉や実を使ったポーションは、最高級品として取り扱われている。
なので、ある程度のリスクは覚悟して、探索をするべきだという意見が大半を占めた。
カヨさんが意見を言う。
「草原地帯にはアースドラゴン、湿地帯にはシールドラゴンがいましたから、森林地帯にも、それに近い魔物がいる可能性は高いですね」
「それはそう思います。そういった魔物が出てくるという前提で準備を進めましょう」
ショウタ君も話に加わる。
「冒険者ギルドとしては、既に「疾風団」と「魔道女子会」に依頼を出しているよ。彼らは慣れているし、遭遇しても逃げ切れるだけの実力もあるからね」
「ショウタ君も頼もしくなったね」
「これでも支部長だからな」
こうして、町を上げて新たな世界樹の探索をすることになった。
★★★
探索を開始して1週間、「疾風団」と「魔道女子会」が帰還した。
報告を聞く。
「森自体は、珍しいキノコや薬草が採取できる。冒険者としては、いい儲けになるから、積極的に探索したいところだが、厄介な奴らがいてな・・・」
カールさんの話だと、大量のワイバーンが住み着いているそうだ。
「大量のワイバーンなんて、太刀打ちできないだろ?いくらアンタらが強くたって、空を飛んでいるワイバーンをどうすればいいんだ?エルフには悪いが、俺としては、この探索依頼は断ったほうがいいと思う」
一緒に報告を聞いていたサチコさんが言う。
「ワイバーンだって?だったら、片っ端から叩き落としてあげるよ」
「ワイバーンを叩き落とすだって!?」
俺はカールさんたちに、エルフの里でワイバーンを討伐した話をした。以前に少し話をしたが、複数のワイバーンを一瞬で討伐したことは信じていなかったようだ。
「そんなことができるのか!?だったら、話は別だ。森林地帯の探索を進言する」
サチコさんが言う。
「私たちの目的は、あくまでも世界樹の保護だよ。探索活動の協力じゃないよ」
「分かっている。だが、ワイバーンを狩るところまでは、一緒だろ?」
「違いないね」
サチコさんはカールさんと馬が合うようだ。
こうして、大規模な探索隊が編成されることになった。
細かい打合せもした。今回の探索隊の目的は、新たな世界樹の保護だ。ワイバーンや森林地帯にいる危険生物の討伐ではない。なので、戦闘は必要最小限にとどめる。
森林地帯に入って3日、精霊様たちが騒ぎ出した。
「あっちだよ!!あっちにいるよ」
「かなり苦しそう・・・」
「早く助けないと・・・」
精霊様を追って、俺たちも後に続く。
しばらくして、森林地帯の木とは少し種類の違う木があった。周囲の木に比べて、ひょろひょろで、今にも枯れそうだ。
カヨさんが言う。
「これが世界樹ですか?エルフの国で見た世界樹とは、似ても似つかないんですけど・・・」
エルノールさんが言う。
「間違いなく、世界樹の若木ですね。ただ、本当に危険な状態です。すぐに措置をしないと・・・」
エルノールさんは、すぐにエルフたちに指示をして、世界樹の世話を始めた。
様々な薬品を振りかけたり、専用の魔道具を使って、色々と計測しているようだ。
「周りの木に魔力を吸い取られて、十分に魔力を吸収できないでいます。周りの木を伐採する必要があります」
ショウタ君が言う。
「だったら俺に任せてくれ」
「私もやるよ」
ショウタ君がステーキナイフで、サチコさんは高枝切りバサミのオプションのノコギリで、どんどんと木を切っていく。
「これくらいすれば、大丈夫でしょう。後は経過観察ですね。今日は野営して、本格的な治療はまた明日ですね」
こうして、その場所で野営をすることになったのだが、朝起きて、衝撃の光景を目にする。
「切った木が、元通りになっている!?」
そんなことってあり得るのか!?
いくらファンタジー世界だって、それは・・・
思考が追いつかない。
そんな状況に陥っているのは、俺だけではなかった。
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