48 女神降臨
あれだけ心配していたことが嘘のように、マリアさんたちに懐かれている。
とういうのも、俺とカヨさんとショウタ君は、創造神エリスから、直々に使命を授けられた存在だからだ。マリアさんたち宗教関係者にとっては、創造神エリスが降臨し、直々に声を掛けられることは、大変名誉なことらしい。
マリアさんが熱く語る。
「この目で、創造神エリス様を拝見することは、私たちの悲願でもあるのです。過去に何度か、降臨されたことはあるのですが、もう100年以上も前のことなのです。こちらに私たちが来たのも、創造神エリス様を降臨させ、お告げをいただくためです。そのためには、実際にエリス様と会われた・・・」
グレーテルお嬢様が目配せをしてくる。
多分、俺たちと一緒にいれば、創造神エリスが降臨する現場に立ち会えるかもしれないとでも言ったのだろう。
仕方なく、話を合わす。
「私たちも、もう一度女神様にお話をお聞きしたいのです。女神様を降臨させる方法があれば、ご協力お願い致します」
「こちらこそ。必ず、創造神エリス様を降臨させましょうね」
創造神エリスを降臨させるという、共通の目的がある限りは、いい関係が築けるだろう。
★★★
ところで、一体どうやって、女神を降臨させるかというと、信仰心が集まり、祈りの力がある一定の基準を上回れば、降臨させることができるという。
その為に俺がしていることは・・・
「おい、領主様!!もっと左だ。それと、もっと慎重に運んでくれ」
「は、はい・・・」
結局、土木工事だ。
ドワーフの親方の指示に従って、資材をスプーンで搬送したり、基礎工事に精を出している。最近では、高所の作業も増えたので、高所までスプーンで資材や道具を搬送する。まるで、スプーンのエレベーターみたいだ。
結局何を作っているかというと、女神を祀る大聖堂だ。
これには様々な思惑が入り乱れる。
純粋に創造神エリス降臨に必要な信仰心を集めるために立派な大聖堂を完成させようと考えているマリアさんのような人たちがいる一方で、帝国の庇護を受けた主流派の教会よりも、立派な大聖堂を造って、威信を示そうとするグレーテルお嬢様やシェーンブルグ王国の思惑、自分たちの技術力を知らしめてやろうというドワーフたちの決意などが入り混じっている。
みんな、立派な大聖堂を造ろうという思いは共通しているけどな。
そんな思惑を知らない商人たちも大聖堂の建設で資材の売れ行きが好調なので、それに便乗し、商隊の行き来の護衛で冒険者も潤う。当然、住民も工事の仕事はあるし、作業員を対象にした宿や飲食店の経営状況もよくなる。
領主としては、公共事業による景気対策の面も併せ持つ。
そんなことを思いながらも作業を続ける。
カヨさんとマリアさんが、工事現場の視察にやって来た。最近、カヨさんにマリアさんの相手は任せっきりだ。
「ケイスケさん、お弁当を持ってきましたよ」
「ありがとうございます。午前中の作業は終わったので、休憩にしますね」
「じゃあ、一緒に食べましょう」
カヨさんとマリアさんと三人で、お昼を食べる。
その時、宗教の話になった。カヨさんがマリアさんと仲良くしている理由は、女神の教えが本当に正しいか探るためもある。
「マリアさん、ケイスケさんにあの話をしてもらえますか?」
「他種族の排斥の話ですね。分かりました。他種族排斥の教えが生まれたのは、今から約100年前に遡り・・・」
今から約100年前、創造神エリスが降臨したようだ。
これについては、多くの文献に記載されているし、目撃者も多く、また長命のエルフにも目撃者がいることから、事実のようだ。
そして、エリスに対して、神官がこう言った。
『エリス様を信仰せず、それどころか冒涜する亜人や獣人がいるのです。どのように対処すればよろしいでしょうか?』
創造神エリスは言った。
『懲らしめてやりなさい』
あれ?
それって、亜人や獣人を懲らしめるのではなく、「創造神エリスを冒涜する者」を懲らしめるのではないのか?
「主流派は、亜人や獣人を懲らしめなければならないという主張をしています。しかし、私たちの宗派は、「創造神エリスを冒涜する」という行為を懲らしめるべきだと思うのですが・・・」
カヨさんが言う。
「質問の仕方も嫌らしいですね。誘導尋問のようです」
「ええ、あの女神なら、引っ掛かりそうですしね・・・」
多分、事実だ。
馬鹿女神にしてみれば、「私を冒涜する悪い奴は、懲らしめろ!!」と軽い気持ちで言ったのだろうけど、それが元で、多くの獣人や亜人が差別されることになってしまった。
こんなことは、サラリーマンの世界にもよくある。
社長の何気ない一言で、末端の俺たちが大きな影響を受けることなんてよくあった。一度、無礼講の飲み会で、社長に直接聞いてみたけど、本人は言ったことさえも覚えていなかった。正直、崩れ落ちそうになった。今までの苦労はなんだったんだってな・・・
まあ、それは置いておいて、どうにかして、馬鹿女神を降臨させ、真相を聞かないといけない。
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