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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第二章 領主編

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47 今日からあなたは、土木作業員です

 グレーテルお嬢様が手配してくれた文官たちが到着し、俺は書類仕事から、ある程度解放された。そうなるとシールドラゴンがいなくなった湿地の開発だ。今日もスプーン片手に湿地で作業を行う。


 スプーンをスコップ代わりに穴を掘ったり、巨大なスプーンで土砂を運搬する。実際にやってみて、田んぼづくりは、かなり大変だった。繊細な作業もあり、スプーンをそこまで自在に動かせないので、苦労している。

 でも、今までの経験から、練習すればできるだろうと思っている。


 みんなの協力もあり、田植えも無事に終わる。

 総合的な指示をしてくれたマナミさんが言う。


「これでやっと日本酒が作れます。私は別のお酒の仕込みがありますので、一度ドワーフの国に帰りますね。次に来るときは収穫時期です。本当に楽しみですね」

「私もです。やっとお米が食べられるんですね・・・」


 日本酒もそうだが、やっぱり日本人として、お米を腹いっぱい食べたい。



 ★★★


 湿地の開発が一段落したところで、俺の仕事はあまり変わらない。

 今度は草原地帯のインフラ整備だ。解放された奴隷が次々にやって来たり、冒険者や商人だけでなく、仕事を求めて多くの者がやって来たから、あらゆる施設を増設しないといけない。


 今日の仕事は、冒険者ギルドの支部の増設工事だった。

 開拓当初からある施設だが、掘っ立て小屋で手狭になったので、建て替えることになった。

 細かい作業はできないけど、基礎工事は俺よりも早くできる奴はいないから、必然的に俺になる。


 工事をしているとショウタ君に声を掛けられた。


「ケイスケさん、ありがとう。支部長としてお礼を言うよ」

「支部長?」

「そうだよ。俺がこの冒険者ギルドの支部長になったんだ。出世しただろ?」

「凄いね、それは。でも人の上に立つと大変だよ」

「分かっているよ。でも頑張るよ」


 ショウタ君は誇らしげで、嬉しそうだった。

 そんなショウタ君を見ながら、カヨさんが言う。


「ショウタ君は冒険者ギルドに囲い込まれたんでしょうね?」

「そうですね・・・パメラさんはどうですか?」

「パメラさんは、それで構わないと言っています。支部長になれば、あまり現場に出なくていいからだそうです」

「色々ありますね・・・」


 この町の利権を狙っているのは、何もシェーンブルグ王国やティーラム帝国だけではない。冒険者ギルドも商業ギルドも狙っている。二つとも、あれこれと理由をつけて、定例会議に議席を確保していた。


「議長のアイーシャ皇女は大丈夫でしょうか?」

「心配ですね。優秀な方ですが、まだまだ若いですし、私たちと違って頼れる存在がいませんからね」

「そうですね。レンブラント辺境伯が後ろ盾ですが、完全に善意からだけではありませんからね。私たちでサポートしてあげるしかありませんね」


 実際、アイーシャ皇女は苦労している。

 皆、自分たちの利益を最大化しようと、議会では好き勝手に言うからな。よく、護衛のバスラさんがブチキレている。


 ただこれは仕方のないことだ。

 戦争や暴力で決定しない代わりに議会という戦場で戦っている。それがアイーシャ皇女も分かっているので、何とかしようと必死だ。


 まあ、どうしても困ったことになったら、グレーテルお嬢様に頼るんだけどな。見た目は幼女だけど、経験豊富だし、頼りになる。



 ★★★


 今日は朝からアイーシャ皇女もグレーテルお嬢様もピリピリしている。

 というのも、厄介な奴らを招き入れるからだ。


 厄介な奴らというのは、教会関係者だ。

 エリス教会には現在、主流派と反主流派が存在している。俺たちが招き入れるのは、反主流派のほうだ。というのも、グレーテルお嬢様の構想では、反主流派に力をつけさせ、ティーラム帝国が保護している主流派の力を削ぐことを画策している。


「毒には毒を持って制するじゃ・・・不安ではあるがな・・・」

「そうですよね・・・宗教なんて、結局は信じるか信じないかの問題ですからね」

「だからこそじゃ。昨今の主流派の言動は目に余る。多少痛い目を見せてやらねばならん。そのためには、こちらもリスクを取らねばならん」


 ここでエリス教会の内情を少し話しておくと、主流派は一言で言えば、世俗主義だ。各国の要人や王族に取り入り、高い地位と権力を手にしている。一番成功しているのが、ティーラム帝国だ。確固たる地位を築いている。

 一方の反主流派は、教えを忠実に守り、修行や研究に重きを置いている。こちらのほうが、宗教としては好感が持てるが、融通が利かず、俗世に疎いので、資金もあまりない。


 アイーシャ皇女も言う。


「代表のマリアという者とは、面識があります。いい人はいい人なのですが・・・少しクセが強いというか・・・」


 アイーシャ皇女は言葉を濁した。

「クセが強い」という意味はすぐに分かることになった。


 教会関係者との面会の席でのことだった。

 マリアという女性は、金髪青目の美人さんで、ダボッとした修道服の上からでも分かるくらいに胸の膨らみが目立つ。黙っていれば、素晴らしい女性だとは思うのだが、話し出すと止まらない。聞いてもいないのに、創造神エリスの伝説を話し続ける。


 エリスの為人を知っている俺からすると、出鱈目に思えてしまうけどな。


 やっと終わったと思い、油断していたところへ、話を振られた。


「ところで、今度は勇者様の話を聞かせてください。創造神エリス様から受けた啓示について・・・」


 まだまだ、この地獄からは解放されないようだ。

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