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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第二章 領主編

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46 戦後処理

 シールドラゴンを討伐して3日、商人たちとの交渉に追われている。

 特に竜核について、並々ならぬ関心を寄せているようだ。竜核というのは、一言で言うと大きな魔石だ。魔物を倒せば、ほとんどの魔物から魔石は取れるのだが、ここまで大きな物は非常に珍しい。そしてある意味、権力の象徴として扱われるとのことだった。

 アースドラゴンの竜核は、半分くらいは粉々に砕け散っていたが、半分だけでもかなりの値打ち物で、グレーテルお嬢様が大喜びで、シェーンブルグ王国の国王陛下に献上している。

 なので、商人たちにとっては、喉から手が出るほど欲しい。


 俺がのらりくらりと躱していると、5日後にはレンブラント辺境伯がやって来た。


「私に任せていただければ、悪いようには致しませんよ」


 流石に返答に困る。


「そ、それが・・・そうもいかない事情がありまして・・・」

「事情といいますと?」

「それは・・・」


 そんな話をしているところに、頼りになる上司がやって来た。

 グレーテルお嬢様だ。


「久しぶりじゃのう、レンブラント辺境伯。我がシェーンブルグ王国の勇者たちが討伐したシールドラゴンの竜核は凄いであろう?」

「そ、そうですね・・・是非とも・・・」

「シェーンブルグ王国としても、先のアースドラゴンに加えて、今回のことは快挙じゃ。王太子殿下直々に激励にやって来たのじゃ」

「そ、そうですか・・・是非ともご挨拶を・・・」


 王族がやって来たのなら、強引なことはできないだろう。

 グレーテルお嬢様が小声で言う。


「よくやったぞ、ケイスケ。後のことはわらわに任せるのじゃ」


 ★★★


 その後すぐに討伐に参加した者は、王太子殿下から直々に勲章が授与された。オーベルト男爵領の領兵たちは、大変名誉なことだと言って大喜びし、涙を流す者も多かった。冒険者はというと、勲章よりも副賞の賞金のほうを嬉しがり、ドワーフたちは、大量のエールを貰えたことに歓喜した。

 この辺の褒美の与え方は、非常に上手い。


 竜核はというと、レンブラント辺境伯が代表して、ティーラム帝国皇帝に献上することになった。


「レンブラント辺境伯よ。理解しておるな?」

「もちろんです。これもすべて、王太子殿下とグレーテル様のお蔭ですよ」

「それではよろしく頼むぞ」


 その後、グレーテルお嬢様から説明があった。


「竜核についてじゃが、皇帝陛下に献上する手順として、シェーンブルグ王国から寄贈するという形を取った。この意味は分かるな?」


 これは、ティーラム帝国がシェーンブルグ王国に借りを作ったことになる。


「つまり、商人やレンブラント辺境伯が竜核を皇帝に持って行けば、奴らだけの手柄にされてしまう。そうさせんための策じゃ。まあ、レンブラント辺境伯も商人たちも、素材の利益でかなり儲けられるし、書類上のことじゃが、小細工もしておったしな」


 小細工というのは、討伐に参加した冒険者数人をレンブラント辺境伯の騎士にしたことだった。順番は逆だが、シールドラゴンの討伐にお抱えの騎士を派遣したと言い張るためだ。見栄っ張りの貴族が考えそうなことだ。レンブラント辺境伯も帝都で大きな顔をするみたいだ。

 まあ、冒険者のほうも、給料が支払われ、帝都に言って武勇伝を大げさに語るだけだから、ウィンウィンの関係だけどな。


 全てが終った後にグレーテルお嬢様にお礼を言った。


「ありがとうございました。面倒事を引き受けていただいて」

「気にすることはない。ここまで上手くいくとはわらわも思っていなかったしな。これなら、文官も派遣せねばどうにもならんじゃろう。ティーラム帝国も文官を派遣してくるじゃろうから、その前にこちらが先手を打つ」

「と、いいますと?」


 どうやら、この地は政治的に重要な拠点となるようだ。

 当初は上手くいかないと思われていた開発計画だが、ここまで順調に進んでしまうと、必ず利権を巡って争いが起きる。

 そうなったとき、帝国にすべてを奪われないようにするための手らしい。


「帝国の代表者がアイーシャ皇女なら、問題はない。しかし、手柄を横取りしようとして、他の皇子たちがやって来るかもしれん。アイーシャ皇女を守るような手も打たねばな・・・」

「貴族って、大変なんですね・・・」

「そんなものじゃ」


 そこからは、かなり忙しかった。

 開発もそうだが、法整備や組織作りに奔走する。本格的に議会も開設した。ここでは、カヨさんが頑張ってくれた。

 グレーテルお嬢様も褒める。


「カヨは優秀じゃのう。勇者を引退したら、文官としてわらわが召し抱えてやるぞ」

「有難いお言葉ですが、私はケイスケさんの妻ですから・・・」

「そうじゃったのう。まあ、ケイスケも頼りになる伴侶を得て、嬉しかろう」


 グレーテルお嬢様も俺とカヨさんが偽装結婚なのは知っている。これも冗談だろうと受け流す。


 肝心の統治機構のほうだが、グレーテルお嬢様が言うには、問題も多いという。


「絶対的な権力者がいない状況は、良くもあり、悪くもある。緊急事態に一々会議をしていたのでは、間に合わんし、誰かを犠牲にする政策を取らねばならんこともある」


 現代日本で育った俺たちからすれば、民主主義が最高の統治方法だと思っていたが、ここに来て、一概にそうではないと思うようにもなった。


「まあ、やりたいようにやってみよ。最大限のサポートはする」


 これからも色々と大変なことが待っているんだろうな・・・

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