42 頼りになる助っ人
草原を中心に探索したが、アースドラゴンくらい脅威になる魔物は出現しなかった。
アースドラゴンを討伐したことで、感覚が狂っているかもしれないが、普通の冒険者では太刀打ちできない魔物も多い。いい素材が魔物から採取できるから、冒険者を集めるだけなら、今の状態でもいいかもしれないが、一般人が居住するとなると、更なる調査が必要だ。
報告書をまとめていると、通信の魔道具に連絡が入った。
通信の魔道具は水晶玉のような形状で、離れた場所にいる相手とも話をすることができる。ただ、大量の魔力を消費するので、一般的には普及していない。
その相手というのは、グレーテルお嬢様だ。近況を報告する。
「アースドラゴンを倒しただと!?それもミンチにして!?まあ・・・ケイスケなら、そんなものか・・・それは置いておいて、草原なら辛うじて人が住めるということじゃな?」
「そのとおりですね。まだ未知の魔物が出現する可能性は否定できませんが。今後は、広範囲な調査は一旦終了し、草原に拠点を設置する方向で、活動していきます」
「分かった。それで頼りになる助っ人を派遣する。1週間もあれば、到着するじゃろう」
1週間後、やって来たのはサクラさんとオーベルト男爵に率いられた騎士団と従者たちだった。早速、オーベルト男爵とサクラさんにご挨拶をする。
「勇者殿も領主となったのだな。それで我々が来たのは、住民の受け入れ準備と勇者殿に領主の基本的な心構えや業務を指導しに来たのだ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「これは貴殿のためだけではない。我らの利益にもなるからな」
本当に頼りになる助っ人だった。
サクラさんを中心にこの地で栽培できそうな作物を確認していく。
「驚いたことにこの地は魔力が強いようで、どんな作物でも育つわね。まずは穀物を中心に育てればいいかもしれない。蕎麦なんてどう?」
サクラさんとしては、蕎麦も育ててほしいようだ。
新しい料理に使うのが狙いらしい。
「でもすぐに作物は育たないから、こんなのを持ってきたのよ」
サクラさんが持ってきたのは、大量のパスタ、うどん、蕎麦などの乾燥麺だった。サクラさんが言う。
「多くの人が来ても、食料がなければどうにもならないわ。それに自分たちが作っている物が最終的にこんな風になると分かれば、やる気も出るしね」
サクラさんなりによく考えて支援をしてくれているようで、本当に感謝した。
急ピッチで住民の受け入れ準備を進める中で、俺はというとオーベルト男爵から領主としての基本を習っていた。覚えることや気をつけなければならないことが山のようにある。
「・・・以上が税についてだが、5年は免除ということになっているから、またその時になれば、相談してほしい。続いて、社交についてなのだが・・・」
そうか・・・領地持ちの貴族ともなれば、他の貴族との交流も必要になるんだな。
「とりあえず、我と同じくグレーテル様の派閥になるから、何かあればグレーテル様に相談するといいぞ」
「派閥ですか?」
「そうだ。そういえば、そこから説明しなければならなかったな」
この国では、大貴族が下級貴族や新興貴族の面倒を見る制度があるらしい。いい面もあるが、権力闘争が激しくなるデメリットもある。
俺が領主としてやっていけるのか、不安になってしまう。
「まあ、今はそんなことよりも、目の前の問題を解決することだな。これまで話したことは、今は心の片隅に留める程度でいいだろう。裕福になれば、なったでそれも大変だからな」
経験者は語るというやつだ。
オーベルト男爵領もかなり裕福になったが、逆に権力闘争に巻き込まれたり、他の貴族からの要望や交流なんかで大変なようだ。
「領民が飢えに苦しむことに比べれば、どうということはないがな」
どうにも領主というのは、終わりのない辛い仕事のようだった。
★★★
それから一週間、また新たな助っ人がやって来た。
ショウタ君、パメラさん一家と冒険者ギルドのギルマスであるスタンリーさんに率いられた冒険者たちだ。
ショウタ君から話を聞く。
「パメラと話して、ケイスケさんの力になろうとやって来たんだ。王都の店のほうは、店長がしっかりしているから心配ないしな。それと冒険者だけど、新たなビジネスチャンスと思って、やって来たみたいだ」
スタンリーさんが引き継ぐ。
「こんなに良い素材が取れるんだから、来ないわけにはいかないだろ?それに依頼のほとんどが国からだ。取りっぱぐれもないしな」
「しかし、かなり危険な土地ですよ。調査もまだまだ進んでませんし」
「危険を冒すのが冒険者だ。それに住民を守りながら活動するなんて、冒険者冥利に尽きるよ」
非常に頼もしい。
パメラさんも続く。
「食事は期待しておきなよ。まずはアンタたちが元気じゃないと、やって来る住民も不安になるだろ?」
助っ人が来たことで、受け入れ体制は整っていく。
作業を確認しながら、カヨさんと話す。
「本当に有難いですね」
「私もそう思います。困っている人たちのために頑張るのが勇者ですからね」
「カヨさんも勇者っぽくなりましたね」
「ケイスケさん程じゃないですよ」
「そんなに俺って勇者してますかね?ただ、スプーン曲げをしてるだけのような・・・」
しがないスプーンおじさんだった俺が、領主にまでなるんてな・・・
人生とは分からないものだ。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




