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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第二章 領主編

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39 今日からあなたは、領主です

 大変なことになってしまった。

 一度、シェーンブルグ王国の王都に帰還して、国王陛下に報告し、指示を仰ぐことになったのだが、グレーテルお嬢様が進言して、俺とカヨさんが中心となって、ティーラム帝国との国境沿いの領地を開発することになってしまった。


「えっ!!私が領主ですか!?」

「それはそうじゃろう。ケイスケが男爵となったのも、そういう意図があるのじゃ」


 単に功績をもって、爵位が上がったと思っていたが、それだけではなかったようだ。


「仕方ありません、乗り掛かった船ですからね・・・でもカヨさんが騎士爵のままというのは納得できません。そもそも、カヨさんが発案したわけですし・・・」

「それは簡単なことじゃ。ケイスケとカヨは、結婚するのじゃろ?いつまでも婚約のままというのは、よろしくないぞ」


 グレーテルお嬢様は意地悪な笑みを浮かべて言う。

 グレーテルお嬢様も俺とカヨさんが偽装婚約で、縁談を断る口実にしていることは知っているんだけどなあ・・・


「ケイスケ、カヨでは不満か?」

「そんなことはありません。カヨさんは素晴らしい女性です。俺にはもったいないくらいです。俺よりもカヨさんが嫌なのではないでしょうか。私はこんなおじさんですし・・・」


 カヨさんが言う。


「わ、私は別に構いません・・・そんなことよりも、如何に領地を発展させるかを考えましょう」


 再び、グレーテルお嬢様が意地悪な笑みを浮かべて言う。


「素直になればよいものを・・・まあよい。それで領地開発についてじゃが、かなり厳しいものになるぞ」


 グレーテルお嬢様が言うには、シェーンブルグ王国も過去に何度か開発を試みたらしいが、どれも上手くいかなかったようだ。


「実際に見てみれば分かると思うが、まずは過去の文献でも読んで、状況を把握せよ。話はそれからじゃな」


 しばらくして、過去の文献が運ばれてきた。

 カヨさんとともに確認する。


「こんなことがあるんですか?」

「本当ですね・・・ファンタジー世界って感じですね・・・」


 俺とカヨさんが驚いたのには訳がある。

 俺とカヨさんが開発する場所は、非常に厳しい自然環境なのだ。厳しいと聞くと砂漠や極寒の地を想像するかもしれないが、半分は正解で半分は不正解だ。


 言っている意味が分からないって?


 つまり、領地は魔力の流れが異常で、砂漠があったり、極寒の地があったり、沼地や森林もある。狭い土地にこれだけ異なった環境があるのだから、開発も進まない。

 それに魔物も強力だ。Aランクの魔物がゴロゴロ出現する。それにAランクを越えるSランクの魔物の出現もあったとの情報もある。だから、開発が出来そうな草原地帯や森林地帯を開発しようにも、魔物の所為で開発が頓挫しているらしい。


 カヨさんが言う。


「冒険者ギルドに調査依頼を出したとしても、あまりいい顔はされないでしょうね。高ランクの冒険者パーティーでないと活動できないし、そもそも開発をする意味があるのかという問題があります」


 そのとおりだ。

 俺が国王でも、この地を開発を指示しないだろう。メリットもないしな。

 それにこの厳しい自然環境は帝国側でも同じで、この天然の要塞があるからこそ、この地から帝国が攻めてこないことを考えると、このままにしておくことがいいとさえ、思えてしまう。


「困難さが分かったじゃろう?カヨが言う、自治を住民主導でという理念は分かるし、試してもいいとは思うのじゃが、まずは皆で生き延びることが大事じゃな」


 カヨさんの意向で、各種族や代表者による議会のようなものを設けて、運営していこうという予定だったが、それどころではないんだよな。


「ここに多くの奴隷たちが着の身着のままやって来ることを考えたら、ゾッとしますね。とりあえず、食料だけでも確保しないと・・・」

「一応、わらわの伝手を使って、協力は募っているのじゃが、上手くいくかどうかは保証できんな。最悪、こちらとしては、「開発を頑張ったが、できなかった」でいいとは思うが、アイーシャ皇女はそうもいかんじゃろうな」


 ぶっちゃけ、失敗しても俺たちは帰る場所はある。

 勇者でもあるし、王都にもグレーテルお嬢様の地元であるアルトナー伯爵領でも仕事は用意してくれるしな。

 でもアイーシャ皇女は、この開発が頓挫すれば、すべてを失う。帰る場所はないだろうし、それに多くの奴隷たちも命を落とすことだろう。


「最初から失敗することを考えてはいけませんが、失敗した場合は奴隷たちの受け入れ先を確保するほうが現実的かもしれませんね」

「その辺は、何とかする。シェーンブルグ王国だけでは無理じゃろうが、獣王国やエルフの国なんかは協力してくれるじゃろう」


 とりあえず、現地調査だな。


「ギルマスに言って、優秀な冒険者を派遣してもらう。彼らと現地調査を頼む。わらわは関係機関と連携を取って、適切な支援をすることにする」


 こうして、俺は領主となり、無謀な領地開発に携わることになった。

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