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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第一章 勇者として

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38 帝都にて

 帝都に到着する。

 行列が行列なだけにかなり目立っている。それにレンブラント辺境伯が裏で手を回して、噂を流していたしな。その噂というのが・・・


「アイーシャ皇女は難しい交渉を取りまとめたらしい」

「自分の危険を顧みず、他国の村を盗賊から救ったそうだよ」

「大きな被害を出していたグレートコングの群れをあっという間に討伐したそうだ」


 見物に来た市民たちが口々に言う。

 アイーシャ皇女は英雄扱いだ。


「私は何もしてませんのに・・・」

「すべて貴殿の人徳じゃ。気にせず、笑顔でいろ。何ならスプーンの一つでも曲げれば、もっと盛り上がるぞ」

「もう・・・グレーテル様ったら・・・」


 アイーシャ皇女とグレーテルお嬢様は打ち解けている。

 アイーシャ皇女が皇帝となり、グレーテルお嬢様が王妃となれば、両国の関係は明るいだろう。


 ★★★


 王宮に案内され、皇帝との謁見を迎える。

 皇帝が、どういった態度を示すか分からなかったため、かなり警戒していたのだが、本心なのか、演技なのかは分からないが、上機嫌だった。


「よくやった、アイーシャ。それでこそ我が娘だ。宰相、ここにいる皆に我が娘アイーシャが成し遂げた成果を発表してやれ」

「はい!!それでは、発表いたします・・・」


 アイーシャ皇女の功績が発表されていく。

 特に帝国側が評価しているのは、森林地帯で申し訳程度とはいえ、領土を獲得したことだった。領土の獲得で高評価するなんて、侵略国家ならではだろう。


 それと即時停戦については、そこまで心配はしていなかったが、問題は亜人、獣人奴隷の解放だった。これについてはあっさりと呑むことは考えられなかった。グレーテルお嬢様もある程度の妥協は必要と思っていた。

 しかし、結果は予想外だった。


「奴隷の解放についても、犯罪奴隷を除き、全て開放する。それくらいは、こちらも譲歩してやろう」


 かなり上から目線だが、奴隷を解放してくれるのであれば文句はない。

 皇帝は続ける。


「それで功績を上げたアイーシャに褒美を取らせる。帝国東部に直轄地があったであろう?そこの管理を任せる。存分に発展させてみよ」


 これって、かなり評価されてるよな?


 しかし、アイーシャ皇女と護衛のバスラさんを見ると、青ざめていた。

 何とか声を振り絞り、アイーシャ皇女はお礼を述べる。


「有難き幸せ。謹んでお受けいたします」


 あまり嬉しい褒美ではないようだが・・・


 ★★★


 謁見からしばらくして、正式な文書が届いた。

 内容を確認する。バスラさんが声を上げる。


「こ、これは酷い・・・アイーシャ殿下、お断りしたほうが・・・」

「それはできません。皇帝陛下の命令は絶対です」


 グレーテルお嬢様が言う。


「分かるように説明をしてもらえんか?領地まで貰った割には、浮かない顔をしているようじゃが?」

「この文書を見てください。まず、私がいただく領地ですが・・・」


 アイーシャ皇女によると、辺境というのも憚れるくらいのハズレ領地で、シェーンブルグ王国との国境沿いにあるのだが、どちらも領有権を主張しない程の荒れた土地らしい。


「流刑地に近いですね・・・それに解放された奴隷たちも・・・」


 解放される奴隷は、一遍にこの場所に集められるそうだ。

 グレーテルお嬢様が言う。


「かなり考えられた、非常に嫌らしい一手じゃのう・・・」


 まず、この作戦のねらいは、アイーシャ皇女の力を削ぐことにある。

 レンブラント辺境伯という後ろ盾ができ、このまま帝都に居座られたら、どんどんと力をつけてしまう。そうならないように帝都から離れた僻地に褒美という名目で、移住させる。実質的には流刑だ。

 更に奴隷についても・・・


「いきなり昨日まで奴隷だった者が、平民になれば、社会に混乱をきたします。その対策という名目で、私が管理する領地に送り込むのです。考えてもみてください。解放されたばかりの奴隷が大量にいる場所に好き好んで移住する者などいないでしょう」


 グレーテルお嬢様が言う。


「まだあるぞ。これはシェーンブルグ王国への嫌がらせも含まれておる」


 グレーテルお嬢様が言うには、アイーシャ皇女がいただく領地は、シェーンブルグ王国とティーラム帝国との間で、国境線が曖昧なのだという。アイーシャ皇女が開発に乗り出すのだから、シェーンブルグ王国も指をくわえて見ているわけにはいかず、形だけでも開発をしなければならないようだ。


「あの地は魔境と呼ばれておる。開発したとて、利益は皆無じゃ。それに帝国も我が国も揃って開発するとなると、どうしても領土問題が起きてしまう。そうなると、戦争になるかもしれんな・・・」


 なぜ帝国は、そこまで戦争を起こしたいのだろうか?


 途方に暮れているところで、カヨさんが言った。


「その開発計画ですが、私にやらせてもらえないでしょうか?たとえばですが、アイーシャ皇女と私たちが協力して開発すれば、戦争なんて起きないですよね?」


 グレーテルお嬢様が言う。


「つまり、相手としては、してやったりと思っているところを、こちらが思いもよらない方法でひっくり返すということじゃな?面白い、やってやろうぞ!!」


 そんなこんなで、俺たちは辺境を開拓することになってしまった。

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