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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第一章 勇者として

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31 フラレンス王国 2

 フラレンス王国に到着した。

 俺たちの案内は、フラレンス王国第三王女であるステラ王女だった。ステラ王女は18歳の金髪青目の美少女で、グレーテルお嬢様と古くから付き合いがあるという。


「グレーテル、久しぶりね。しばらく見ないうちに可愛くなっちゃって・・・」

「体のことは言わんでほしい。色々と事情があるからのう」

「でも元気そうでよかったわ。早速なんだけど・・・」


 ステラ王女によると、フラレンス王国は、ティーラム帝国派と反ティーラム帝国派に分かれているという。


「最近、第一王女であるアメラお姉様を中心とした帝国派が力を強めているのよ。帝国から多額の資金援助を受けているとの噂よ。伝統的に帝国は相容れない存在なんだけど、『もうそんな時代は終わった』って言って周っているのよ。私としては、帝国の工作に引っ掛かっているとしか思えないわ」


「そうか・・・では、こちらの交渉も難しいものになるのう・・・」


「手紙にも書いたけど、2週間後に開催される、一般庶民向けの料理コンテストで好成績を出せば、お父様の心象も良くなるわ。帝国と組んだほうが利があるとしても、心の中じゃ、帝国とは組みたくないと思っているだろうから、料理コンテストがそのきっかけになればいいと思うのよ」


 グレーテルお嬢様は自信満々に言う。


「任せておけ、こちらは専門家を用意したからのう」


 カヨさんが代表して、料理コンテストに出品する料理を説明する。

 うどんと唐揚げだ。うどんはシェーンブルグ王国の王都に出店したサクラさんが監修し、唐揚げはパメラさんの食堂の人気料理だ。その二人を連れて来たのだから、負けるはずがない。


 しかし、ステラ王女は青ざめる。


「これでは勝てないわ・・・恥ずべきことだけど・・・」


 ステラ王女が言うには、うどんと唐揚げは、フラレンス王国の王都で大流行中で、アメラ王女が開発したと言い張っているらしい。でも、どこをどう見てもパクリだ。

 カヨさんが言う。


「本家はこちらです。特にうどんは、サクラさんが試行錯誤して作り出したものですよ。その功績を横取りするなんて・・・」


 サクラさんが言う。


「カヨさんの気持ちは有難いけど、そもそも、うどんなんて、大昔からあるからね。盗った盗られたと言ってもねえ・・・まあ、別の何かを考えればいいんじゃないの?」


 パメラさんも続く。


「そのための私たちだろ?腕の見せどころだからね」


 俺は提案する。


「だったら、フラレンス王国の庶民が、どんな物を食べているのか、実際に体験してみましょうよ。折角来たんですから、楽しまないとね」


 カヨさんが言う。


「ありがとうございます、ケイスケさん。いっぱい食べて、しっかり提案しましょうね」


 カヨさんは少し明るくなった。


 カヨさんがサクラさんやパメラさん以上に怒ったのは、この料理コンテストの責任者だからだ。グレーテルお嬢様に言って、責任者にしてもらった。本人としては、こういった企画系の仕事がやりたいらしい。


 実際、カヨさんは一生懸命に頑張ってきた。

 その頑張りを知っているだけに俺も全力でサポートしているんだ。



 ★★★


 それから屋台を中心に食べ歩きをすることにした。

 最初に食べたのは、アメラ王女が監修するうどんの屋台だった。かなり、美味しかった。特に麺が・・・


「パクリにしては、クオリティーが高い。いい小麦を使っているんでしょうね?」


 ステラ王女が答える。


「フラレンス小麦は味が良いことで有名だからね。アメラお姉様がうどんをパクったのも、本家以上の味が出せると思ったからよ」


 続いて唐揚げも食べてみた。

 シェーンブルグ王国では主にロックバードを使っているが、こちらでは高級食材のコカトリスを使っている。

 カヨさんが言う。


「私としては、ロックバードのほうが、脂身が少なくていいのですが、コカトリスのほうが柔らかく、食べやすいので、好みが分かれるところですね」

「そうね・・・これなら、貴方たちがフラレンス王国の唐揚げをヒントにパクったと言い張れるでしょ?」

「それはそうですが・・・」


 やはり、うどんと唐揚げで真っ向勝負することは得策ではないようだ。


 続いては、庶民に人気の屋台料理をみんなで買って食べた。

 これが普通の旅行ならば、結構楽しめたんだけどな・・・


 食べてみて気付いたが、ジャガイモを使った料理が多かった。


「ジャガイモは安価で、庶民には人気よ。ただ、ジャガイモを使った料理は出尽くしている感じがするけどね」


 そんな中、サクラさんが食いつく。


「これって蕎麦じゃない?ガレットにしてるけど・・・」


「それはサラザンね。こちらも庶民の代表的な食べ物ね。小麦が育たない土地でも育つから、庶民がよく食べているわ。言ってみれば、小麦の代用品ね」


 俺はすかさず提案した。


「ということは、蕎麦はこの国では、普及してないということですよね?だったら、ウチは蕎麦で勝負してはどうでしょうか?」


 サクラさんが言う。


「いい考えね。私の実家のうどん屋は、新蕎麦の季節だけ蕎麦を出していたから、蕎麦は作れるわ。それと出汁なんだけど・・・」


 サクラさんが言うには、フラレンス王国のうどん出汁は、干し肉を使っているという。これは、サクラさんが試行錯誤して作ったうどんを忠実にパクったからだ。サクラさんも本当は、魚出汁で勝負したかったのだが、オーベルト男爵領は内陸部にあるから、泣く泣く干し肉で代用していたようだ。


「麺は結構自信があるんだけど、出汁は納得できなくてね。こちらは海産物も豊富に獲れるから、出汁でも勝負できるわ」


 これで、蕎麦を作ることが決定した。

 更に俺は提案する。


「蕎麦といえば、定番があります。それは・・・」


 この提案は難色を示された。

 カヨさんが言う。


「いくらケイスケさんでも、それは定番とは言えません。邪道の部類に入ると思います。蕎麦本来の・・・」


 意外にカヨさんは、蕎麦愛が強いようだ。


 グレーテルお嬢様が言う。


「とりあえず、どちらも作ってみよ。話はそれからじゃ」


 こうして、俺たちのプロジェクトは動き出した。

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