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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第一章 勇者として

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30 フラレンス王国

 俺たちは、騎馬王国を逃げるように後にした。

 これには理由がある。


 決闘を終えたカヨさんとボルタ王女は互いに認め合い、良好な関係を築いていた。


「ところで、そちらの勇者殿は強いのか?」

「ケイスケさんですか?私なんて、足元にも及ばない程、強いですよ」

「そんなに強そうには見えないが・・・」

「ケイスケさんが本気を出したら大変なことになります。命がいくつあっても、足りませんよ」


 そんな話の流れで次の日、俺はスキルを見せることになってしまった。

 ボルタ王女が手合わせをしたいと言ってきたが、これは断った。だって、確実に殺してしまうからだ。

なので、取り壊す予定の商業ギルドの支部に案内され、この建物にスキルを放つように言われた。

 言われたとおりに、大量の先割れスプーンをぶつける。何度か繰り返したら、更地になった。


 グレーテルお嬢様が言う。


「ケイスケ!!やり過ぎじゃ・・・騎馬王国の奴らの顔を見てみよ」


 みんなドン引きしていた。


 そして、ボルタ王女が近づいてきて言った。


「ケイスケ殿、貴殿の気持ちは受け取った。我は貴殿の気持ちを受け入れる。よって、これからは婿殿と呼ばせてもらう」


 あれ?これって、ヤバい感じじゃないか?

 そもそも結婚の話なんて、こちらからは何もしていないのに・・・


 仕方なく、俺はカヨさんをダシに使う。


「ボルタ王女、申し訳ありませんが、私はこちらのカヨさんと将来を誓い合っているのです」


 最近、俺もカヨさんも、よくこれを使う。

 貴族や大商会の関係者から、ひっきりなしに見合いの話が届くので、面倒くさくなって、婚約中ということにしているのだ。


 しかし、予想外のことが起きる。


「婿殿くらいの実力があれば、嫁が一人二人いようが関係はない。それに尊敬するカヨ殿が第一婦人であれば、これほど心強いことはない。我は第二婦人で一向にかまわん」


 グレーテルお嬢様が言う。


「ややこしい話になったのう・・・とりあえず、国王陛下と話をするから、お主とカヨは、ボルタ王女とお茶でもしてこい」



 結局、ボルタ王女がもっと修行して、強い女になったら迎えに来るということで、落ち着いたらしい。


「ケイスケには悪いが、そうするしかなかった。1年後にもう一度、来ることになるだろうが・・・」


 そんなこんなで、俺たちは逃げるように騎馬王国を後にしたのだった。



 ★★★


 次の訪問先はフラレンス王国だが、一旦シェーンブルグ王国に帰還することになった。国王陛下への報告とフラレンス王国の対策のためだ。

 というのもフラレンス王国は一癖も二癖もある国なのだ。一言で言えば非常に面倒くさい国だ。


 まず、プライドが高い。

 ティーラム帝国に対抗意識を燃やしているが、軍事力では勝てないので、芸術や文化に力を入れ、「我々は野蛮な帝国と違い、優雅で気品がある国だ」と喧伝している。

 なので、下手に出過ぎても馬鹿にされ、かといって上から言えば、反発される。馬鹿にされず、相手の立場を尊重する難しい舵取りが求められる。


「このような状況じゃから、一旦体制を整えて、フラレンス王国に向かうことにする。これまでの外交における最大の山場と思ってくれ」


 フラレンス王国は、帝国に次ぐ軍事力を持っており、農業国でもあることから、かなり裕福だ。帝国に謎の対抗意識を持っているから、帝国の言いなりになることはないが、プライドが高い相手だけに難しい。


「相手のプライドを傷つけず、こちらに一目を置かせる方法はないものだろうか?」


 グレーテルお嬢様も悩んでいる。

 カヨさんが提案する。


「料理で唸らせてはどうでしょうか?こちらには、新酒のチュウハイやハイボール、サクラさんが開発した《《うどん》》もあるわけですからね。サクラさんやパメラさんが協力してくれるなら、彼らを唸らせる料理を作れるはずです」


「いい案じゃ。フラレンス王国の王都は美食の町として有名じゃが、最近はマンネリ化してきているという。料理部門の担当はステラ王女で、わらわも懇意にしておる。ここはひとつ、ステラ王女と協力して・・・」


 グレーテルお嬢様なりに計画はあるようだった。


 ★★★


 今回、フラレンス王国へ赴くのは、いつのもメンバーに加えて、サクラさん一家とショウタ君一家が加わる。料理でフラレンス王国の心象をよくしようと、料理の専門家を呼んだわけだ。

 サクラさんが言う。


「フラレンス王国の王都は美食の町だから、私たちがどこまでやれるか、試したくてね。パメラさんも協力してくれるし、細かいリサーチなんかはカヨさんがやってくれたから、楽しみにしておいてよ」

「それは心強いですね。私にできることがあれば、遠慮なく言ってくださいね」


 サクラさんは気合い十分だ。

 ショウタ君も続く。


「フラレンス王国は海産物も豊富に獲れるから、俺の腕の見せどころだな。刺身でも寿司でも任せてくれよ」


 カヨさんが言う。


「実際、向こうで食材を見てみないと分かりませんけど、和食中心のメニューで臨めば、大丈夫だと思いますよ」


 このメンバーなら、大丈夫だろう。

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