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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第一章 勇者として

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29 騎馬王国へ

 騎馬王国にやって来た。

 

 騎馬王国は草原の国で、その名のとおり騎馬隊が有名で、全国民の誇りでもある。

 今も目の前で、数百騎の部隊が激しい訓練をしている。

 騎馬王国の王が言う。


「どうだ、勇者殿?我が自慢の騎馬隊は?」

「す、凄いです・・・迫力があって・・・こんな精強な部隊は見たことがありません」


 グレーテルお嬢様から、騎馬王国では騎馬隊を馬鹿にするようなことは絶対にするなと念を押されていた。心の中では、「俺のスプーンと相性がいい。初見だと全滅させられる」と思っていたが、愛想笑いを浮かべながら、お世辞を言う。


「そういえば、隊長は女性なんですか?あんな大部隊を率いて、凄いですね」

「おお!!実はあれは我が娘なのだ。お転婆で我も扱いに困っているのだ。何らなら、嫁にもらってくれてもいいぞ」


 困り顔で曖昧な返事をしていると、グレーテルお嬢様が間に入ってくれた。


「こちらのケイスケは、シェーンブルグ王国の勇者です。我が国王陛下の許可がなければ、婚姻ができませぬ。それにこれ以上騎馬王国が強くなっても、困りますからな」


 相手を煽てつつ、やんわりと断った。


「誰かあのじゃじゃ馬をもらってくれんかのう・・・」



 ★★★


 訓練視察の後、早速宴が始まる。

 グレーテルお嬢様によると、既に話はついていているらしい。なので、こちらもスプーン曲げで、場を盛り上げ、友好ムードに花を添える。

 カヨさんは、最近フォーク曲げではなく、薙刀の型を応用したフォークの型で場を盛り上げるようになった。


 国王や側近たちも褒めてくれる。


「両勇者殿、どちらも素晴らしかったぞ。褒美を取らせる」

「「ありがとうございます」」


 そんな話をしていた時だ。

 緑の髪で少しがっしりとした美女が姿を現した。その美女とは、騎馬隊を率いていた騎馬王国の第一王女であるボルタ王女だった。


「父上、この者たちの芸は確かに面白い。しかし、こんな軟弱な者に我の婿は務まらん。正直、期待はずれだ」


 そもそも、貴方に求婚しに来たわけでは、ないんだけどなあ・・・


 更にボルタ王女は続ける。


「それとそこの女もだ。そこそこ槍は使えるようだが、見かけ倒しだな。実戦では使えん」


 これにはカヨさんがカチンときたようで、言い返してしまった。


「今日やったのは、あくまでも基本の型です。実際に手合わせでもしてみますか?」

「ほう・・・面白い女だな。吠え面をかくことになるぞ」

「それは貴方だと思いますが」


 一触即発の雰囲気になってしまった。

 宴会でお酒が入っていることもあり、場は大いに盛り上がった。


「ボルタ王女に戦いを挑む奴など、この国にはいないからな」

「彼女もボルタ王女と同じ槍使いだろ?面白い戦いになればいいが・・・」

「賭けをするか?俺はボルタ王女に賭けるがな・・・」


 国王も続く。


「ボルタよ。くれぐれも怪我はさせるなよ。大切な客人だからな」

「分かっています。多少は痛い思いをしてもらうでしょうが」


 グレーテルお嬢様が言う。


「カヨ、決して無理はするなよ」

「もちろんです。木製のフォークで戦いますし、先は丸くします。殺しはしませんよ」


 俺が代わりに決闘しようかと提案したが却下された。


「ケイスケが出ると、決闘どころではなくなってしまう」

「そうですよ。それに加減できないですよね?」


 そのとおりだ。

 ボルタ王女を肉の塊にはできるかもしれないけど、そんなことをしたら外交どころではなくなってしまう。ここは大人しくしておこう。


 みんなで、訓練所に移動して決闘が始まる。

 ボルタ王女は短槍と呼ばれる1.5メートル程の槍で、カヨさんのフォークは2メートル強だ。

 護衛のアンヌさんが解説してくれる。


「昼間の訓練を見たが、ボルタ王女はスピード重視だな。一方のカヨ殿は、ある程度間合いを取って、安全に戦うスタイルだ。面白い戦いになると思うが、カヨ殿は初見殺しの技を持っている。流石の私でも、一撃をもらったからな」


 決闘が始まると激しい打ち合いが始まった。

 手数は圧倒的にボルタ王女が多い。それをカヨさんが上手く捌いている。ただ、カヨさんが迂闊に攻撃をすると接近戦に持ち込まれるので、カヨさんは防御メインで戦っているようだ。


「ボルタ王女とここまで打ち合えるとは、かなりの実力者だ」

「ああ、たとえ負けたとしても、誇っていいだろう」

「お飾りの勇者と思っていたが、実力もあるようだ」


 観戦している騎馬王国の関係者もカヨさんを褒めていた。


 撃ち合いは激しさを増す。


「ちまちまと・・・小賢しいことをしおって!!もっと撃ち込んで来い」

「その手には乗りませんよ。傍目には貴方が押しているように見えるかもしれませんが、実際、追い込まれているのは、貴方のほうですからね」

「うるさい!!すぐにその口を塞いでやる」


 ボルタ王女は間合いを取り、呪文のようなものを唱えた。

 ボルタ王女の体がオーラで包まれた。国王が叫ぶ。


「いかん!!ボルタ!!使者殿を殺してはならん!!」


 アンヌさんが言うには、身体強化魔法の一種だという。

 昼間の訓練で、あそこまで上手く馬を操れたのも、この魔法があったためだそうだ。馬にも身体強化魔法を掛けていたらしい。

 ただ、絶大な力が発揮されるので、こういった模擬戦に使っていい技ではないという。


 ボルタ王女は猛然とカヨさんに向かって行く。

 カヨさんはというと、落ち着いていた。冷静にボルタ王女の攻撃を躱していく。そして、決着の時が訪れた。


 一旦、体勢を整えようと後退したボルタ王女にカヨさんが追撃を開始する。

 ボルタ王女は躱しきったと思っていたところに、カヨさんのフォークが襲い掛かる。カヨさんのフォークが急激に伸びたのだ。

 アンヌさんが言う。


「あれは初見では防げん。達人になればなるほど、間合いの感覚が優れている。いきなり武器が伸びれば、対処しきれない」


 カヨさんはフォークは、ボルタ王女の喉元に突き付けた。


「勝負ありですね?」

「ああ・・・我の負けだ・・・」


 場内が静まり返る。

 騎馬王国最強のボルタ王女が敗れたことが信じられないらしい。

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