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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第一章 勇者として

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25 獣王国へ

 一旦、シェーンブルグ王国に帰還した俺たちだが、正式に国王陛下の承認をいただいて、獣王国に交渉に向かうことになった。ブロンベルク侯爵が大反対したが、国王陛下は聞き入れなかった。


 会議で議決を取ったのだが、賛成派が多数を占めたからだ。

 これはグレーテルお嬢様の手腕が大きい。エルフの交易品はもちろんだが、ドワーフの国で新発売されたチュウハイを大量に持って帰り、商業ギルドに卸した。それで商業ギルドに支援を受けている貴族たちは、軒並み賛成したというわけだ。あの味なら、儲かること間違いなしだからな。


 会議終了後にブロンベルク侯爵が言った。


「そこまで言うなら、勝手にすればいいだろう。しかし、この決断が間違いだと、すぐに気づくことになるがな・・・」


 この時俺は、ただの負け惜しみだと思っていたのだが・・・



 ★★★


 早速、獣王国へ出発した。

 今回のメンバーは、俺とカヨさん、グレーテルお嬢様と従者たち、これに文官を加えたいつものメンバーだ。ショウタ君は、今回もお留守番だ。というのも、シェーンブルグ王国から王都警備隊長という役職に就けられたので、あまり外に出られない。本人は給料が上がったと喜んでいたけど。


 そして国境付近で、エルフの族長エルノールさんとサチコさん、ドワーフの大使バルトさんと合流した。マナミさんも一緒に行きたいと言っていたらしいが、新酒の仕込みで忙しく、今回の獣王国への訪問は辞退した経緯がある。


 ドワーフの大使バルトさんが言う。


「酒神様は来られませんが、その代わり新酒を大量に持ってきましたよ。それにハイボールの作り方も習いました。楽しみにしてください」


 サチコさんが反応する。


「それは楽しみだね。ただ、獣王国へ着く前に飲み切ってしまわないようにしないとね」

「それはそうですね。そんなことになったら、私は間違いなくクビですよ」


 和気あいあいとした感じで、旅はスタートした。

 国境を越えた辺りで、急にサチコさんが連れていた精霊様が騒ぎ出した。


「大変だよ!!この先に武器を持った人間がいっぱいいるよ」


 グレーテルお嬢様が反応する。


「間違いなく、わらわたちを待ち伏せしているのじゃろう。それで精霊様、数はどれくらいなのじゃ?」

「えっとねえ・・・100人はいたかな?いや、もっとかなあ・・・森に隠れていたから、正確には分からないや」


 100人規模の部隊か・・・

 それに森に隠れているなんて・・・


「皆の者、戦闘体制を取れ!!アンヌ、指揮を頼む」

「はっ!!それでは事前に指示したとおりの作戦で行く。ケイスケ殿は、シェルターを作れ」

「はい!!」

「カヨ殿はグレーテルお嬢様の護衛を」

「はい!!」

「エルノール殿、サチコ殿、バルト殿は・・・」


 こういうこともあろうかと、襲撃に備えて訓練はしてきた。

 ここまで数が多いことは想定外だったけど。


 でも俺がやる事は変わらない。


「出でよスプーン!!」


 声に出して言わなくても出せるけど、これは味方に知らしめる意味もある。

 俺は巨大なスプーンを10本出現させ、中央から折り曲げる。三角形の形にして、地面に突き刺す。これで、簡易シェルターの完成だ。


「グレーテルお嬢様、カヨさん、サチコさん、この中に入ってください。非戦闘員の方も順次中へ」


 スプーンは鋼鉄製なので、特大の大魔法くらいじゃないと壊れない。


 しばらくして、迎撃態勢を整えた俺たちに魔法と弓の攻撃が飛んでくるが、スプーンシェルターはびくともしない。

 エルノールさんが言う。


「大した奴はいなさそうですね。狙いも甘い。本当の弓の使い方を教えてあげましょう」


 そういうとエルノールさんは、弓でどんどんと敵を射抜き始めた。

 それを見ていたサチコさんが、参戦する。


「私も訓練の成果を見せてあげるよ」


 そう言うと、神器の高枝切りバサミを物凄い速さで伸ばし、敵兵を突き刺していた。


「凄いですね・・・初見じゃ、躱せないですよ」

「先端をノコギリにして、切り刻んでもいいけど、人間相手だと、あまり気乗りしないね」


 ここでバルトさんが、声を掛けて来た。


「勇者殿、頼まれていた物を持ってきましたぞ。折角ですから、試し打ちをしてみればどうですかな?」


 バルトさんが、俺に手渡してきたのは、スプーンの発射装置だ。

 2メートル程の筒状で、ここに俺のスプーンをはめ込んで、発射する。原理としては、爆発する魔石の爆発力を利用したものだ。


 実際に撃ってみると、ものすごい速さで飛んで行った。

 ロケットランチャーを打っているような感覚だった。


 まあ、ロケットランチャーなんて撃ったことはないんだけどな・・・


 バルトさんが言う。


「これは凄いですな。開発した技師が大喜びするでしょう」


 こんなのが飛び交うようになれば、この世界の戦争も一変するだろう。


 戦況はというと、圧倒的にこちらが優勢だった。

 相手の攻撃は、全てスプーンシェルターで防げるし、エルフ屈指の弓使いと神器による遠距離攻撃で、圧倒しているからだ。


 手詰まりになった相手は、撤退すればいいものを何とこちらに突撃を掛けて来た。


「仕方ない・・・やりますよ。出でよ、先割れスプーン!!」


 俺は大量に巨大な先割れスプーンを空中に出現させた。

 そして、敵兵に大量の先割れスプーンが降り注ぐ。



 サチコさんが言う。


「この中で、アンタが一番ヤバいよ・・・」


 グレーテルお嬢様も・・・


「ケイスケ、お主はいつもやり過ぎる。まあ、仕方ないが・・・」


 こうして、あっさりと襲撃犯を撃退したのだった。

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