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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第一章 勇者として

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24 聖なるハンマー

 酒神様こと高野真奈美たかのまなみさんは、28歳の女性だ。

 転移前は日本の酒造メーカーに勤務していたそうで、その知識を生かして酒づくりをしているらしい。

 こちらもある程度の事情を説明した。


「皆さんも苦労されたんですね。私は本当に運が良かったと思います。私は三十路手前ですがドワーフにしたら少女に見えるようで、排他的なドワーフたちも子供は大切にする風習があり、私を保護してくれたんです」


 そこからマナミさんは、嬉しそうに酒づくりの話を始めた。


「ドワーフの火酒は美味しいのですが酒精が強く、ドワーフ以外にはあまり好まれません。ですので、まず果実酒を思いついたんですよ。甘い果実を漬け込んだ果実酒を作れば、他種族にもドワーフの火酒の良さが伝わると思いましてね。というのも私は酒造メーカーでマーケティングを・・・」


 マナミさんの話を要約すると、マナミさんは新しく酒を生み出したというよりは、今ある酒の良さを引き出す方法をドワーフたちに示したようだった。


「果実酒、チュウハイの次はハイボールですね。やはり、火酒その物の良さを知ってほしいですからね。私としては、これを一番勧めたいんですが、ドワーフ的には火酒を何かで割って飲むのは、軟弱者と思われてしまいますからね。ドワーフの私に対する信頼度も上がってきましたから、チュウハイの販売が上手くいけば、ハイボールの販売に着手しようと思っています」


 実際、日本のウィスキーメーカーもハイボールから、ウィスキーブームを作りだしたしな。まずは、どんな形でも飲んでもらうほうが大切だからな。


 カヨさんが言う。


「こちらの世界では、糖質ゼロを謳い文句にしても、大して効果はないでしょうから、味で勝負ですね」

「味には自信があります。なので、如何に飲んでもらえるかだけですね」


 試しに火酒のハイボールを作ってもらった。

 サチコさんが唸る。


「ウィスキーロック派の私に言わせると、「こんな上等な火酒をハイボールにするなんて!?」と思ってしまうよ。でも、美味しいよ」

「これでも二級酒ですよ」

「これが二級酒だって!?」

「私だって、最終的にはロックかストレートで飲んでもらいたいんですけど、まずは火酒の良さを広めようと思ってます」


 そういえば、ずっとお酒の話をしている。

 マナミさんがお酒好きというのは分かったとして、聞くべきことは聞かないとな。


「話の腰を折るようで悪いのですが、マナミさんの神器を教えてください。それと神器は使ってないんですか?」

「私の神器は「聖なるハンマー」です。最初はチートなハンマーで小説かなんかだと、ドワーフもびっくりな物が作れると思っていたんですけど、ごく普通のハンマーでした。普通のハンマーなんて貰ったところで、どうしようもないですからね」

「ということは、この世界に来てから一度も神器は使ってないと?」

「はい。一度取り出して、女神様からの手紙は確認しましたが、私にどうすることもできないので、お酒づくりに励んでました」


 これで使用歴が全くなかった理由が分かった。

 カヨさんが言う。


「マナミさんに私たちと一緒に来てもらうことは無理そうですね。そんなことをすれば、暴動が起きますよね?」

「そうなるでしょうね。ただ、あの女神のことです、いきなり戦えとか言いかねません。基本的な使い方だけでも、お教えしましょう」


 そこからは、マナミさんのハンマーの使い方を確認した。

 マナミさんのスキルレベルは最底辺なので、ごく普通のトンカチくらいの大きさにしかならず、出せる本数も5本が限界だった。


「これで戦うことなんて、できませんよね?」

「そ、それはそうですが・・・でも、毎日少しずつ使うようにすれば、レベルも上がると思います。「小さなことからコツコツと」と言いますからね」


 ハンマーなだけけに・・・

 という言葉は呑みこんだ。


「まあ、やってみます。どうしてもというなら、鍛冶工房のドワーフに使ってもらってもいいでしょうし・・・」


 そんな話をしているところにドワーフの王とグレーテルお嬢様たちがやって来た。


「マナミ、楽しんでいるか?こちらも交渉はまとまったぞ。シェーンブルグ王国が獣王国とティーラム帝国との停戦に向けて動きだすようだ。エルフたちも協力するみたいだから、我らドワーフも協力する。エルフがやられたら、果実酒が作れなくなるからな」


 グレーテルお嬢様が言う。


「そういう訳じゃ。明日、詳しく条件を詰めようと思う」


 それはよかった。


 そんなとき、ドワーフの王がマナミさんの出した神器のハンマーを手に取って叫ぶ。


「こ、これは!?」

「バルク様、これは私のスキルで出したハンマーで、良ければ工房のドワーフたちに・・・」


 マナミさんが言い掛けたところで、ドワーフの王が遮る。


「これは大変なことだ!!伝説のハンマーじゃないか!?グレーテル殿、悪いが明日の会議は延期にしてほしい。こちらはそれどころでは、なくなったからな」



 ★★★


 次の日から宴会が3日続いた。鍛冶神様が誕生したからだ。


 鍛冶神様というのは、もちろんマナミさんのことだ。鍛冶神様とは、鍛冶の革命を起こす存在らしい。ドワーフの王が言うには、マナミさんの出したハンマーは、かなりの値打ち物らしく、必ず新しい技術が生まれるとのことだった。マナミさんのハンマーを使いたいドワーフが殺到するとも言っていた。それにスキルレベルによって成長し、使える材質も変化することなどを伝えたところ、大興奮した。


「マナミのハンマーを独り占めしたい。だが、我は王だ。1本は王の権限で俺の専用にするが、後の4本は競技会を開いて使用者を決める。おい!!すぐに競技会を開けるように準備しろ!!」


 次の日、急遽競技会が開催された。

 そして俺はというと、ステージに立って、スプーン曲げを披露している。

 競技会の前座としてだ。宴会芸でスプーン曲げを披露したところ、ドワーフたちに気に入られ、こうなってしまった。

 まあ、断ることなんてできないしな。


 ステージを終えた後、グレーテルお嬢様に呼び出された。


「流石に競技会の最後までは付き合いきれん。わらわたちには時間がないからのう。一応、協力する旨の書状だけはもらっておいたから、一度シェーンブルグ王国に帰国するぞ」


 そうして、競技会で大盛り上がりのドワーフの国を後にしたのだった。

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