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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第一章 勇者として

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22 停戦に向けて

 宰相が言うには、ティーラム帝国の要請を受けた各国も同じような事情を抱えているという。


「各国ともに獣人や亜人をそれなりに抱えています。我が国と同じように長年、各国ともティーラム帝国と獣王国の諍いに首を突っ込まなかったのは、厄介ごとに巻き込まれたくないと思っていたのです」


 ティーラム帝国が今回強引な手に出たのは理由があるという。


「ここ何年も戦況は膠着状態なのですが、強引な手に出た理由は、勇者殿にあると思われます」


 宰相の見立ては、創造神エリスから直々に使命を受けた勇者の存在が、エリス教会の首脳陣の危機感を煽り、エリス教会を全面的に支援しているティーラム帝国が動き出すことになったとのことだった。今のうちに武力を使って、自分たちの陣営に俺たちを引き込もうとしているのだという。


「こちらの外交筋では、各国ともどちらかといえば帝国寄りですが、それでもできるなら、派兵などはしたくないようです」


 グレーテルお嬢様が質問する。


「つまり、大勢が決するまでは軒並み静観するということじゃな?」

「多分そうでしょう。但し、帝国に隣接する小国などは、すぐに帝国に従うしかないでしょうが・・・」


 ブロンベルク侯爵が言う。


「帝国に従ったほうがいい。こういう時だからこそ、早めに態度を示すことで帝国への覚えがよくなるぞ」


 会議は続く。

 俺の意見である積極的に停戦を促すことに賛成してくれているのは、グレーテルお嬢様とその派閥の貴族たち、帝国派がブロンベルク侯爵とその派閥、半数近くは日和見を決め込んでいる。


 国王陛下が言う。


「とりあえず、各案の詳細を検討することにして、一旦は閉会とする」



 ★★★


 会議終了後、俺たちはグレーテルお嬢様と王太子殿下に呼び出された。

 王太子が言う。


「実はブロンベルク侯爵は帝国と通じているという情報があるのだ。だから、帝国寄りの意見になってしまう。それを把握している父上は、あの場で勇者殿の意見に賛成しなかったのだ」

「そうなんですね・・・」

「それと、グレーテルの呪いも襲撃事件も、奴が裏で手を引いているのは間違いない。ただ、証拠はないが・・・」


 国王陛下が、態度を明確にしなかったのは、ブロンベルク侯爵に手の内を明かさないためだった。


「案を出した私が言うのもアレですが、具体的にどうすればいいのでしょうか?」


「賛同してくれる国を増やす。目星はついているがな」


 グレーテルお嬢様が言うには、ほとんどの国が日和見を決め込んでいる。明確にこの案に賛成してくれるのは、当事者の獣王国、エルフの国、そしてドワーフの国らしい。


「まずは、エルフの国にこちらの意向を伝える。今までの関係性から、賛同はしてくれるじゃろう。次にドワーフの国じゃが、こちらは何とも言えん。頑固な奴らじゃかならな。そして、エルフとドワーフの賛同が得られたら、それをもって、獣王国に条件を提示する」


 カヨさんが言う。


「ということは、すぐにエルフの国に向かうということで、いいのでしょうか?」

「そうなるな・・・」



 次の日には、俺たちは出発した。ショウタ君は居残りだ。パメラさんの許可もあるが、不測の事態に備えて、勇者の一人を王都に残したいという思惑もあった。


 エルフの国に着くと、いつもどおり大歓迎をしてくれた。早速、宴を開いてくれる流れになったので、グレーテルお嬢様が事情を説明する。


「なるほど・・・そういった事情があるんですね・・・分かりました。すぐに緊急会議を開きます」


 族長のエルノールさんはすぐに対応してくれた。

 会議には俺たちも、サチコさんも参加することになった。サチコさんが言う。


「その何とか帝国とかいう舐めた奴らだが、いっそのこと滅ぼしてやったらどうだい?ケイスケならできるんじゃないか?」


 エルフたちも同調する。


「そうだ!!300年前の恨みを晴らしてやる」

「帝国の首都を更地にしてやりましょう」

「ケイスケ様ならできるでしょう?」


 できなくはない。

 でもやってしまったら、それこそ大量に人が死ぬ。帝国の考えには賛成できないが、それでも一般市民に罪はないはずだ。


 カヨさんが言う。


「流石にそれは・・・もしそんなことをすれば、恨みを買うだけです。エルフの皆さんは300年前のことを許せないかもしれませんが、今の帝国人はそんなことは覚えていません。最悪、報復合戦になってしまいます。それを繰り返すのが戦争ですからね」


「アンタの言うことは一理あるね。私としては、エルフたちに危害を加えられるようなことがあれば、帝国を滅ぼしてもいいと思っているけどね」


 エルノールさんが言う。


「停戦を望むシェーンブルグ王国には賛成します。ただし、こちらも条件があります・・・」


 エルノールさんが出した条件は、エルフ奴隷の解放だった。

 グレーテルお嬢様が言う。


「交渉条件には入れる。しかし、あの帝国が呑むとは思えんが・・・」

「とりあえずはそれで構いませんよ。これからドワーフや獣王国とも交渉されるんでしょ?だったら、ドワーフや獣人の奴隷解放を訴えれば、交渉がやり易くなるのでは?」

「なるほど・・・そういった考えはなかったな」


 こうして、エルフの国との交渉は上手くいった。

 そして次の日には、ドワーフの国に出発した。ドワーフの国には、エルノールさんとサチコさんも同行することになった。ドワーフは気難しい種族なので、仲介に入ってくれるという。


「長い間エルフもドワーフも他種族と協力してきませんでした。しかし、それだけでは駄目だと思いましてね」

「アンタらが交渉に失敗したら、エルフにも被害が及ぶんだろ?だったら私も行くよ。今の私は、エルフたちが家族だからね」


 頼もしい。


 エルフの国からドワーフの国までは、3日程で着いた。

 エルノールさんが言うには、エルフとドワーフは定期的に取引しているようだ。


「こちらからは主にフルーツや木の実、キノコなどを輸出し、工芸品や武器、酒類を輸入しているんです。最近、果実酒の生産に力を入れているようで、フルーツの輸出が増えたんですよ」


 サチコさんも続く。


「宴会で飲んだだろ?あの果実酒は最近売ってくれるようになったんだけど、評判が良くてね。酒精の強い酒が好きなドワーフには珍しい酒なんだ。精霊たちも大好きだしね」

「聞いた話によると、200年ぶりに酒神様が誕生したとのことです」


 酒神様?


「酒神様というのは、新しいお酒を造った者に贈られる称号のことです。現酒神様は、歴代屈指の実力をお持ちだとか・・・」


 カヨさんが言う。


「それは楽しみですね」

「そうですね。飲んだことのないお酒が飲めるのも、旅の楽しみの一つですからね」


 グレーテルお嬢様が言う。


「お主ら、あまり浮かれてはならんぞ。ドワーフは人間嫌いで気難しいからのう。そんな浮かれた気分では、足元をすくわれるぞ」


 スプーンなだけにですか?


 とはツッコミを入れられなかった。


 でも、気を引き締めないといけないことには、違いないけどな。

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