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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第一章 勇者として

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21 きな臭い動き

 こちらの世界に来て、2年が経った。

 相変わらず、同じような活動を続けている。変わった事と言えば、活動範囲が広がったことだろうか。頻繁にエルフの国やサクラさんがいるオーベルト男爵領に行くことも多い。

 エルフの国に行くときは、サクラさんご一家も同行することが多く、サクラさんが作ったうどんをサチコさん以下、エルフたちが絶賛していたけどな。


 また、近隣諸国を巡ることも多くなった。

 グレーテルお嬢様と王太子殿下の婚約が正式に発表されたので、挨拶回りという体で、積極的に外交をしている。

 俺のスプーン曲げは、どこに行ってもウケるので、俺も外交に一役買っていると言っても過言ではない。


 まあ、周辺諸国との関係がよくなれば、必然的に平和になるし、これも勇者の務めなんだと思う。


 ★★★


 ある日、グレーテルお嬢様から呼び出しを受けた。

 雰囲気的にかなり深刻な状況のようだ。一緒に呼び出しを受けたカヨさんとショウタ君にも緊張が走る。

 近々戦争が起きるかもしれないという。


 この大陸では最強の軍事国家ティーラム帝国と獣人の国である獣王国とが、小競り合いを繰り広げているのだが、ティーラム帝国がこの度声明を発表したらしい。それは創造神エリスの名において、人間族の総力を上げて獣王国を滅ぼすというものであった。


「シェーンブルグ王国は、この二ヶ国の争いに首を突っ込まず、不干渉の態度を貫いてきたが、そうもいかなくなったのじゃ」


 グレーテルお嬢様が言うには、ティーラム帝国からどちらの陣営につくか、決断を迫られているという。


「ティーラム帝国に従った場合、獣王国討伐のための派兵、国内にいる獣人をすべて奴隷化しなければならん」


 そんな非人道的な政策なんて、できるわけがない。


「もし従わなければ、人間族の総力を上げて獣王国諸共、シェーンブルグ王国を滅ぼすと言ってきた。それで、我が国の上層部は揺れておるのじゃ・・・」


 俺たちを戦力としてカウントしない場合、圧倒的にティーラム帝国が軍事的に上だという。では、長い物に巻かれろ的にティーラム帝国の味方をすれば、折角交流を持ったエルフとの関係が途絶えてしまう。なんたって、ティーラム帝国はエルフの森を焼き討ちにした過去があるからな。それに奴隷にする対象にエルフも入っているしな。


「貴殿らには日頃から、わらわたちの外交活動を手伝ってもらっておるが、最悪の結果になってしまい、申し訳ない」


 グレーテルお嬢様が積極的に外遊をしていたのは、こういった事態に陥らないようにするためだった。


 カヨさんが質問をする。


「創造神エリスの名において、獣王国を滅ぼすと言っているのですよね?創造神エリスとは、何度かお会いしましたが、そんなことは一言も言っていなかったと思うのですが・・・」

「それはエリス教会の奴らが神託という形で、そういう教義を広めたのじゃ。獣人もエルフたちも創造神エリスではなく、精霊を信仰しておるからのう。教会の奴らは、それが気に食わないのかもしれんな」


 教会の奴らは、自分たちの都合がいいように教えを捻じ曲げたのだろう。いくら馬鹿女神でも、他種族を弾圧するようなことは言わないだろう。それに聞いたところ、馬鹿女神自体がこの世界に降臨することなんて、100年に1度くらいの出来事らしいので、真実を確かめるすべもないから、言ったもん勝ちと思っているのかもしれない。

 しかし、あの馬鹿女神を信仰しているなんて、この世界の人間は一体何を考えているんだろうか・・・


「その辺の事情は別にして、喫緊の対策を取らねばならん。貴殿らにも関係することじゃから、午後からの戦略会議に出席するように。意見も自由に言ってよいとのことじゃ」



 ★★★


 国王陛下を筆頭にした国の主要人物が集められた戦略会議が始まった。

 最新の情勢について、宰相が説明を始める。説明によると獣王国からも帝国と同じように「ウチの陣営に入ってほしい」との要請が届いているという。


「つまり、あちらを立てれば、こちらが立たずという厳しい状況なのです」


 宰相の説明の後に最初に発言したのは、ブロンベルク侯爵だ。あのコローナ嬢の父親だ。


「宰相殿、そんなことは簡単だ。帝国に味方をすればいい。真っ先に派兵すれば、帝国の覚えもよく、我がシェーンブルグ王国も繁栄間違いなしだ」


 これにはグレーテルお嬢様が反論する。


「国内にいる獣人や亜人たちはどうするのじゃ?それに折角交流を持ち始めたエルフとの関係も終わってしまうぞ」

「亜人や獣人など、この際切ってしまえばいい。それにエルフなど・・・そうか!!グレーテル嬢は自分の手柄を奪われたくないのだな?」

わらわの手柄など、どうでもよい!!国内の亜人や獣人たちが一斉に反乱すれば、誰が抑えるのじゃ」


 堪り兼ねた国王陛下が、宰相に話を振る。


「私と致しましては、多角的に情報を分析し、各国の情勢を見極めて、的確な措置を講ずることが・・・」


 難しいことを言っているが、一言で言うと結論を出したくないと言っている。


 ここで国王陛下が、思いも寄らないことを言いだした。


「ここは勇者殿の意見を聞いてみよう。ケイスケ殿、どう思う?」


 国王陛下は強かだ。

 こういったことを想定して、俺たちを呼んだのだろう。いくら会議をしても決まらないことは最初から分かっている。だったら、最終的に「勇者がこう言ったので・・・」、という感じで責任を回避しようとしているんだろう。


 正直に意見を述べる。


「創造神エリス様は、他種族を弾圧することは望んでおられないと思います。何度も接してきた私が言うのですから、間違いありません。私の提案ですが、シェーンブルグ王国は中立の立場を取り、外交努力によって、ティーラム帝国と獣王国との停戦を目指すのが・・・」


 言い掛けたところで、ブロンベルク侯爵に遮られた。


「何を甘っちょろいことを言っているのだ?貴殿の頭はお花畑か?」


 それはそう思う。

 だが、どちらかの味方をするかなんて、俺には決められない。政治家が曖昧な答弁を繰り返す理由も分かった気がした。


 宰相が言う。


「陛下!!これはいい案かもしれません。私はケイスケ殿の案に賛同いたします」


 予想外の人物が賛成してくれることになった。

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