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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第一章 勇者として

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20 今後の活動

 エルフの国から帰還した俺たちだが、国王陛下から大絶賛された。

 なんと俺とカヨさんとショウタ君は騎士爵に任じられた。これで俺たちも貴族の仲間入りだ。まあ騎士爵は一代限りだし、貴族としての面倒ごとは増えるんだけどな。


 そしてグレーテルお嬢様と王太子殿下は正式に婚約した。

 エルフとの難しい交渉を成立させた功績が認められてのことだ。従者のアルフさんや護衛騎士のアンヌさんは、涙を流して喜んでいた。

 それに実家であるアルトナー伯爵は侯爵に陞爵した。これで、散々グレーテルお嬢様に意地悪をしていたコローナ嬢の実家であるブロンベルク侯爵家と同じ爵位となったので、不当な扱いを受けにくくなるだろう。

 因みにグレーテルお嬢様への襲撃事件の黒幕は、ブロンベルク侯爵家だと言われている。証拠不十分のため、今のところ何もできないけどな。


 それと、グレーテルお嬢様の呪いを解く鍵は見つかっていない。長命のエルフに聞いたが、あまりいい情報は得られなかった。

 エルノールさんから聞いた話だが、世界のどこかにいるというハイエルフの姫ならば、呪いを解けるかもしれないという。ただ、長老クラスのエルフでも会ったことはなく、実在しているのかどうかも分からないそうだ。


「ケイスケよ。気にすることはない。気長に見つければよい。見つからなくてもわらわは構わん。国のために働くだけじゃからな」


 それでも何とかしてあげたい。


 そんな思いを抱えながら、今後俺たちはどうすればいいのかという話になった。

 まず、残り3人の転生者だが全く手掛かりはないし、神器を使っていない以上、戦闘力も期待できない。彼らが困っているなら救ってあげたいとは思うが、俺たちではどうにもできないしな。


 となると、今までと同じような活動になるわけだが・・・


 カヨさんが言う。


「私は「大いなる悪」を打ち倒すことも大事だと思いますが、目の前の困っている人を助けていくことも勇者の使命だと考えています。「小さいことからコツコツと」と言いますし・・・」


 どこかのベテラン芸人も、そんなことを言っていた気がする。


 ショウタ君も意見を言う。


「食べ物で人を幸せにするのはどうかな?実は最近、パメラがサクラさんと連絡を取りあって、王都への出店計画を進めているんだ。美味しい物を食べれば、大いなる悪も馬鹿らしくなって、悪い事をやめるんじゃないかな?」


 色々と意見が出たが、そもそもの話、女神が俺たちに丸投げしてきたことが原因だ。ゲームや小説なら明確な敵がいて、それを倒すために勇者が頑張るのが普通なんだが・・・


 グレーテルお嬢様が言う。


「難しい問題じゃな。シェーンブルグ王国の為に働いてもらうことが、世界の平和につながると自信を持って言えればいいが、そうもいかん。それぞれの国はそれぞれの正義があるからのう。幸い国王陛下も王太子殿下も人の道に外れるようなことはせんから、そこまで心配はしておらんが・・・」


 地球を含めて、戦争が起き続ける原因はここにある。

 何が正義で何が間違っているかなんて誰も分からない。


「そこでじゃ。今後は魔物の被害に苦しんでいる国民や貧困に喘ぐ人々、孤児たちを救済していこうと考えておる。それならば、他国と利権を巡って争うこともないからな。それで良いか?」


 これには三人とも同意した。

 孤児たちを助けて文句を言ってくる国はないだろうし、もし文句を言ってきても、相手にしなければいい。


「では今までどおりに活動して、突発事案が起これば対応する。今回の会議はこれで終了じゃ」



 会議が終わり、三人で話し合った。

 カヨさんが言う。


「結局何も決まりませんでしたね」

「そうですね。私としては、このまま頑張っている姿勢だけ女神に見せて、のんびり暮らすのもいいかもしれないと思ってしまいます」

「それもそうですね・・・」


 ショウタ君も続く。


「俺は世界の平和や「大いなる悪」よりも、パメラや子供たちのほうが大事だな。サクラさんだって、サチコさんだってそうだろうしな」


 ショウタ君の言うとおりだ。

 何も自分から進んで、もめごとに首を突っ込むこともない。


 カヨさんが言う。


「私も同意見です。それでなんですけど、サクラさんが出店する王都のうどん屋さんに協力しませんか?私たちがPRすれば、集客はばっちりだと思うんですよ」


「カヨさん、ありがとう。パメラも喜ぶよ」



 ★★★


 サクラさんが出店するうどん店への協力は、すぐに承認された。

 グレーテルお嬢様が言うには、サクラさんは勇者の公認は見送られたが、勇者候補であることに変わりはないので、シェーンブルグ王国としても恩を売ることにしたそうだ。


 正式に承認されてから、カヨさんは嬉しそうに仕事をしていた。

 妊婦であるサクラさんやパメラさんに代わって、大車輪の活躍だった。カヨさんが言う。


「ここに来る前、初めてプロジェクトを任されていたんです。忙しかったけど、充実してました。今でも心残りなんですよね。初めて企画書が通った時は、本当に嬉しかった・・・だから、この世界でもそういった仕事をしてみたいと思っていたんです」


 俺も入社したてのころは、そんなことを思っていたな。

 20年近くサラリーマンをやっていると、そういう気持ちも無くなってくるんだよな・・・


「ケイスケさんはやりたい事とか、ないんですか?どうせなら、こっちに世界でもやりたい事をやりましょうよ。もしかして、スプーン曲げですか?」


 やりたい事か・・・

 スプーン曲げをやりたいわけじゃないんだけどな・・・


「そうですね・・・長年サラリーマンをしていると、自分が何をしたいのか分からなくなります。日々の仕事をこなすだけでしたからね。ただ、グレーテルお嬢様やお世話になった人を笑顔にしたいとは思います。具体的に何をすればいいかは、思いつきませんが・・・」


「ケイスケさんはそれでいいと思います。じゃあ、とりあえず、集客をお願いしますね」


 そうして、俺は衣装に着替え、スプーンおじさんとなって、今日もスプーンを曲げるのだった。


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