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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
プロローグ

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2 聖なるスプーン

「聖なるスプーン」


 これなら「神聖な鉄パイプ」のほうがまだマシだ。最後はネタ切れ感が強く、もはや「やっつけ仕事」レベルだ。到底、神様の仕事とは思えない。

そんなことを思っていたら、不良っぽい少年が怒鳴り散らした。


「おい、テメエ!!神様か何か知らないけど!!元の世界に帰せよ!!俺は見てのとおり不良だけど、何とか頑張って就職したんだ。これから迷惑を掛けたお袋に楽をさせてやろうと思っていたのに・・・なあ、頼むから帰してくれよ」

「ご希望に添えず、申し訳ありません。貴方のご活躍を心から・・・」

「テメエ!!この野郎!!」


 女神を遮り、少年は女神の胸倉を掴んで怒鳴る。女神もこれにはキレた。


「何やってんだテメエ!!私が創造神エリスって知ってのことか?やるならやってやるよ、コラ!!」

「エリスなんて知らねえよ!!女に手を上げる趣味はねえけど、そっちがその気なら・・・」


 この女神、二重人格か?


 俺とOL風の女性は二人を止めに入った。


「落ち着いてください!!まずは冷静に話しましょう!!」


 二人を分けて事情を聞く。

 少年の言い分は理解できる。俺だってショックを受けているし、女神に対して、もう少し心のケアをしてくれればとも思う。

 一方女神のほうだが、こちらは情緒不安定だ。泣き出している。


「私だって、頑張っているのよ・・・100人から急に8人増えたんだから、ネタも切れるわよ。仕事はこれだけじゃないし、誰も私のことを手伝ってくれないし・・・最近思うのよ。世界なんか滅んじゃえってね」


 最近うつ病で入院した、我が社の女性課長も同じようなことを言っていた。多分、苦労しているのだろう。ここは少し優しくしたほうがいいかもしれない。


「女神様の苦労もお察しいたします。大変なお仕事をされているのでしょうね?」

「そ、そうなんです。詳しくは言えませんが、責任の重い仕事をしていますので」

「でしょうね。私でよければ、お話くらいは聞きますよ」


 それから女神の愚痴を散々聞かされた。

 神様界隈も意外にドロドロしているんだな・・・


 少し落ち着いたところで、こちらの要望も伝える。


「女神様の置かれている立場もよく分かりました。僭越ながら申し上げますと、我々も不安なんです。こちらの少年のことも理解してもらえませんか?」

「そうですね。申し訳ありませんでした。もっと詳しく状況を説明すれば、よかったですね」


 少年が言う。


「俺も悪かったよ。戻れないなら仕方ない。できればお袋のことを頼むよ」

「地球を管轄する神に伝えておきます」


 何とか治まった。

 ここで少し閃いた。この女神なら、交渉次第で神器を交換してくれたりしないだろうか?


「女神様、少し私の話を聞いてもらえないでしょうか?というのも、私たち三人がいただいた「神器」は、そ、その・・・言いにくいですが、使えない感じがして・・・できれば交換をお願いしたいのです」

「貴方たちに苦労を掛けることになるのは十分理解しています。ですが登録の関係で変更はできないのです。代わりと言ってはアレですが、お三方にはスキル1ではなく、スキル5からスタートしていただくことにします」


 女神が言うには、神器にはスキルレベルがあるようで、スキルが上がるごとにさまざまな能力が付与されるようだ。俺たちに付与された能力は次の5つ。


 1 自由に神器を出したり、異空間に収めたりできる。

 2 ある程度の大きさまで、自由に大きさを変えられる。

 3 ある程度は、形状を変えられる。

 4 スキルレベルによって、出せる本数が増える。今のところ10本まで。

 5 材質が選べる。スキルによって使える材質は増えていく。今のところ、木、鉄、鋼鉄。


 因みにスキルは使えば使うほど、経験値が溜まって、スキルレベルが上がるようだ。

 ここでOL風の若い女性も女神に質問する。良い質問だった。


「女神様。ところで、「使命」とは何なのでしょうか?それに「大いなる悪」って?」

「言ってませんでしたか?」

「はい、聞いてません」


 俺も少年も聞いていないことを伝える。


「まず貴方たちがこれから行く世界は、種族間の争いが絶えず、貧富の差が広がっています。多分、姿の見えない「大いなる悪」が居て、裏で世界を混乱に陥れようとしているのだと思います。なので、皆様には世界が混乱している原因を突き止め、世界を平和にしてもらいたいのです」


「何となくは理解しました。それで差し出がましいようですが、私たちより先に転移した人たちにも伝えたほうがいいのではないでしょうか?皆さん、何をしていいか分からないでしょうし、それに「高枝切りバサミ」の女性なんかは、激怒していましたから」


 女神は悩む。


「どうしましょうねえ・・・一人一人会いに行くのも面倒ですし・・・」


 おいおい!!そんなの相手に聞かれたら、激怒されるどころじゃ、すまないぞ!!

 そもそも、お前が伝え忘れたんだろうが!!俺の部下だったら、殴ってるぞ!!

 それは止めておこう。パワハラだし・・・


 仕方なく提案する。


「それぞれにお手紙をお送りするというのはどうでしょうか?「使命」や「大いなる悪」についての概要の他にスキルの説明なんかも記載しておけば親切かもしれません」


 OL風の女性が賛成してくれる。


「なる程ですね。私も仕事でミスしたときは、直接謝りに行く前に取り急ぎメールを送りますからね」

「ですよね。これでも私は係長でしたから、失敗した部下と一緒に謝りに行ったりしましたね」


 少年も会話に入ってくる。


「社会人って大変なんだな」

「大変だよ。とにかく頭を下げっぱなしだ」

「俺にできるかなあ・・・」

「家族の事とかを思い浮かべながら、耐えればいいんじゃないか?俺もそうやって・・・」


 言い掛けて気づいた。もう俺たちは戻れないんだと・・・


「もう戻れないんですね・・・」

「最後にせめて、お袋に「ありがとう」って言えばよかった・・・」


 しんみりとした空気の中、女神は言った。


「手紙とは気づきませんでした。貴方たちは、そういった経験があるようですね?お手伝いをお願いしても?」


 この女神は、本当に空気の読めない奴だな!!



 謝罪の手紙の作成を手伝わされた俺たちは、女神から金貨10枚を貰った。金貨1枚が日本円で約1万円らしく、手紙の作成を手伝っただけで、約10万円も貰えたのはラッキーだったと思う。


「私は杉本佳代すぎもとかよって言います。えっと・・・」

「私は須崎啓介すざきけいすけです。またご縁がありましたら、その節はよろしくお願いします」

「こちらこそ、お願いします」


 少年も会話に入ってくる。


「俺は鈴木翔太すずきしょうた。向こうに行ってもよろしくな。須崎さんのお陰で何とかやって行けそうだよ。ステーキナイフでも大きくして、切れ味を鋭くしたら、魔物とも戦えそうだよ」

「私もです。槍っぽく使えば、何とかなりそうですしね」


 俺は少し落ち込んで言う。


「逆に私は途方に暮れています。いくら大きくしたところで、スプーンはスプーンですし・・・どうやって戦えばいいのやら」


「それはそうですね・・・使い方が難しいですよね」

「投げるとかどうかな?駄目か・・・スプーン投げて何になるんだって話だし」


「気を遣っていただいて、ありがとうございます。まあ、何とかしてみますよ」


 そんな話をしていたところで、またしても空気の読めない女神が言う。


「勇者たちよ!!旅立ちの時です。さあ、世界を救うのです!!」


 今更、女神面しても遅い!!それに勇者って何だよ!?

 そんな設定なかったし、絶対に今決めたよな!?


 そんなことを思っている内に、俺たちは転移させられたのだった。

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