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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
プロローグ

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1 プロローグ

短編作品を連載に切り替えました。

93話で完結となります。

 ここはどこだ?


 神殿のような場所。神殿といっても日本の神社のような場所ではなく、古代ギリシア風の建物だ。そこに女神のような美しい女性。その周りには大勢の人が集まり、人だかりができている。


 ふと周囲を見ると、電車で隣の席に座っていたOL風の若い女性がいた。

 彼女も俺に気付いたようで、軽く会釈をして声を掛けてきた。


「これって・・・アレですよね?」

「そうですね。天国だといいんですけどね」


 俺は須崎啓介すざきけいすけ、しがないアラフォーのサラリーマンだ。営業先に電車で移動中、何かの事故で電車が横転したまでは覚えているが、その後の記憶がない。多分、死んだのだろう。そして、ここにいる者たちは皆、あの時、電車に乗っていた乗客だろう。


 そんなとき、女神のような美しい女性が厳かな声で、話し始める。


「私は創造神エリス。貴方たち108名は、残念ながら命を落としました」


 全員に動揺が走る。

 予想していたことだけど、改めて聞くとショックだ。隣のOL風の女性は目に涙を浮かべている。


「これから皆さんには別の世界で、使命を果たしてもらいます。それでは、順番に神器を授けます。神器とは()()()()()のことです。そして、大いなる悪を討ち倒すのです!!」


 順番に女神様が神器を渡して、貰った者から順に異世界に送られていく。


 それにしても事務的すぎないか?

 ラノベなんかだと、もう少し説明があるはずだ。それに使命って何だ?

 それくらいは説明してもらわないと、使命の果たしようがない。


 目の前では、女神が神器を事務的に配り、「期待しています」「応援しています」などの言葉を使い回しながら、流れ作業で神器を受け取った者を転移させている。


「こちらは、「聖なるスコップ」です。貴方の活躍を期待しています。次の貴方は「神聖なツルハシ」です。頑張ってください・・・」


 何となくだが、この女神のことが分かってきた。一言で言うと、「駄女神」だ。


 まず渡している神器だが、最初は「何物も斬り裂く剣」、「何物も貫く槍」といった、「これぞ神器!!」といった物を渡していた。しかし、50人目を超えたあたりから、「切れ味鋭い剣」や「貫通力の高い槍」などの「なんか被ってないか?」、「最初の神器の下位互換?」みたいな武器が登場する。70人目を越えた辺りからは、「聖なる○○」や「神聖な○○」が登場し、


「そもそも最初に「神器は聖なる武器」って言ってなかったか?それに「聖なる」も「神聖な」も同じ意味だろうが!!」


と思わず、ツッコミを入れたくなる。


 だんだんと「それって武器なのか?」という物が登場する。「ハサミ」「剪定バサミ」と続き、「高枝切りバサミ」まで登場する。そして今、「高枝切りバサミ」を貰ったおばちゃんと少しトラブルになっている。


「ちょっと、「高枝切りバサミ」って何なのよ。これで何をしろって言うのよ?」

「こちらの「高枝切りバサミ」は高性能で、伸縮自在、普段は普通のハサミとしても、ご利用いただけます」

「私はね、そういうことを言っているんじゃないのよ!!性能に文句をつけたんじゃなくて、そもそもの話・・・」


 言い掛けたところで、女神は強制的におばちゃんを転移させた。


「ご満足いただけたようですね。頑張ってください」

(ごちゃごちゃうるせえんだよ・・・クソババアが・・・)


 今、小声で「クソババア」って言わなかったか?

 心の声が聞こえたのは、俺だけか?


 しかし、これは大きな効果があったようで、これ以後、文句を言う者はいなくなった。


 その後も女神の蛮行は続く。

 「ママ!!どこ!?」と泣き叫んで母親を探す幼女を問答無用で転移させ、90人目を越えたあたりから面倒臭くなったのか、3人~5人一編に神器を渡して転移させるようになってしまった。


「それぞれ「よく切れるカッターナイフ」、「切れ味鋭いメス」、「神聖な鉄パイプ」です。皆さんのご活躍をお祈りしています」


「神聖な鉄パイプ」って何だ?

 ただの鉄の棒だろうが!!


 とうとう俺の番になった。残っているのはOL風の若い女性と少し不良っぽい少年だった。

 不良っぽい少年には「聖なるステーキナイフ」、OL風の若い女性には「聖なるフォーク」、そして俺には・・・


「聖なるスプーン」


 スプーンだって!? もはや、武器とかいう問題じゃないだろ!?

 これで「世界を救え」って、ギャグか?

 スプーンなだけに・・・


 こうして俺は、使命が何かを説明されないまま、神器を授けられたのだった。

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