18 伝説の巫女
鈴木幸子、48歳。
彼女が俺たちが探していた勇者だ。サチコさんから事情を聞く。
「こっちも最初は大変だったよ。森の中に転移したからね。運よくエルフたちに保護されたんだけど、エルフは人間嫌いが多くてね。最初は囚人のような生活をしていたんだ」
族長のエルノールさんがサチコさんに謝罪する。
「申し訳ありません。サチコ様が伝説の巫女だとは、思いもしませんでしたから・・・」
「もう気にしちゃいないよ。アンタらの歴史を聞くと、そうされても仕方なかったと思うし、今ではこれ以上ないくらい、よくしてもらってるしね」
「そう言ってもらえると有難いです」
それからのサチコさんの話をまとめると、徐々にサチコさんの為人が分かってきたエルフたちは、危険性がないと判断し、居住区で作業でもさせてみようという話になった。そうしてサチコさんは神器である「高枝切りバサミ」を使って、剪定作業を始めることになったという。
「サチコ様には大助かりですよ。世界樹の剪定作業なんて、木に登るだけで、3日掛かったりしますからね。木から落ちて大怪我するエルフも多かったですし・・・それにサチコ様は精霊様に気に入られてますしね」
精霊様というのは、サチコさんに群がっている緑色の幼女たちらしい。世界樹には精霊が住み着くようで、丁寧な剪定作業をしてくれているサチコさんを気に入ったそうだ。
毎日のように剪定作業をしているから、サチコさんはスキルレベルが高かったんだな・・・
精霊の一人が言う。
「サチコが来てから、本当に気持ちがいいんだ。エルフに頼んだらやってくれるんだけど、怪我をさせてしまうから、頼みづらくてね・・・」
ここでカヨさんが質問をした。
「ところで、伝説の巫女というのは?」
「それはエルフの古い伝承にある世界樹を守護する者のことです。具体的なことは古い話なので、よく分かっていませんが、サチコ様は誰よりも世界樹の管理に長け、精霊様とも仲が良いので伝説の巫女に認定したのです」
エルフ版の勇者みたいなものだろう。
「今日は宴を開きます。準備がありますので、宿泊場所に案内しますから、そこでしばらく休んでいてください」
★★★
宿泊場所について、今後の方針について話し合った。
グレーテルお嬢様が言う。
「この状況で、サチコを無理やり勇者としてシェーンブルグ王国に連れ帰ることはできん。それこそ、国際問題になるぞ」
「そうですよね。そもそも勇者の活動自体が曖昧で、何をしていいか分かりませんから、こちらに来てもらうメリットもないでしょうしね」
文官の代表者も意見を言う。
「こちらとしては、サチコ様が我が国に害をなす存在でなければ、最悪放置しても構いません。できれば、エルフたちと交流を深められたらとは思いますが・・・」
それは本音だろう。
俺を勇者にしたのも、一番は危険を回避するためだ。それにエルフの商品は魅力的だから、交易ができればと思っているのだろう。
「いずれにしても、今後はエルフの心象を良くしていくしかないな。ということで、ケイスケよ。任せたぞ」
宴→「ケイスケに任せる」→もうアレしかないな・・・
宴が始まる。
ある程度場が盛り上がったところで、俺が衣装に着替えて登場する。
「僕はスプーンおじさんだよ。そしてこっちが・・・」
「私はフォークお姉さんだよ・・・」
旅の恥は搔き捨てということで、カヨさんもフォーク芸を披露することになった。今回が初ステージだ。まだまだ、恥ずかしさが抜けてないようだったけど。
そこからはいつも通りに盛り上げた。
特にエルフの子供たち、それに精霊様も絶賛してくれた。
「凄い!!」
「面白いなあ・・・」
「じゃあ、これが最後だよ。箱の中に入れたスプーンが・・・」
箱の中に入れたスプーンが、フォークに代わるという手品だ。俺のスキルとカヨさんのスキルでやっているだけだけどな。
これも非常にウケた。
グレーテルお嬢様も満足してくれた。
「ケイスケよ、今日もよかったぞ。それにカヨ、貴殿もなかなかのものであった。まあ、口からスプーンを出すかもしれないと思って、冷や冷やはしていたがな・・・」
グレーテルお嬢様・・・それってフリですか?
そんな感じで、エルフの心象も良くなり、またここに来ることを承諾してくれた。もちろん、次に来た時も、スプーンを曲げをするということを約束させられた。
★★★
エルフの国から帰還して2ヶ月、再びエルフの国に出発した。
今回は、王太子殿下も同行する。国王陛下の命を受け、正式にエルフの国と国交を開くことになったようだ。
それに今回はショウタ君も参加する。というのも、危険性がないと分かったので、パメラさんと子供たちもエルフの国に同行することになったからだ。
「ショウタの国には、新婚旅行という文化があるんだってね?」
「そうだよ。結婚式からの新婚旅行が定番さ」
「そう言えば、式も挙げてなかったね?」
「近々挙げよう。お金も大分溜まったしな・・・」
最初は反対していたショウタ君だが、パメラさんたっての希望で同行することになった。パメラさんが妊婦だからだ。でもこれは解決した。
俺が巨大なスプーンを出現させ、そこにパメラさんと子供たちに乗ってもらう。スプーンを橇代わりにショウタ君が引っ張って進む。
「ショウタ君、大丈夫かい?代ろうか?」
「大丈夫だよ。最近凄く体力がついてきたんだ」
多分、鬼の解体作業でスキルレベルが上がったのだろう。スキルレベルの上昇に付随して、基礎体力も上がるからな。ショウタ君に抜かれる日も近いかもしれない。俺も負けないようにスプーンを曲げないとな。
そんなことを思いながら、俺たちはエルフの国を再び目指したのだった。
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