17 エルフの国へ
ようやく、エルフの国に出発できることになった。
ここまで時間が掛かったのは、エルフの国とは国交がなく、エルフも排他的で交渉が難航したからだ。行商人をしているエルフに商業ギルドを通じて仲介を頼み、やっとエルフの国に入国することが許可された経緯がある。
今回の遠征のメンバーは俺とカヨさん、グレーテルお嬢様と従者のアルフさんとアンヌさんを筆頭にした護衛の5名、シェーンブルグ王国から文官が5名同行する。これに案内役のエルフの行商人であるラドリフさんを加えたメンバーだ。文官が同行している理由は、シェーンブルグ王国がこの機会を利用して、エルフと交易しようと考えているからだ。
エルフの商品は高値で取引されているからな。
その辺は抜かりはないようだ。
因みにショウタ君は、不参加だ。
1ヶ月以上の遠征になるので、パメラさんの許可が下りなかったようだ。代わりに大量の解体をさせられることになった。少し可哀想に思う。
出発前に案内役のラドリフさんが説明をしてくれる。
「エルフの国に住んでいるエルフたちは、かなり閉鎖的です。それに人間に対して、悪感情を持っています。というのも、300年前にエルフの森を焼き討ちにしたことを今でも許していません。貴方たちは忘れてしまっているかもしれませんがね」
エルフは長命で寿命は個人差があるが、300年から500年と言われている。当時を知るエルフも多くいるらしい。人間と交流を持つエルフは、比較的若い者か、当時の人間が全員死んでいるから、過去のことをあれこれ言っても仕方がないと思っている者たちのようだ。ラドリフさんは後者らしい。
「ですので、敵意を剥き出しにする者もいるかもしれませんが、我慢してください」
カヨさんが言う。
「そんな環境で生きていくのは辛いですね。彼女はちゃんと生活できているのでしょうか?心配です」
俺もそう思う。
「高枝切りバサミ」のおばちゃんだって、俺たちと同じ馬鹿女神の被害者だし、何とか助けてあげたい。
俺たちは若干緊張をしながら、エルフの国に向かうことになった。
★★★
エルフの国は、大森林(通称エルフの森)の中央に位置している。
この大森林は強力な魔物が出現するし、結界が張られているので、エルフの案内なしではエルフの国にたどり着けない。
エルフの国を侵略しようとした当時の侵略国家が、「大森林を抜けられないなら、森ごと焼き払ってしまえ」と思って焼き討ちにしたそうだ。結局、エルフとエルフに賛同する国々の激しい抵抗に遭って、作戦は成功しなかったようだが・・・
そんな歴史があるので、エルフの中には人間を激しく憎んでいる者も多いらしい。
大森林を奥へ奥へと進むこと2週間、ようやくエルフの国に到着した。
ラドリフさんが言う。
「もうすぐで、エルフの居住区に到着します。絶対に敵対行動はしないでください。信じられないくらい遠くから弓で射抜かれます。中には挑発してくる者もいるかもしれませんが、絶対に反抗しないでください」
これを受けてグレーテルお嬢様が指示を出す。
「武器を携行している者は、武器を外して、1箇所に集めろ。こちらに敵意がないことを示すのじゃ」
これにはアンヌさんが反対する。
「しかしお嬢様・・・もし何かあったら・・・」
「大丈夫じゃ。それに武器があったところで、この大森林ではエルフには勝てん。どの道、同じことじゃ」
グレーテルお嬢様は見た目は幼女だが、胆力がある。
王太子はグレーテルお嬢様にべた惚れだが、国王や国の重役たちはグレーテルお嬢様の能力を買って、王太子妃に押している。外交力、マネジメント力に加えて、胆力もあるからな。
頼もしい上司を持ったものだ。
サラリーマン時代なんて、責任を回避する上司ばかりだったからな。
それからしばらくして、エルフの居住区に入った。全員に緊張が走る。
しかし、予想外の展開を迎える。居住区の入口には横断幕が設置されていた。
ようこそ、エルフの国へ
歓迎!!勇者御一行様
すぐに族長と思われるエルフがやって来た。
「お待ちしておりました!!私は族長のエルノールです。何でも勇者様は、サチコ様の同郷の方だとか?ゆっくりして行ってくださいね」
住民も大盛り上がりだ。
カヨさんが言う。
「なんか歓迎されてませんか?」
「そうですね。多分サチコさんというのが、転移者でしょうね」
「雰囲気的にサチコさんは、エルフたちに受け入れられているようで安心しました」
そんな話をしているうちにグレーテルお嬢様とエルフの族長との間で話がついたようで、俺たちはすぐにサチコさんに会わせてくれることになった。
「現在、サチコ様は作業中です。そちらにご案内しますね」
居住区の奥に入っていく。
案内された場所には、雲より高くそびえ立つ大木があった。流石のグレーテルお嬢様も驚きの声を上げる。
「ま、まさか・・・これが伝説の・・・」
「そうです。世界樹です。結界を張っているので、外からは見えませんがね」
どうして彼らはここに案内したのだろうか?
その疑問はすぐに解消された。
黒髪の少しポッチャリしたおばちゃんが、「高枝切りバサミ」を使って、世界樹の剪定作業をしていた。その周りにはエルフたちと小さな緑色の肌をした幼女たちが、群がっている。
「こらこら、アンタたち危ないよ。後でアンタたちのもやってあげるから、大人しく待ってな」
「じゃあ、次は私ね」
「ずるいよ、私が先だよ」
「順番はジャンケンで決めただろ?順番を守らない子は、やってあげないよ」
どうやらかなり馴染んでいるようだ。
おばちゃんは、俺たちに気づいたようで、剪定作業を止めて近寄ってきた。
「話は聞いているよ。アンタたちも大変だったみたいだね」
これが伝説の巫女、サチコさんとの出会いだった。
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