13 勇者の使命
創造神エリスこと馬鹿女神が語った内容は、想像以上に衝撃的なものだった。
「えっ!!本当に8人しか残っていないのですか?108人もいたのに?」
「はい・・・」
「どうして、そうなったのですか?」
「それはですね・・・」
酷い・・・酷すぎる・・・
まず78名は転移先を馬鹿女神が間違えて砂漠や無人島、酷い人は海の上に転移させてしまったらしい。当然3日と持たず全員がこの世を去ったようだ。そして残りの22名は、普通に転移したが、貰った神器が優秀だったが故に調子に乗って、魔物と戦ったりして命を落としたそうだ。
いくら神器が優秀でも戦闘は素人だから、そうなっても仕方がない。俺は逆に「スプーン」という全く使えないと思っていた神器だからこそ、生き残ったのだろう。
「幸い命を落とした100名は、他の神々が新たな転生先を用意してくれることになりました。その点は心配いりません」
「心配いりません」って・・・すべてお前のミスだろうが!!
こんなの現代日本でやったら、謝罪会見どころじゃ済まないぞ!!
「それでこの件は神界で大問題となり、私は創造神を更迭されそうになっているのです。また下働きからやり直すのなんて絶対に嫌です。どうか助けてください」
どこまで自分勝手なんだよ!!
女神はドン引きしている俺たちを無視し、話を続ける。
「起きたことは後悔しても仕方ありません。まずは8人いる生存者の総力を結集し、「大いなる悪」を打ち倒すのです。それ以外に私が助かる道はないのです」
ここでカヨさんが質問をした。
カヨさんは戦闘もそうだが、いつも冷静だ。
「それで、私たち以外の5名の居場所は把握されているのでしょうか?」
「2名は把握していますが、残りの3名は把握していません・・・」
駄目すぎるだろ・・・
女神が言うには、神器を授けられた者が死亡すると、神器は天界に戻るようだ。天界に戻ってきていない神器が8個あるから、8名が生存しているとのことだった。
だったら見つかっていない3名の居場所も分かるだろうが!!
気持ちを落ち着けて、俺も女神に質問をする。
「どうして、3名の居場所が分からないのですか?」
「それは神器の使用歴が全くないからです。神器からでしか、居場所を把握できませんからね」
そもそもの話、何の説明もなく異世界に放り出された人の気持ちを少しは考えろと思ってしまう。
「分かりました。では2名の所在を把握されているのであれば、彼らと接触できるようにしてください」
「それは少し難しいですね・・・その内の一人は人間として終わっているので、全く聞く耳を持っていませんでした。もう一人は・・・接触自体してません」
頭に大量の「?」が浮かぶ。
詳しく聞いてみると、俺たちに会う前に一人と接触したのだが、接触した人物が「高枝切りバサミ」のおばちゃんだった。そして、そのおばちゃんに大激怒されて気持ちが折れてしまったようで、残りの一人とは接触せず、顔見知りの俺たちに接触してきたようだ。
「あのババアはクズです。もうクレーマーレベルですね。なので証拠保全のため、映像に記録したんです。見てもらえれば分かります。勇者以前に人として終わってます」
女神が魔法のようなものを唱えたら、映像が映し出された。
映像では、「高枝切りバサミ」のおばちゃんが、激しく女神を罵倒している。
「ふざけるんじゃないわよ!!アンタのミスでこうなったんだろうが!!困ったから助けてくれって、どの口が言ってるんだい?」
「そんなことを今言っても仕方ないでしょ!!世界の危機なんですから」
「大体、仕事が雑なのよ!!」
「こっちだって、忙しかったんです」
映像を見る限り、馬鹿女神が100パーセント悪い。
誰でもそんな態度を取れば怒るだろう。絶対に謝罪しに来た態度じゃないし、人に物を頼む態度でもない。
そこからは、おばちゃんの説教タイムに突入した。
「手紙を読んだけど、そもそも説明もなく転移させられるし、神器も神器で無茶苦茶じゃないの!!みんな困ってるわよ」
「108個も用意するこっちの身にもなってください。ネタだって切れますよ」
「だったら聞くけど、弓がないのはどうして?こんな「高枝切りバサミ」なんかより、弓のほうが武器でしょ?」
「それは・・・」
「それに全部の神器を見たわけじゃないけど、ほとんどがやっつけ仕事じゃないの。どうせなら「何物も切り裂く剣A」「何物も切り裂く剣B」とかにすれば、5種類くらいで何とかなったはずよ」
「それはそうですが・・・」
ここまで見てきて、おばちゃんは何一つ間違ったことは言っていない。
逆に俺たちが言えなかった心の叫びを代弁してくれて、胸がすく思いだ。
それにおばちゃんは、かなりできる人物のようだった。
馬鹿女神に説教するだけでなく、上手く交渉をしていた。
「やる、やらないは別にして、誠意は見せてもらわないとね」
「せ、誠意ですか・・・」
「慰謝料とかね・・・私がいないと世界を救えないんでしょ?」
「そ、それでは、金貨10枚でどうでしょうか?」
「それが貴方が言う誠意なのね・・・金貨10枚で命を懸けろと?」
結局、女神は金貨100枚を支払い、更に「高枝切りバサミ」をバージョンパップしていた。そして、最後にはオバちゃんに「誠意が足りない」と言われて、協力を断れていた。
映像を見終えた後、女神が俺たちに言う。
「こんな感じです。本当に創造神を何だと思っているんでしょう・・・」
冷静なカヨさんが質問をする。
「なぜ、この女性に真っ先に会いに行ったのでしょうか?転移させるときも、大激怒していたと思ったのですが・・・」
「それはですね。スキルレベルが一番高かったからです」
女神が言うには、神器のスキルレベルは上限が100で、「高枝切りバサミ」のおばちゃんが現在レベル88、続いて俺がレベル83、接触できてない、もう一人の女性がレベル61、ショウタ君がレベル44、カヨさんがレベル32だそうだ。
あれだけスプーンを曲げに曲げてきた俺よりもレベルが高いなんて、あのおばちゃんは、一体どんなことをしたんだ?
それは置いておいて、俺は提案をした。
「とりあえず、「高枝切りバサミ」の女性と接触できていない女性に接触しましょう。かなり高レベルのようですし。その二人の居場所を教えてもらえますか?こちらから、協力してもらえるようにお願いしてみます」
「貴方たちなら、そう言ってくれると思ってました。リストを渡しますので、頑張ってくださいね。それでは私は失礼しますね」
女神はリストを俺たちに渡すと、颯爽と去って行った。
とりあえず、リストを確認する。リストに紛れて別の書類も入っていた。
「あっ・・・これは・・・」
「始末書ですね」
始末書
この度は私のミスにより、短期間に大量の転移者を死亡させてしまったことをお詫び申し上げます。転移先を十分に確認することなく転移させ、更に十分な説明を転移者に行わなかったことがその原因です。
深く反省し、今後はこのようなことを犯さないように、細心の注意を払っていきますので、今回に限り寛大な処分をよろしくお願いいたします。
創造神 エリス
三人がつぶやく。
「俺の勤めていた会社なら、確実にクビですね」
「私の会社もですよ」
「社会人を経験してないけど、俺が社長でもクビにするよ」
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