12 勇者認定式
無事に討伐依頼は終わった。
ギルマスのスタンリーさんが言う。
「勇者様が、こんな規格外な奴だとは思わなかった。これは世界各地の冒険者ギルドに緊急通達する。「絶対に勇者様に逆らうな」とな。こんな事ができるなら、軽く国が滅ぶぞ・・・」
グレーテルお嬢様が言う。
「ギルマスよ。くれぐれもケイスケの能力については秘匿で頼むぞ。ケイスケを巡って戦争が起きるかもしれんからな」
「もちろんだ。こんなこと大ぴらに言えるわけがない。ただ、冒険者ギルドの上層部には報告をさせてもらう。勝手に勇者様と敵対されたら目も当てられないからな」
「うむ、シェーンブルグ王国としても、冒険者ギルドと敵対することは望んでおらん。それで公認のほうじゃが・・・」
「そんなの冒険者ギルドだけじゃなく、商業ギルド、薬師ギルド、鍛冶ギルドなんかの公認も取り付けてやるぜ」
何か凄いことになっている。
ショウタ君が声を掛けてくる。
「とういうか・・・俺たちいらなくね?あんなことできるなら・・・」
「そんなことはないよ。冒険者の経験もないし、戦闘経験も乏しいからね」
「それはそうだけど・・・」
「まあ、しばらくはよろしく頼むよ」
カヨさんも会話に加わる。
「ケイスケさんの能力を考えると、現地人をパーティーに加えないほうがいいかもしれませんね。規格外過ぎるので、変に利用しようという輩も出てくるでしょう。私たちが他の人とパーティーを組まなかったのもそれが理由です。幸いグレーテルお嬢様やその従者の方は理解があると思いますが、そうじゃない人も多いので・・・」
それはそう思う。
あの時、グレーテルお嬢様に声を掛けてもらって、本当によかったと思っている。
今回の討伐依頼で、俺には規格外の能力があることが分かった。それにこの能力は俺にしか使えないことも。
となると・・・
あれ?これって俺が世界を救うパターンか?
勇者だし・・・
★★★
それから何度か討伐依頼を受けた俺たちは、いよいよ勇者認定式に臨むことになった。
活動を続けるうちに二人の能力が高いことも国側の知るところとなり、二人も勇者として認定されることになった。二人が認定されたのは、何も実力だけではない。政治的な理由もある。ギルド連盟側もこの勇者プロジェクトに本格参入することを決めたからだ。ギルド連盟というのは、冒険者ギルドや商業ギルドなどの各種ギルドの集合体で、スタンリーさんは各種ギルドの説得に成功したようだった。
いよいよ式典が始まる。
場所は国立闘技場だ。大規模な式典は大体ここで行うのが通例のようだ。
プログラムでは、なぜか俺がスプーン曲げをして会場を盛り上げ、国王陛下や来賓のスピーチ、その後に勇者認定の証として、記念品を授与される流れになっていた。
式典の主役が前説って!?
と思わなくもないが、最近大勢の観客の前でスプーン曲げを披露することに快感を覚えてきたので、承諾することにした。
プログラム通り式典は進行し、俺のスプーン曲げも大盛り上がりだった。次のスピーチだが、シェーンブルグ王国の要職、有力貴族だけでなく、名立たるギルドのギルマスや教会関係者も出席している関係で、スピーチは国王陛下だけになり、後は来賓紹介だけになった。
誰が挨拶するかで、調整がつかなかったのだろう。こういった式典ではよくあることだ。スタッフの苦労が窺える。この世界では特に面子を気にする。多分「俺はアイツよりも下ってことか!?」とキレる奴もいるだろうしな。
そして国王陛下の有難いスピーチ(原稿を読み上げるだけ)が終了し、記念品の授与となったところで、異変が起きた。
空が急に暗くなり、雲の隙間から眩しい光が降り注いだ。
こんな演出はプログラムになかったはずだけど・・・
会場は騒然となる。
そして、眩しい光の中から美しい女性が下りて来た。
あれ?なんか見たことがあるぞ。
「ケイスケさん、あれって・・・」
「そうですよね・・・」
「間違いないよ」
俺たち三人が知っている人物だった。
そしてその女性は観客に向かって語り掛けた。
「私は創造神エリス。そこにいる三人は間違いなく、世界を救う使命を背負った勇者たちです。この世界に勇者は8人います。まずは彼らを探し出しなさい。勇者たちよ、世界を救うのです!!」
頭の中に大量の「?」が浮かぶ。
そもそも勇者という設定もなかったし、あの時108人に神器を配ったはずだ。たった8人のはずがない。まあ、あの馬鹿女神のことだから、言い間違えたのだろう。
それと、こんな登場をしていいのか?
神様が下界に下りてきていいのか?
そんなことを思っていたら、国王陛下や来賓たちは馬鹿女神を前に跪いていた。
教会関係者なんかは、涙を流して喜んでいた。
「創造神エリス様が降臨された・・・長年の信仰が身を結んだ・・・」
あの馬鹿女神を信仰するなんて、気が知れない。
女神はというと、国王陛下の前に降り立ち、こう言った。
「部屋をお借りしてもいいでしょうか?彼らだけに伝えたいことがあるのです」
「も、もちろんです。おい!!早く部屋を用意しろ!!式典はこれにて終了する」
用意された部屋に移動した俺たち。
部屋に入る事を許可されたのは、俺たち三人だけだった。防音の魔法を施し、俺たち以外が立ち去ったのを確認した女神は、俺たちを前に泣き崩れた。
「助けてください!!本当に世界の危機なのです。このままでは、私のキャリアも終わりです。もう貴方たちしか頼る人がいないんです。ウッウッウッウウウ・・・」
カヨさんが優しく、女神を抱きしめる。
「まずは落ち着いてください。ゆっくりでいいので、事情を説明してください」
「取り乱してすみませんでした。これから事情を説明いたします。ただ、衝撃的な内容なので、心して聞いてください」
俺たちは、女神の発言通り、驚愕することになるのだった。
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