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【連載版】異世界スプーンおじさん~世界を救う勇者  作者: 楊楊
第一章 勇者として

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11 討伐依頼

 今日は勇者として初めて、討伐依頼を受ける。

 同行するのは、パーティーメンバーのカヨさんとショウタ君、グレーテルお嬢様と護衛騎士のアンヌさん、それにギルマスのスタンリーさんだ。今回の討伐対象はサル型のワイルドモンキーの群れで、近隣の農家が深刻な被害に遭っているそうだ。ワイルドモンキーは単体だとDランクの魔物だが、群れとなるとCランクになるようだ。

 スタンリーさんが言う。


「勇者殿にはつまらない依頼かもしれんが、かなり農家が困っているからな」

「人助けになる依頼であれば、受けるべきだと思いますよ」

「そう言ってくれると有難い。労力の割に報酬が少ない依頼だから、ずっと未処理になっていたんだ」


 その理由はすぐに分かった。

 ワイルドモンキーの巣は森の奥地にあり、巣にたどり着くだけでも一苦労だという。そして、巣に着いても巣は要塞化されていて、迂闊に手を出せない状況らしい。


「巣が要塞化しているなら、ある程度の人数が必要になる。正直、この人数では厳しいだろう。だから、今回は討伐依頼にしているが、実際は調査依頼みたいなものだ」


 スタントンさんに続いて、グレーテルお嬢様が補足してくれた。


「そのためにわらわも同行するのじゃ。勇者パーティーでも討伐は困難という事実をもって、国軍に要請をする。わらわはその証人じゃな」


 詳しく状況を聞くと、ワイルドモンキーは採取できる素材が少なく、冒険者に人気がない。国軍は国軍で、「ワイルドモンキーごときの為に森の中まで入れるか」と言って、面倒くさがっているそうだ。

 カヨさんがフォローをする。


「冒険者も生活が懸かっていますからね。労力に見合わない魔物は敬遠されるんですよ」

「国軍もじゃ。国境沿いで、きな臭い動きがある。それで、なるべくこういった討伐依頼は受けないようにしているのじゃ。わらわとしては受けるべきじゃと思うが、「もし討伐部隊が出動している時に何かあったらどうするんだ?」という意見があることも理解はできるがな」


 まあ、それぞれの事情があるんだろう。

 でも、実質的には調査依頼ということを聞いて少し気分が楽になった。



 森に入り、ワイルドモンキーの巣を目指す。

 途中、魔物がひっきりなしに襲ってきたが、カヨさんとショウタ君が難なく撃退していた。

 まずカヨさんだが、三又のフォークを上手く使って、堅実な戦いをしていた。「殲滅の三又槍トライデント」という二つ名も、その武器からきているのだろう。カヨさんの戦闘を見ていたアンヌさんが言う。


「槍の扱いが上手いな。熟練の技だ。あれは一朝一夕には身に付かん技術だ。間合いの取り方も実に上手い。熟練の騎士でも彼女には勝てないだろうな」


 最高の評価をされていた。

 戦闘が終わった後、俺はカヨさんに声を掛けた。


「凄いですよ!!俺なんか足元にも及びませんよ」

「ありがとうございます。これでも学生時代は薙刀部なぎなたぶで、全国大会に出たこともあるんですよ」

「そうなんですね。だから槍の扱いが上手いんですね」

「こちらの世界では、薙刀なぎなたは一般的ではないですし、ましてやフォークで戦うなんて信じてもらえませんから、ギルドの登録は「槍使い」でしているんですよ」


 カヨさんによると、薙刀に一番近い形状のフォークにしているそうだ。


 一方のショウタ君だが、素人の俺から見ても粗削りな印象を受けた。

 アンヌさんが講評する。


「明らかに素人の動きだが、並外れたセンスと身体能力があるな。こちらの少年のほうが完成されていない分、伸びしろは大きい。私に預けてくれたら、3年でシェーンブルグ王国トップクラスの剣士にしてやるぞ」


 こちらも「後10年修行すれば、それなりの剣士にはなれる」と言われた俺と違って、かなりの高評価だった。


「ショウタ君も凄いなあ」

「だろ?これでも肩を痛めるまでは、野球部のエースで4番だったんだ。肩を壊してからは、グレてお袋に迷惑かけたけどな・・・」

「力任せに敵を圧倒する戦い方から「解体王」と呼ばれるようになったんだね?」

「そ、それが、ちょっと違うんだよな・・・また今度話すよ・・・」


 そんな感じで、俺たちは森を奥へ奥へと進んだ。

 もちろんだが、俺が戦闘をすることはなかった。グレーテルお嬢様が言うには、今日は自分で戦うよりも、二人の戦いを見て学ぶようにとのことだった。


 そして、とうとうワイルドモンキーの巣に到着した。



 ★★★


 ワイルドモンキーの巣は、予想通り要塞化されていた。

 洞窟型の巣で、迂闊に入れないようになっている。

 最初に何匹かのワイルドモンキーが襲撃して来たが、二人があっという間に撃退したので、それ以後は巣に引きこもって出て来なくなった。そして、巣穴から投石をしてきたり、魔法を使える個体が魔法で攻撃をしてきたりした。そして、明かに挑発してくる。

 怒って突撃しようとしたショウタ君をスタントンさんが止める。


「おい!!罠だ。迂闊に近づくな。いくらお前でも、ただでは済まないぞ」


 続けてスタンリーさんが説明してくれた。


「これが厄介な理由だ。大部隊で突入しないと制圧できない。冒険者も国軍もそれぞれの事情があるから、大部隊を編成することは難しい。さっきも話したが、ここに勇者様を連れて来たのは、政治的な理由からだ」

「そうなんですね。参考までに聞くのですが、この人数で制圧する場合はどんな方法があるのですか?」

「そうだな・・・地形が変わるくらいの大魔法をぶっ放すくらいだな。でも火魔法は駄目だぞ。森に被害が出るからな。まあそんな奴は大陸に5人といないから、こんなとこまで来てはくれないだろうが・・・」


 あれ?

 だったら、俺が何とかできるんじゃないのか?


「ちょっとやってみて、いいですか?」

「構わんが、巣には近づくなよ」

「はい。じゃあやりますよ。出でよ!!先割れスプーン!!」


 俺は巨大な先割れスプーンを上空に出現させた。今出せる最大の本数である50本だ。最近スキルレベルが上がったらしく、出せる本数も増えた。それを一気に巣穴にぶち込んだ。巣穴からワイルドモンキーの断末魔が聞こえてくる。


 これで制圧できただろうけど、念のため再度同じことをやってみた。今度は何も聞こえなかった。そして駄目押しでもう一度、同じことをしてみた。スプーンを回収したら、巣穴があったとは思えない状態になっていた。一言で言えば、更地だ。


「ちょっと、やりすぎたかな・・・」


 ショウタ君が慌てた様子で言う。


「ちょっと、どころじゃないよ!!一体何なんだよ・・・」

「ショウタ君はできないの?スキルでスプーンを出して、落としただけだけど・・・そうか!ショウタ君の時代には先割れスプーンは、もう給食でも使われてなかったのかい?」


 カヨさんが言う。


「そういう問題ではなく、こんなことできるわけがありません。ここまで巨大な物はスキルでは出せませんし、形状もそこまで自由には変えられません。それに本数も異常ですし、あんな遠距離に出現させるのも無理です」


 そうなのか・・・

 どうやら俺は、転移者の中でもかなりの戦闘力があるようだ。

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