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第9話:北の狼煙
「……政実様、本当に三戸へは行かれないのですか?」
実平の問いかけに対し、俺は返事をする代わりに愛刀の刀身を拭い続けた。
三戸へ行けば、待っているのは弁明の機会ではない。
俺の首と引き換えに、南部家が豊臣秀吉に対して「忠誠」を証明するための舞台だ。
「行くわけがないだろう。今、俺がここで首を垂れれば、九戸の領民たちは明日から『謀反人の家族』として、中央の理不尽な搾取に晒されるだけだ」
俺は立ち上がり、窓から外の風景を見渡した。
城下では、かつての俺の計画通り、兵たちが冬の訓練に勤しんでいる。
その光景は、もはや南部家に従順な一領主のそれではない。
独立した軍勢としての逞しさが、そこにはあった。
「実平、狼煙を上げろ。全領内に触れを出す。これより九戸は、南部家本家との対話を一切拒絶し、この冬を生き抜くために独自の方針で動く」




