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第20話:絶対零度の出迎え

豊臣軍の本隊が、九戸領の境界線に到達した。


先陣を切る蒲生氏郷の軍勢が、整然と隊列を組み、九戸城に向けて一斉に進軍を開始する。


その足音は地を震わせ、吐き出される数万の呼気が、まるで巨大な白い龍のように冬の空を覆った。


しかし、彼らが境界の谷へ足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。


「……寒いな。この風、京のそれとは次元が違う」


氏郷が兜の下で眉をひそめ、手袋を強く握り直す。


前方の平地には、九戸の旗が一本だけ寂しく風に揺れている。


だが、その背後には……彼らの想像を絶する「仕掛け」が待っていた。


「政実様、敵の先鋒が来ました」


実平が、火縄銃の引き金に指をかけながらこちらを見る。


俺は、懐から信号弾代わりの火矢を取り出し、空高く放った。


「火を放て。これより先は、天下人の権威も通用しない、冬の神の領域だ」


その瞬間、街道の両脇に隠されていた「雪崩のせき」が、俺たちの手によって一斉に解放された。

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