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第19話:鉄の嵐、雪の壁

九戸城の物見櫓から南の空を仰げば、そこには黒い染みのようなものが広がっていた。


一万、二万……いや、それ以上の軍勢が巻き上げる土煙だ。


地平線を埋め尽くすほどの旗印が、重苦しい冬の空の下で波打っている。


「……ついに来たか。蒲生氏郷に浅野長政、天下の精鋭を引き連れてのお出ましだな」


俺は双眼鏡越しに、整然と並ぶ豊臣の大軍を見下ろした。


先遣隊のような浮ついた様子はない。


規律正しく、無駄のない動き。さすがは天下を統べた秀吉の懐刀たちだ。


「政実様、敵の陣容……数えるまでもなく、我らの十倍以上。いえ、もっとでしょうか」


傍らに立つ実平が、覚悟を決めた声で問いかけてくる。


俺は愛刀の鍔を親指で弾き、冷ややかな笑みを浮かべた。


「数などどうでもいい。……奴らが何人いようと、この雪の中ではただの『重たい肉の塊』に過ぎない。俺たちが戦うのは、軍勢じゃない。あの者たちの慢心と、そして彼らが持ち込んだ『天下の常識』だ」

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