遊ぶこと
「ノーマン館長」
「なんじゃ?」
ノーマン館長に手を引かれて、食堂へ向かう。
太陽の光が窓に反射して、少し眩しい。
顔を俯かせる。
「ぼ、ぼく。遊んでばかり。いいの?」
ノーマン館長はくるりと振り向き頭をわしゃりと撫でた。
「ええ?」
「いいんじゃよ!寧ろもっと遊んで欲しいぐらいじゃ!今まで1人で頑張ってきたんじゃろ?」
「でも……」
「アシェくんは遊ぶことが仕事じゃ。
たくさん遊んでたくさん学び、ここで楽しく過ごして欲しい。それがヴァルドくんの望みでもあり、アシェくんと一緒に過ごすわしらの願いじゃ」
遊ぶことが仕事。
そんなこと考えたこともなかった。
お義母さんに家のことは全部やるように言われていた。ちゃんとやらなかったらご飯は抜き。
楽しみは外に捨てられていた本をもらって、こっそり読むこと。ずっとずっとそうだったのに。
「賢いアシェくんなら、できるじゃろ?」
「うう……はい」
またぼろりと涙が出そうになって必死に堪えた。いつまでもぼくは、泣き虫のままで、お義母さんやレオン義兄さんの言葉に囚われたままだった。
「ゆっくりでいいんじゃよ。あともう一つ。ヴァルドくんが忙しい時はわしとも話してくれないか?」
「え?」
「アシェくんと話すと元気になるからのう。それにアシェくんが来ると、エレナくんはクッキーを出してくれる確率が高い」
ノーマン館長は甘いものに目がない。
エレナさんのクッキーはとっても美味しいもんね。ぱちりとノーマン館長はウインクをした。
「はい。エレナさんのクッキー美味しいです」
「そうじゃろ。あと、何度も言っておるが、敬語じゃなくていいんじゃぞ?
孫だと思わせてくれたら嬉しいのう」
孫。じゃあノーマン館長はぼくのお祖父ちゃん。そんな存在、今までいなかったから、そう言ってくれたことがとてもうれしく思えた。
「うん。ありがとう。ノーマン、館長……」
お祖父ちゃんなんて言おうとしたけど、ちょっと恥ずかしくて言えなかった。
ノーマン館長はにこりと笑った。
「今、勤務時間なんじゃが、お腹が空いてしまってのう。
エレナくんに図書館の方を任せてきたのじゃ」
「えへへ。エレナさんに怒られちゃう」
「大丈夫。デザートを持ち帰る約束をしたから怒られはせんよ。そのくらいでいいんじゃよ、アシェくんも。さあ行こう」
ノーマン館長の言葉で単純だけど、心が軽くなった気がした。遊ぶことが仕事。
きっとそれは本を読むことの他に、楽しいことがもっとたくさんあるってことだ。
「ぼくもデザート。ヴァルドさんに届けてもいい……?」
「勿論。喜ぶじゃろうな~甘いものは疲れた身体に良く効くからのう」
2人でくすくすと笑った。
雲に隠れたせいなのか、さっきよりも太陽は穏やかな光になっていた。




