休憩たいむ
ヴァルドさんがぼくの膝で眠ってて気持ち良さそうで。ぼくまでちょっとだけ眠ってしまうなんて……!
10分経ったら起こしてって頼まれていたのに。
時計の針は10分どころか30分も過ぎている。ヴァルドさんを急いで起こしにかかる。
「ヴァルドさん。30分経っちゃった。
お、起きて……!」
膝の上のヴァルドさんの肩を軽く揺らす。
するとゆっくり目を開いた。
「ごめんなさい。30分経ってた。
ぼくもちょっと眠っちゃった……」
「……」
怒られるかな。時間も守れないなんて。
少し身を縮めると、ヴァルドさんは両手を広げてぼくのことを抱え始めた。
「え?ヴァルドさん?」
「もう少し寝る。アシェも一緒に寝たらいい。報告書はあとで、まとめることにする……か……」
「ヴァルドさん……!?」
ぼくはヴァルドさんの腕にすっぽり収まったまま、ヴァルドさんはまた眠りについてしまった。
こうやってされるとぼくはまた、眠たくなっちゃうんだ。
「いいの?
ぼくも眠っちゃうからね……」
ぼくは背中に手を回されて、まるで抱き枕にされているようだ。
温かくて気持ちよくて。
そのままぼくも再び眠りについてしまった。
____
「重かったろ。悪いな。
少しスッキリした。
報告書を仕上げないとな」
ヴァルドさんは身体を伸ばして立ち上がっていた。時計の針は10分どころか1時間以上経っているようだった。
でもヴァルドさん、元気になったように見える。良かった。
ぼくは目を擦ってから少し伸びをした。
「ぼくもたくさん眠っちゃった。えへへ」
「アシェはたくさん寝て、もう少し身長を伸ばそう」
ここに来てからぼくは毎日たくさん食べるようになった。
でも身長はなかなか伸びない。
ずっとチビのままだ。
「しかし、向こうじゃゆっくり眠れなかったから助かった。やはりアシェがいると違うな」
ヴァルドさんは小さく笑っていた。
ヴァルドさん、帰還してからもまたお仕事があるなんて。ぼくもお手伝い出来たらいいのにな。
ベッドの上にあるぬいぐるみが視界に入る。
そういえばお話ししたいことがあったんだ。
「あ、あのね。ヴァルドさん。
前に綿が出ちゃったうさぎのぬいぐるみ。
直したんだ。あとヴァルドさんの騎士団の替えの制服、ボタンが取れちゃったの付けておきました!」
ヴァルドさんがくれた、うさぎのぬいぐるみを見せる。大事な物だからベッドの近くに飾っているんだ。制服はクローゼットの中にしまってあるけれど。
「直してくれたのか。助かるよ。
アシェは器用だな。
……また、行きたいか?メルセバ」
「うん!グラッツさんや、ユージンさん。
シリルにも会いたい!」
商業都市メルセバでは色々あったけど、今までぼくにはいなかった友達ができた。
お話ししてくれる人ができた。
大切な場所だ。それに、ここにはないお店が見れて、とても楽しかったんだ。
「そうだな」
部屋着から、クローゼットにある騎士団の制服に着替えるヴァルドさん。微笑みながら、ボタンを確認してくれてる。
「アシェのおかげで、休みが待ち遠しい」
「え?」
「いや。少し仕事を片付けてくる。夕飯は一緒に食おう。それまで……自由にしていてくれ」
「はい。わっ」
ヴァルドさんはぼくの頭を撫でると、執務室へ向かった。
自由に……。
今日はもう頼まれたお仕事はないし、お勉強も終わった。何をしよう。
騎士団庁舎を見て回ろうかな。
__
とことこと騎士団庁舎を1人で歩く。
廊下は広くてぼくの足音だけが響いている。
窓枠に手をかけて外を眺めた。
ふわりと入る風が心地いいな。
みんな、ぼくにすごくすごく優しくしてくれる。仕事はもらえるけど、以前と比べると少しだけだ。もっと頼んでいいのにな。
あとは好きなことをする時間。
『君は好きなことをしていな。
遊んでいて構わないんだよ』
『アシェくんは――ヴァルドさんのところに行ってやりな』
『それまで……自由にしていてくれ』
みんなぼくにはお仕事より、遊ぶことを求めている。どうしてって思うんだ。
ぼくはみんなの役に立ちたい。
役に立たないといけない。
お義母さんに言われたみたく、もう、帰ってこなくていいって言われたくないから――
「……もっと、みんなの役に立ちたいな」
「アシェくん。こんなところでどうしたんじゃ?」
「わわっ!」
突然名前を呼ばれて、驚いて振り返る。
ふさふさのお髭。ノーマン館長だ。
「あ。えっと。ヴァルドさんに自由にしてていいって言われたので、騎士団庁舎をお散歩……してみようかなって……」
どうしてだろう。だんだん自信がなくなってくる。
「ふむ。
……アシェくんも一緒におやつでもどうじゃ?
休憩たいむじゃ」
「え、はわ、はい……」
ノーマン館長はなんだか嬉しそうに、食堂へとぼくの手を引いて歩いていくのだった。
アシェは癒し




