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さみしい



執務室も覗いてみたけどいなかったから、ヴァルドさんはやっぱり部屋にいるのかな。ノックしてから扉を開ける。


「アシェ。りんごは渡せたか?」


中にはズボンだけ履いて頭をタオルで拭いているヴァルドさんの姿。お風呂に入ってキラキラピカピカしている。


「うん!あのね、アップルパイを作ってくれるって」


「それはいいな。夕食が楽しみだな」


「うん!」


2人掛けソファーに座るように促されて、ぼくはソファーに座る。身体を拭き終わったヴァルドさんは、部屋着を見に纏い、ソファーの隣に座った。


「ヴァルドさん。疲れてない?」


「……少し疲れた。魔物自体は大したことはなかったんだがな。依頼先が遠いもんで、帰還に時間がかかってしまった」


ヴァルドさんはぼくの肩をぎゅっと抱き寄せる。ソファーに座るとなんでだか、ぼくのことをよく抱きしめてくれる、お気に入りの場所だ。


「ちゃんと1人でも風呂に入れたようだな」


「わわっ。匂い嗅いでる?」


言われた通り、お風呂にもちゃんと浸かったし、お湯で身体と頭も洗った。

匂いを嗅がれてるとわかると、なんだかぶわりと顔が熱くなる。


「寂しくなかったか?」


「……お勉強したり、図書館のお手伝いしたり、お掃除してたから、寂しくなかったよ」


「そうか。アシェは忙しいな」


寝ている時は1人だったから、本当は夜は寂しかった。勉強やお仕事やお掃除で、1人じゃないって気を紛らわせていたんだと思う。


「オレは少し、寂しかったがな」


ヴァルドさんも、寂しかったんだ。

ぼくは寂しくないって言った方がいいのかなって思ったんだ。だって、ヴァルドさんはたくさん魔物討伐に行かないといけない。


だから、ぼくが寂しいって言ったら、ヴァルドさんは優しいから――


「ぼく、ほんとは1人で寝るのが寂しかった」


ぼくのことをたくさん、気にかけてしまうかもしれないから。

でも自然と言葉が溢れてしまっていた。


ずっとずっと、1人で寝てたのに。

固い床でシーツと呼ばれる布にくるまって眠っていた。

お義母さんに怒られても、叩かれても、残り物のご飯がもらえるだけで、嬉しかったのに。


今はもっともっと幸せで。

ふかふかのベッドが心地良くて。

みんなで食べるご飯が美味しくて。


もうそれを知ってしまった。

ここに居ていいって言ってもらえたのが、本当に嬉しいんだ。


なのにそれ以上、欲しいなんて。


「……アシェも寂しかったのか。

安心した」


「え?」


安心?なんでだろう。

でも、言って良かったのかもしれない。

ヴァルドさんはにこりと笑った。


「……眠い。少し眠る。

10分したら起こしてくれ」


「ええっ?ヴァルドさん?」


「ここに、居てくれよ……」


ヴァルドさんは眠気が限界なのか、ぼくに寄りかかりそのまま器用に眠ってしまっていた。

このままだとヴァルドさんの身体が痛くなってしまう。


ひざまくらにしてあげると、ヴァルドさんは安心したように身をゆだねてくれた。


10分。近くにある時計で時間を確認した。

顔を下に向けるとすっかり眠っているヴァルドさんの姿。身体がぽかぽか温かいな。


討伐に行ってそのまま帰って来て、きっと疲れてるかもしれない。


「おやすみなさい」


ぼくがいつでもヴァルドさんの枕になるから、ゆっくり眠ってね。


アシェかわいい

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