友達
「シリル坊ちゃん!ご無事で何よりです!」
「ロ、ロバート……」
教会の方から出てきた、執事服を来たおじいさんに、シリルはぎゅっと抱きしめられていた。よく見ると同じ紋章が胸元に刺繍されている。
「シリル坊ちゃんにもしものことがあれば、私は、私は……!!」
「わ、悪かったよ」
「おや。珍しい……」
シリルはロバートさんからの抱擁から解放されて、ぼくの方にやってきた。
「アシェ。……ありがとう。
お前のおかげで助かった」
「ううん。ぼくも1人じゃなかったから頑張れたんだ」
思わずえへへ、と笑ってしまう。
「アシェ。俺、実は、アルベール財閥の跡取り息子なんだ!」
「そうなんだ」
アルベール財閥はよく分からないけど、きっと貴族様なんだと思う。シリルは髪や服がピシッとしていて、靴もピカピカだもの。
「……アシェのこと、気に入った!
父さんに頼んで、うちの養子にしてやる!」
「え?」
「ヴァルド・ノイシュタットのとこじゃなくて、ウチに来い!毎日美味しいご飯もおやつもある。毎日遊んで……勉強もちょっとする。なにより、アルベール財閥にいれば将来安泰だ!」
「坊ちゃん……そんな旦那様に聞かずに勝手に決めるなんて……」
ロバートさんがオロオロしている。
逆にシリルは自信満々だ。
「ありがとうシリル。嬉しい。
でもぼく――」
「すまないが、アシェは渡せない。
彼はオレに――第三騎士団に必要な存在だ」
気付くとヴァルドさんがぼくの横に立っていた。ぼくはヴァルドさんのことを見上げて、シリルの方へと顔を向ける。
「ぼく、ヴァルドさんと一緒にいたい。
第三騎士団の人たちの力になりたいんだ。
それがぼくのやりたいこと」
「……な!こっちは将来安泰だぞ!
それに騎士団なんて危ないし……。
また今日みたいなことも……」
「それでも、ヴァルドさんと一緒がいい。
ぼく、シリルと友達になりたいな。
友達、いないから。だめかな?」
「友達……」
「友達になって欲しいな」
手を差し出す。
ぼく、ずっとずっと、友達が欲しかったんだ。
ヴァルドさんと出会ってから、いっぱい欲しい物が増えて、わがままになっちゃうな。
「……俺のお願いを断って、逆に命令するなんて……。分かったよ。友達になってやる」
シリルはぼくの手を握り返してくれる。
ぼくの初めての友達だ。
「ありがとう。よろしくね。シリル」
「よろしく。アシェ」
ぼくはこくりと頷く。
「良かったです。アシェ様ヴァルド様。
この度はシリル坊ちゃんをお救い頂き、本当にありがとうございました。旦那様に代わりまして、お礼を申し上げます」
「ううん。ぼくは、何にもしていません」
「オレは魔物を討伐しただけだ」
「……このご恩は必ず……!」
ロバートさん、シリルは深くお辞儀をして、去っていった。
ぼくは手を振ると、シリルは小さく振り返してくれていた。
「……行こうか、アシェ」
「うん」
ヴァルドさんの服の裾をちょっとだけ握る。
ヴァルドさんがまた、ぼくのことを無言でぎゅっと胸元に抱きしめてくれた。
もう1人じゃない。ヴァルドさんがここに居てくれる。そう思えてとても、嬉しかったんだ。




